『都市シリーズ全体』都市ごとに世界のルールが違う”都市世界”

「今回の話は、都市シリーズで出てくる各都市ごとに文体、文章表現による仕掛けがどれだけ違うか、という、そんな実例です。ちょっと文体遊びの博覧会的な、そんな話ですね」


「じゃあ、各都市ごとに変わる文章表現というか、法則や特徴はどんな感じなんです?」


「そうね……、主要な処を紹介するわ。詳細はまた各都市ごとのコラムで書いていくと思うから、ここでは簡単な示唆で御容赦ね」



・伯林

:機甲都市。都市世界としては個性薄め。それを補完するために技術開発が進む一方で歴史的事件が多く、各国の介入する現場となる。

 術式が、詞を用いることで世界に対して文字的な干渉を起こし、効果を”言実”化する、という設定。



・倫敦

:架空都市。書物の中に封印された英国の代表都市。異族と呼ばれる人外の土地。表現を書き換えて己を変化していけるが、その余波を整調する手段も備えている。

 本の中の世界なので、「外燃詞=自分の思考のト書きを他人にオープンする」とか、そういうネタが多いです。



・香港

:風水街都。都市世界としては個性薄めだが、発展したこの世界アレンジの風水五行は世界の根幹要素にアクセスする方法の一つであり、異文化、異民族の集う場である。

 遺伝詞=世界を構成する流体という因子に、この遺伝詞というものがあり、それを加工することで世界や物体、法則を変更する、というシステム。



・OSAKA

:奏騒楽都市。住人達の耐久度が高く、銃撃、剣戟などが普通の喧嘩レベルで行われる。音楽を身体に流し、”詞”をもって戦闘する他、”技能”という判定によって行動の正否が決まる。

 技能判定による戦闘表記。技能だけではなく実際の行動も表記されるので、それをガイドに駆け引きを読む感で。各キャラ得意技能もあるので、個性も示されます。



・巴里

:閉鎖都市。文字世界であり、滞在者は自己一人称を基礎としつつ、外の描写を能動的に行う事でしか正確な自己周辺の情報を獲得出来ない。自意識と外界の関係を捉えることが必須の都市。

 文字世界で、自分のしたことを記述して自分を確定、そして自分の外の外界を記述して現実を確定します。「周辺確認・戦術思案と行動」を交互に宣言してるようなもので、外界での発見や自覚の強さ、駆け引きが強く出ます。



・DT

:伝詞都市。デトロイト。情報世界と化していて、高速処理されるために外界との時間差が激しい。自分達を完全なシンプル情報化することで高速文字通信など可能。

 ゲーム内世界? みたいな設定なので、システムメッセージがガンガン出て、それが描写の意味も持ちます。



・Sf

:挿画都市。サンフランシスコ。挿画の都市で有り、実力ある者が”描く”ことによって時間や季節を進め、いろいろなものの修復や建築を行っていく。描き手の集う市役所はいつも大騒ぎである。

 絵の世界なので、絵描きが世界を描き変えて、朝や季節を呼ぶ、という設定。これは思い出の記憶を描いています。



・TOKYO

:矛盾都市。ありとあらゆる事が起き得る都市。記動力という、決め台詞のようなパワーワードを発揮する事で、全ての法則を無視してそれを叶えることが出来る。星や風、いろいろなものが生活する都市。

 固有名称のない、あやふやな世界なので、記述することでルールを確定。主人公は”何でも殴れる”訳です。



「――と、こんな感じの都市が世界中にあってね、という話だった訳。

 刊行は1996~2002年(DTまで)、~2003(Sf)~2005(TOKYO)という時代ね。

 文庫だと最後がDTだから、二十年前となると、もはや今の人達にとっては何が何だかだと思うわ。

 でも、マー25周年なので御容赦。こんな内容が当時にあった訳よね」


「――都市は、つまり20年前の記録までしか無いわけですが、あの後、どうなってたんです?」


「そうね。”都市世界=CITYの現存記録”だと、1999年の7月にTOKYOの神田、時館という時計塔で、ケリー・バンサム彗星と帝都軍が時間を巡る事件を起こして、世界が壊れたと、――そういうことになっているの」


「え? それ、大丈夫なんです、か?」


「さあ? 何はともあれ気になるなら、新シリーズの”LINKS”にようこそ、ってそういう話よ? まあチョイと、面白いことになってるから」

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