『連射王』唯一無二の”STG攻略小説”

「今回の話は、縦STGとそのプレイヤーを題材にした小説”連射王”が、その作中でどのようなものを見せているかという、前例のない小説の概要。そんな紹介の話ですね」


「ぶっちゃけ連射王、唯一無二とか言うけど、どういう話なの。STG小説っていうと、STGのノベライズ? とか、そんな風に思うけど」


「いや、ノベライズじゃなくて、90年代のゲーセン舞台に、架空のSTGを攻略していく話ですね」


「…………」


「……それ面白いの?」


「いやもう何度も聞いた問いかけですが、展開としてはスポ根や格闘映画の王道みたいに、散々敗れた主人公が師匠の元で修行して、しかし師匠が敗れたので仇討ちすると、そういう話なんですよ」


「…………」


「……What?」


「あ! 今、疑問しましたね? そう、連射王は、主人公の仇討ち話から、師弟の仇討ち話にステップアップする王道展開の小説なんです。

 その題材が、格闘とか英雄物語じゃなくて、STG攻略なんですね」


「そんな話ですから、主人公は師匠に幾つもの技を教えて貰ったり、自分で開眼していきます。作中では、解りやすく図解されますね」







「これら一つ一つが、格闘漫画で言う”拳の握り方”や”回避の仕方”に該当する訳です。そしてこれらを習得していくことで、主人公はSTGを攻略出来るようになっていく……、つまり”強くなる”訳ですね」


「えーと、それで戦う相手は……」


「ええ。STGとなります。――ちなみにゲーム中は、そのゲームを映像的に捉えた描写で筆記されますね。主人公がSTG世界に飛び込むような表現はなく、画面を通してリアルを感じていると、そういう描写です。

 架空のゲームですが、主に”大連射”、”大連射2”という、演出強めの非弾幕系ガチシューを攻略します」


「つまり作品の文法としては王道で、使ってる言語が違うとか、そういう話ね……」


「アクション映画を観た後に身体を動かしたくなるのと同じで、読んだ後、無性にSTG(縦スクロール)がプレイしたくなりますよ?」


「でまあ、それで師弟の仇って、何なのよ」


「ハイ。題材としてはゲームの攻略=ワンコインクリア、という風に作中では捉えていて、師匠の目的は”ファーストプレイワンコインクリア”というものです。

 つまりゲームの初見クリアですね」


「…………」


「……出来るの?」


「それを詰めて行くのが、この連射王の後半戦ですね。この目標というか、課題は、掲げられた前例が無い(当時)だったので、そういう意味でも唯一無二です」


「他、唯一無二として特筆するところは?」


「アッハイ。これは別のコラムで後述しますが、主人公と師弟を巡る人間関係ですね」


「人間関係って……、それは、フツーにどんな小説にでもあるのでは……? 主人公、高校生よね? 人生悩んだり、恋愛とかいろいろ、フツーあるでしょ?」


「……いや、無い人もいますよね……」


「……そういうクリティカルな話はここでしなくていいんじゃない?」


「いやまあ、ええ、そういう人間関係、これが”青春小説”ならば、そうですね。”ゲームを攻略する少年の話”ということで、フツー、そうなります」


「違うの? どういうこと?」


「ええ。連射王のベースは作者(川上稔)のデビュー前に書かれたものですが、そのときから主人公だけではなく、他キャラにもかなりのページが割かれていました。それらを結びつけているのはゲームセンターという場所と、”攻略”という技術の伝授。

 テーマが青春ではなく、ゲームの攻略なんですね。

 つまり連射王は”ゲームを攻略する少年の話”ではなく”ゲームを攻略する事と、そのためにゲームセンターという場に集まった人々の話”となります」


「比重が違うってことね……」


「ええ。少年の人生の片手間にゲームやってるんじゃなくて、ゲームの方に全振りしていく主人公や、そうであった人達の話だと言えます。御陰でヒロインいるんですが、もう、主人公を諫めるために言ってる事が正論過ぎてすみませんでしたというか……」


「STGで人生おかしくなるのを、彼女が人の範疇で繋ぎ止める感ね……」


「まあそういう訳で、青春小説と言うより”STG攻略小説”と言った方が正解だけど、それ言っても通じないから別の説明考えようね的な、そういう唯一無二でもあります」


「じゃあ、ドラマとしての面白さはどうなの?」


「ええ、王道展開ということで先ほども話しましたが、次のような流れを取ります」


 主人公が敵(ゲーム)に敗北する

 ↓

 師匠(攻略雑誌やリアルゲーマー)に出会う

 ↓

 訓練する

 ↓

 リベンジ(ワンコインクリア)を果たす

 ↓

 だがもっと高い目標(ファーストプレイワンコインクリア)を教えられる

 ↓

 師匠がその目標に敗れる

 ↓

 主人公がその目標を継ぎ、挑戦する


「……この主人公と師匠、よく考えたらクズじゃないかしら……」


「いやいやいや、夢中になれる事があるってのは良い事ですよ! ともあれこういう流れの中で、師匠の過去ドラマや、主人公とヒロインのいろいろがあって、最終決戦に集結していくんですね」


「ワンコインクリアまでなら何処にでもありそうだけど、そこから先が作者の発想って感じなのね……」


「逆転発想的ですけど、前例が無いような目標を追うドラマなので、その時点でもう唯一無二性が高いですよね」


「そんな感じで、ちょっと他に無いぞ、という連射王。どうでしょう」


「単純なワンショットアイデアじゃなくて、複合的に発想を重ねて、ある意味、競合がないのに無意味な唯一無二性を出してるわね……」


「ま、まあそういうことで。他があったとしても、こういうアプローチでSTG縦シューを題材にしてる作品って、唯一無二だと、そういうことですね」


「そりゃこんなのが何冊もあったらおかしい世界だわ……」


「ホビー漫画で、ゲームで全てがカタつく世界とかですかね……」


「その世界だと、STG小説じゃなくて、”右にスクロールしてジャンプで敵を踏むゲーム”小説とかありそうね……」


「その内容だと、盛り上がりどころが難しいですね……」




▼カクヨムにて『連射王』連載中!!

https://kakuyomu.jp/works/16816927859939435851

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