いつもの連中「黒糖の破壊力」

●登場人物


■ホライゾン、絶対強者。副王。自動人形。両腕が分離してカワイイ。


■ナイト。墜天。第三特務。ナルゼの相方。配送業もやる魔女。


■メアリ。傷有り。点蔵の嫁、英国王女。意外にツッコむ。


■浅間・智。浅間神社の代表。巫女。巨乳。今回チョイ役。



●今回は?


今回は青雷亭でバイトするホライゾンのところで、ナイトがやってきて相談したり、メアリが先に朝食頂いていたりと、そんな感じでスタートです。


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「おーい、ちょっと空いてる席あるかなー? 無かったら厨房借りれる?」


「おやおやナイト様、丁度いいところでした。今、御客様が団対で運ばれていったところです」


「何か事件が始まってる?」


「いえいえいつものことです。なので、恐らく三時間以内に広義の公休になると思うのですが、まあ三時間は気にせず行きましょう」


「あらナイト様、おはよう御座います」


「オイヨー、ってか、客が多い訳だ。メーやんいると」


「いやあ、メアリ様効果が素晴らしいです。おかげでメニューをテキトーに頼む馬……、馬鹿とか言っちゃいけませんね。御客様です。めっ」


「──で、馬鹿な御客様が何でしたっけ?」


「ええっと、メーやんの効果が凄いとか」


「あ、そうですそうです。メアリ様がいる御陰で、このところ仕入れを間違ってえらいことになっていたPとMが大量にハケました」


「PとMって何か、聞いて大丈夫かな?」


「Jud.、Pはポテイトウで、Mは抹茶です」


「……………………」


「ピーマンとミントは?」


「ピーマンはPでミントはMです。当たり前のことですが、何か?」


「興味本位で聞くけど、どんな料理が出たのかな?」


「Jud.、チョコミントがこの夏の流行なので、それにあやかってピーミントを」


「あの、仕入れを間違ったPとMは?」


「…………」


「……………………」


「………………………………」


「メアリ様、いいですか」


「はい、何でしょう」


「当店ではライブ感を大事にするため、現場のテンションを優先しています。──店の裏の倉庫は後で何とかします」


「それがいいかな? ってか、じゃあちょっとテーブル借りるね」


「ナイト様、一体何を? 総長連合の作業ですか?」


「あ、いやいや、というかメーやん何しに来てるの? 刺激?」


「今日は点蔵様が朝から御仕事で浅草に出ていますので、こちらで待ち合わせを」


「何か食えた?」


「ナイト様、もうちょっと言葉を選んで下さい。──何か入った? とか、そのあたりが正確です」


「えーとまあ、そんな感じで、どう?」


「あ、Jud.、先ほど、MとMとMを頂きました」


「……………………」


「……忘れてたけど、メーやん意外に何も疑問に思わずツッコむタイプだったっけ」


「モブ忍者を初めて目の前にしたときに”ホワッツ?”って言わなかった大物ですからね。肝が太いです」


「ちなみにMとMとMは何かな?」


「マドレーヌとミルクとミントです」


「スゲー引きがいい……! 朝食に対して言う言葉じゃない気がするけど」


「まさか当店でミルクにミントを浮かせて頂くとか、そんなハイソな攻略をされてしまうと、青雷亭無印のイメージが音を立てて壊れていきますね」


「どんな音です?」


「ミョンミョンミョンミョンミョンミョンミョンミョンミョンミョン」


「ソッコで思いついたにしちゃいい感じかなあ」


「おっと、これはなかなか手厳しい……! で、ナイト様も何か一丁チャレンジしてみますか? 今日はSとかZとかお安いですが、如何です?」


「Sは高確率で料理のサシスセソが来るからなー……。Zは例えば何?」


「残ぱ……、あ、いや、何でもありません何でも」


「今、残飯って言おうとしたよね? ね?」


「あ、いやいやいやいや、アデーレ様にお出しするものを残飯とか言ってはいけません」


「アー、限定商品。ってか、無料で渡してないっけ? あれ、アデーレが引き連れてる犬の散歩用のだよね?」


「Jud.、でも犬の群用と言ってないので、勘違いしたアデーレ様が帰宅してモグモグやってる可能性があるので、チョイと危険な気がします」


「──まあ、アデーレ様は犬の餌がお好きなんですか?」


「メーやんから聞くとすっごいATKを感じる台詞だけど、その場合、メーやんどうすんの?」


「いえ、先日、食べきれなかった御菓子を差し上げたら喜んでらっしゃったのですが、実は口に合わないものを差し上げてしまったのかと」


「香辛料と玉葱とレーズンが入ってなければ大概大丈夫だと思いますよ」


「まあ! レーズン入りの蒸しケーキでした」


「コイツはアチャ──」


「いやいやいやいや、何かいろいろ混じって話してる」


「あ、Jud.、そうですね。ちょっと驚いてしまいましたけど、アデーレ様はちゃんと食事をされてますよね」


「………………………」


「……ちょっと厳密に言い切れないかな、って思ったけど、まあいいかな、うん」


「──そうですナイト様、手違いとはいえ、最終的には個人の嗜好です」


「オーイ、食ってることになってるなってる」


「──で、ええと、ナイト様は、こちらに何の御用で? 朝食ですか?」


「朝食ですか、って言えるあたりが、引きの強さを持ってる人間の台詞だよね……」


「ともあれ朝食も出ますけど、どうなさいますか、ナイト様」


「あー、まあ朝食ってのもあるけど、携帯食のアイデア欲しいかなって」


「携帯食ですか?」


「K帯食ですね?」


「……今、二人とも、想像してるものが全く違うよね? ね?」


「ええと、携帯食というと、──点蔵様の干飯や、腐乳とか、ああいう……」


「ええ、K帯食というと、──コンニャクでグルっと帯状に巻いた食を……」


「”食”って何かな?」


「まあ細かいことは気にせず行きましょう。しかし何でK帯食を?」


「いや、仕事中、箒の上とかで食べたりするからさ」


「あ、たびたびそういう光景を見かけますけど、そういうものなのですね、やはり」


「箒の操縦って、アレ意外に全身運動だから。あと、低速域だと翼使って制御してる部分もあって、疲れるんだよね」


「疲労軽減術式とかを用いるのは?」


「いやまあ使ってるけど、空腹感。一番腹減るのが、航路分岐点とか、荷物を復路で受け取って上に上がって”さてどう行こうかな”って考えるときなんだよね」


「──成程、それまでの仕事と違う仕事になりますから、気分的に変わりますものね」


「ああ、ホライゾンもそういうの、ありますあります」


「そうなの?」


「Jud.! 先の御客様にお出しする料理を作って、次の御客様にお出しする料理に取りかかろうというとき”アー、違うタスクの前に気分転換!”と思って、目の前にある料理をチョイと摘まんでしまうとか」


「オーイ、食ってる食ってる」


「──あら? でも、ここで、お出しされるものですけど、量についてはほぼ間違っていないように見えますが?」


「あー、そうだね。寧ろ意味なく多いくらい。前にあった”メガ昆布巻き”とか、打撃武器かなって、アレ」


「Jud.、昆布巻きなので、昆布に昆布を巻いてやりましたが、よく考えたら繊維の塊に味着いてるだけな気がしますねアレ」


「でも、量は安定してるのが、青雷亭ですよね?」


「ええ、ホライゾンが気分転換にチョバって削った分ですが、その場合、とりあえず氷室などにある比較的安全な素材を補充します。先日はコーヒーが美味かったですが、魚肉ソーセージが余っていたのでウインナーコーヒーが捗りました」


「それはソーセージコーヒーでは?」


「──ツッコむところソコかな?」


「って、まあいいや。何となく刺激の正体が解ってきた気がするけど、何の得にもならないよね……」


「いえナイト様、このように、一般にとっては無駄に見えるものの積み重ねこそが文化や文明を発展させるのです。──刺激は全く無関係ですが」


「──だとすると、ええと、ナイト様の携帯食も、そのように、やはり刺激が必要なのですか?」


「どこから”だとすると”って出たのかよく解らないけど、いや、要らない要らない。というか”やはり”のカテゴリの外で御願いしたいかな」


「──Jud.、とはいえナイト様、箒の先に前籠を下げてたりしますから、思った以上にいろいろ持ち込めるように思いますが」


「アー、あれは昼食とか、そういう用意でさ。今欲しいのは、ポケットから即座に出して一服、みたいなの」


「これまではどのようなものを?」


「飴とかガムとか? 焼き菓子は大概割れるね。干飯みたいなのもやってたんだけど、流石にちょっと飽きてきて。あと、──黒糖がちょっと余り気味で」


「おや、黒糖。ナルゼ様が尻から出し過ぎたんですか」


「まあ、ナルゼ様が、お尻から黒糖をお出しに?」


「ガっちゃんどういう妖精かな? ──いや、ちょっと一時期、御菓子作りに凝ってたんだけど、今、ガっちゃん修羅場入っててさ。そしたら黒糖、密閉してても湿気って来た感?」


「ではパウンドケーキなど、如何でしょう。あれだと一気に消費出来ますが」


「ガっちゃん修羅場ってるからオーブン使えないかなー。アレやると部屋暑くなるから、手汗でペンが滑るとかで」


「では青雷亭のオーブンはどうでしょうか。チョイと朝食ラッシュを過ぎれば空きが出来ると思いますがその前に教導院でしたね。駄目です! ホライゾン、ウッカリ様でした」


「あー、まあ、あとさっき、三時間後がナンタラって危険なワード聞いた気がする」


「じゃあもう黒糖が湿気る前に、壺に入れて地面に埋めて保管しませんか」


「それでどうやって携帯食?」


「いや、腹が減ったら地面にストローでも刺してツボの黒糖をチューチューと」


「まあ、セミみたいですね」


「メーやんツッコミがスゲーよ……」


「じゃあ、手軽に作れるものとして、マジパンなどでしょうか」


「マジパンというと、アレですね? アーモンド色をしたプードルがマジ顔でパンチを放つというアレ」


「ビミョーに合ってるから何だけど、それ持ちネタになってるよね?」


「まあそんな感じですが、どのように作るのでしょう」


「いろいろ説はありますけど、材料でしたら、こんなところでどうでしょうか」





「おおう、いきなりスタート?

 まあいいか。えーと、分量だけど、ぶっちゃけ砂糖とアーモンドプードルの量は、かなり適当でオッケー。レシピによっては、比率が1:2だったり2:1だったりもするから」


「なお、マジパンは中東発祥の御菓子で、アーモンドプードル(アーモンド粉)と砂糖を練ったものです。餡子のようなもので、味は、こし餡を想像して頂くと、それに近いですね」


「練る触媒は、水でもいけるし、アーモンドの脂でもオッケーっていう場合もあるけど、卵白を適量ってのが、一番粘りもあるし、味もいいと思うかな。ただ──」


「ただ? 何でしょうか」


「えーと、まあ、黒糖だとどうなるかってことで、じゃあちょっとやってみようか」





「ではまず、黒糖とアーモンドプードルをどちらも100g、卵白を一つ分用意します」


「──で、アーモンドパウダーと砂糖をふるいに掛けてボウルに入れて練るのね。……ってか、コレが全てな気がするかな……」


「このとき、卵白を、スプーンで切り分けるようにして、少量ずつ入れて行きましょう」


「卵白を一気に入れるとどうなりますか?」


「すんごいベタついて泥みたいになる」


「卵白使用のマジパン作りで失敗するのは、生地をべとつかせてしまうことですが、水とは違って、卵白の持つ水分は押し潰さないと外へ出ないのですね。だからダマになった部分を強く押して、中の水分を外へと出して下さい」


「──経験的に言って、黒糖とアーモンドプードル、100グラムずつだったら、卵白を半分から四分の三程度使えば充分じゃないかな。余ったら、卵黄と一緒に別料理に使うか、冷凍。解凍すればフツーに使えるから、無理に捨てる必要はないね」


「なお、卵白を入れすぎてベタついた場合は、クッキングシートで筒状に縛って冷凍して下さい。凍らせてナイフで切れば、冷菓として楽しめます。これは保存法でもありますね」


「ほう。なかなか豆知識。しかしこのマジパン、中東から、というと、歴史再現に抵触しない御菓子でしょうか」


「Jud.、10世紀頃に中東で出来て欧州に渡ってるかな。15世紀初頭には、M.H.R.R.で飢饉が起きたとき、これを作って凌いだとか、そういう話があるから、M.H.R.R.では結構広まってる」


「さて、練り上がってボール状になったのがこちらですね」





「……………………」


「何となくオチが見えてきましたが、先に行きましょうか。これからどうされます?」


「あー、まあ、携帯用として、棒状にして、切っていく感じ? だから、こう」





「……………………」


「……これは、甘く見ても、”尻から出た”案件では」


「いや、だから黒糖で作るとこうなるんだって」


「……というか、それを知っているのに何故。冒険心ですか」


「うーん、前に一回、黒糖の比率多めで作ったら、何かホントにリアルなのが出来ちゃって」


「昨夜は肉をよく食いましたね? みたいな」


「そうそうそう。徹夜明けのガっちゃんがツボにハマってゲラゲラ笑い始めちゃって、まあそれはそれでいいかな、と思ったんだけど。今回1:1で作ったけど、……まだリアルだよねコレ」


「麺類を昨夜多量に食いましたね、という感じですね……。」


「ちょっと思いついたのでゴッドモザイク掛けてみましょうか」





「わははははは! 深夜に厳しいネタだね!」


「ホライゾン、キャラとして笑ってはいけないのですが、これが破壊力高いというのはよく解ります」


「というかナイト様、これホントに、さっき尻から出したのを騙して置いてないですか」


「ナイちゃんソコまで革新的じゃないかなあ……」


「まあ、ナイト様、お尻からマジパンを!?」


「メーやんのなかで、ナイっちゃんどういう妖精かな?」


「──あら、でも切ったのを一つ頂いてますが、随分と甘みが深いですね」


「おや、ホントにコレは、黒糖の甘さで急激に和菓子テイストになりますね。ナイト様、尻からこんなものがプリプリ出せた日には人気者ですよ」


「人気の前に通報されるんじゃないかなー……」


「でもコレ、ナイト様がいきなり仕事中に棒状のまま取り出して食べ始めたら、通りすがりの連中に対してはいい威嚇行動になりますね」


「うん、確かに皆、結構ビビるだろうけど、通神帯で”有翼系 糞食”なんて検索が上位に来られてもナイちゃん困るかな……」


「あの、でも、……黒糖、使い切ってしまいましたよね? コレ」


「アー! しまった……!! まあいいか、ちょっと外で食うと無駄にインパクト強そうでアレだから、教導院で間食にでも出すかなー」




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▼結局




「プハハハハ! マルゴット! 二度ネタかと思ったら”昨夜はピザでも多量に食ったの?”って感じで変化入れてきたわね!? いいわ! サイコー!!」


「うーん、黒糖ネタ、ありかな? どうかな?」


「うーんこくとうネタ! うんこくとうネタ! いいわね! 尻からマジパンが出るとか、誰のネタにしようかしら! 神罰系よね!?」


「こっちに振ったらホントに神罰組みますからね!? ね!?」

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