いつもの連中「鶴女房」


●登場人物


■トーリ。俺。一番偉いんだけど一番馬鹿。



■ナルゼ。黒マル。堕天。同人漫画家。配送業もやる魔女。



■正純。セージュン。小等部の講師バイト。今回チョイ役。



■ホライゾン、ホラ子。今回チョイ役。



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「おーい誰かいるか、……って黒マルだけかよ。まあいいや、オメエちょっと手伝ってくんね?」



「何よ一体。何かやることあったかしら?」



「ああ、明日、セージュンが小等部の講師を休む用が出来たから、代わりに行くんだわ。で、昔話の読み聞かせをやるんだけど、俺のテキスト、長い話だから詰めてみたんだけど、内容的に合ってっかどうか調べたいんだわ」



「タイトル何よ? 欧州の古いのとか、今時期乱立だから面倒よ?」



「アー、鶴女房。憶えてっか?」



「ア──、なつかしい。あったわねえ、小等部? 学芸会のお題だっけ? 確か点蔵が鶴に小豆食わせてたら猟銃で撃たれて人柱にされるんだっけ?」



「何かオメエ凄い勢いで小等部トラウマ文学が混じってんぞ」



「いやあ、あの頃のトラウマ文学は変なところだけ心に残るのよね……。でもまあいいわ、”鶴女房”。アー、ハイハイ、通神帯でネームがあるじゃない。どうすんの?」



「アー、じゃあ俺が読むから、ミスってたら正して」



「あのね? 私も明日入稿なんだけど。明後日になると倍増しになるのよね……。って、ああじゃあこっちも読むから間違ってると思ったら直しなさい」



「ウーイ、その方が早えか。じゃあスタートすんぞー」



▼▼▼そんな訳で開始▼▼▼



「──昔々、あるところに与平と言う名の男がいました」



「──与平は両親を亡くし、畑を耕して暮らしていました」



「………………………………」



「ぶっちゃけ、始まりから齟齬があるかと思ってたから、意外ね」



「うん、何か……、新鮮だな、この安心感。じゃあ続けるか」



「──与平はあるとき、罠に掛かっていた鶴を助けました」



「──鶴はたいそう苦しんでいましたが、与平が罠を外し、逃がしてやると、空高くに飛んでいきました」



「………………………………」



「……俺達、天才なんじゃねえか?」



「……そうね、控えめに言って大天才だと思うわ。こんなにミスなくいけるなんて……」



「じゃあ、再開すっか」



「──与平の生活は苦しく、いつも夜まで仕事をしていました」



「──その夜、与平が夜に仕事をしていると、家の戸を叩く者がいました」



「誰かと思っていると、戸の向こうから聞こえるのは女の声です」



「”与平さん。すみません。貴方の女房にさせて下さい”」



「………………………………」



「……あのねえ、ちょっといいかしら?」



「……どうしたよ?」



「この女、ちょっと危なくない? ”来ちゃった”とか言われるとギャグで返せるけど、この押しかけ案件は嫌って言ったら刃物で刺してくるタイプよ? 私には解るの」



「オメエの末文もちょっと怖えよ……! あと昔話で”来ちゃった”は、ねえんじゃねえかと思うが、まあ、人物描写が足りねえのは認めるわ」



「まあ、小等部よね? 何年? 一年? アー、じゃあそういうテクニカルなことよりも見聞広げたり情操的な方が目的ね。解る? 情操教育。エロい気分を操ることよ?」



「オメエ、入稿前だからって走るなYO……」



「でもぶっちゃけ、その話だったら小等部一年でも皆知ってるんじゃないかしら。絵本もだけど、”動画極東昔話”とかでもやってるわよね、よく」



「あー、まあ、そこらは俺の選択ってことで。じゃあまあ、続き行くか。そっちからでいいぞ」



「ハイハイ。──その声を不審に思いつつ、与平は戸を開けました」



「──するとそこに鶴がいました」



「………………………………」



「──オイッ」



「あれ俺今何か間違った?」



「──何で鶴がそこにいんの?」



「いや、いるだろう……。だって鶴女房だし」



「鶴いたら駄目でしょ鶴いたら! 夜に結婚したいって女の声がして、戸を開けたら暗闇の中に鶴が立ってるとか、正気判定を15以下で振りなさいみたいな案件よ」



「解った! 与平はその判定に成功したんじゃねえの!?」



「そういう意味じゃないわあ──! というか鶴出したら駄目でしょ? 究極の出オチ大会でもやってんの?」



「いや、極東の文学は究極の省略文学って言うし」



「アンタ、かぐや姫が、竹切ったらその竹がロケット点火して月飛んでくようなのでいい訳?」



「解った! 解った! じゃあ譲歩する! 譲歩! 譲歩しようじゃねえか」



「──どういう譲歩?」



「──与平が正気判定にファンブルしたことにする」



「一発発狂してんじゃないのソレ……!!」



「──与平は鶴を見て言葉にならない叫び声をあげました”YHCTKAAAAAAAAAA!!”叫びを上げて山に駆けていった与平は後しれず。村は大騒ぎです。山狩りの後、翌日から小等部は集団下校になりました」



「コラッ、終わってどーすんの。もうちょっと戻しなさい。もうちょっと」



「じゃあ、──鶴がいたところまで」



「鶴やめなさいって。出来ればもうちょっと”鶴女房”として安全なゾーンまで下がって下がって。ハイィ──、そこ下がって──」



「鶴女房の安全なゾーンって何だよ一体……。でもまあ、ちょっと改編あったら、それでよくね? オメエだってさっき”皆知ってんじゃん?”みたいなこと言ったろ?」



「あー、まあ、ね。言ったけどねえ……」



「ハイー、じゃあ決まりー、とりあえずこのままスタートしまーす。しまーす。ハイ、はい、じゃあ俺が”──で、鶴がいました”と言うので、思いついた人は続きを作って下さい。ハイ、黒マル君早かった」



「──鶴は言いました。”与平さん、貴女の女房になりに来ました”。与平は答えました。”YHCTKAAAAAAAAAA!!”」



「オイイイイイイイイイイイ! それ俺のネタ! 俺のネタだぞ!」



「どのツラ下げて抗議してんのアンタ。まあちょっと、とりあえず正気判定に成功したとして、与平は鶴を迎え入れました。ハイ! じゃあ次アンタ。どうすんのコレから」



「あ、そっか。続きか。えーと、──鶴は言いました。”これから一儲けするのに3Dプリンタで美少女御神体作りますから覗かないで下さい”」



「アンタそれ業者抜きやったら三十体以上売らないと赤字物件になるパターンだかんね?」



「ツッコむのソコかよ……!?」



「いやまあ、今の子供達に”ハタヲオル”って言ってもねえ……。私だって機織り機なんて、描いてみろって言われたら通神帯から3D素材探すわよ」



「あー、じゃあ3Dプリンタ有りなの?」



「いや待ちなさい。……何で与平、そんなの持ってるの? 原型師か何かだったの?」



「……オメエ、原型師がそれで食っていけなくて畑仕事やってて、夜中に戸を開けたら鶴がいるとか、盛りすぎじゃねえかコレ。昔の人間、何考えてんだ一体」



「やっぱ昔の人間の性癖は凄いわね……。でまあ、与平が持ってると設定に矛盾をきたしそうだから、亡くなった両親が持ってたことにしましょう。両親は不良在庫を抱えて失意の死を迎えたのよ。しかし与平の造形センスは死んでて駄目! そこにやってきた鶴がいい腕を見せる! そういうことよ!」



「……オメエ、いつもエロ同人描いてるせいか、天才じゃねえか……?」



「フ、このくらい1ページに全部詰めるくらいじゃないとやっていけないわよ」



「よし! 何か軌道に乗ってきた気がする! ──じゃあ鶴が奥の機織り部屋に入ります! 入る! 入った! それから作業開始!」



「ハイ作業開始──! それで、待ってる与平には機織りの音が聞こえるけど、機織り機ないのよね。じゃあ3Dプリンタの音が聞こえます。ハイ!」



「ゥシ──コッ、ゥシ──コッ、ゥシ──コッ、キュッキュキュキュ! ココココ、 ゥシ──コッ、ゥシ──コッ、ゥシ──コッ、ジャッジャッジャジャッ! キュキュキュ!」



「解 る か!!

 ──というか”鶴女房”でシコシコ言わない!!」



「あっれ? 俺、今、渾身の出来だと思ったんだけどなあ……」



「駄目駄目。小学生が見たことないから。通じない」



「じゃあ3Dプリンタの音はなしってことで。でもその場合、どーすんの?」



「んー、そうね。鶴の声が聞こえます。それでいいんじゃないの? ──ハイ鶴が作業中に話しかけてくる! 部屋の外にいる与平に対して、鶴は何て言ってんの?」



「アァ────!! イィ────! エクスタシィイ────!」



「ソレ今私が描いてるラスト2ページ前だっつーの……!」



「いやでも、何言うんだよ。3Dプリンタ結構時間掛かるんだぜアレ」



「何かアンタ、意外に変なところで現実無視出来ないタイプねえ。……そんなん”部屋入ったー! ハイ出来たー!”でいいんじゃないの?」



「あー、御免、ちょっと俺、リアル派だからそこら本気になれねえわ。じゃあ黒マル、ちょっと代わりにやってみ? ハイ作業終了! ハイ出来た! 待ってる与平に対して、鶴は何て行って部屋から出てくる!?」



「”あ、すみません与平さん! 間違って卵生んじゃいました!”」



「オイイイイイ! 次のターンは抱卵か!? そうなんだな!?」



「いや、今描いてるのがケモ系だから、何か脳がそっち行ったわ。

 でも大丈夫よ与平。無精卵だから処女よ」



「オメエ、何でそう、自分のターンだとパワーワードだけで喋る訳?」



「いいじゃない話が進んで。ほら、通神帯のSNS大手”顔面本”のCEOも言ってるわ。芸術品を作るよりまず完成させろって」



「完成させちゃいけねえものがあるって、知るべきだよな、ソイツ……。

 あ、でも黒マル、矛盾があるぜ! さっき3Dプリンタ使ったけど、何か出来てねえと駄目じゃねえか?」



「フ、そこらへん、考えてないと思ってんの? ネタは出来てるわよ」



「え? じゃあ、鶴は何を作ったの? どんな感じよ!?」



「そうやって興味を持った与平を、鶴は俯せに押し倒し、脚を開いた上でこう言いました。”さあ与平さん、今、3Dプリンタで鬼公方を作って来ましたからね。レギュレーションによって二回まで作り直しが出来ます”」



「鬼公方、発進だ!」



「発 進 ……!!!!」



「”大丈夫、こういうの初めて? 肩の力抜いてね?”。そして与平は新たなステータスに目覚め、叫びました」



「アアー!! 鶴の棒──! 鶴のー棒──! つるのーぼー!」



「鶴女房……!」



「………………………………」



「……俺達、やっぱ天才なんじゃねえか?」



「……そうね、やっぱ控えめに言って大天才だと思うわ。でも、意外と綺麗にまとまったわね? 実はタイトルが全てを内包してるってのは、いい作品の証左だと思うわ」



「……うーん、そっかあ? どうかなあ? まあ、明日はまあ、コレで行ってみるか」




▼▼▼結果▼▼▼




「コルアアアア! 気になって戻ってきたら何シコシコ擬音立ててムーヴしてんだ!!」



「ハイ、では皆様、本日の道徳の授業はこれから”軽犯罪は極刑に出来るか”をテーマにしてお送り致します。少々難しいですが、最終的には神道裁判で熱湯風呂なので、御安心下さい。 では、点数の方、お願い致します……!」


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