プロローグを読んだときのワクワク感。
本を閉じた後の爽快感。
頭のなかで何度も何度も反芻するお気に入りのシーンとセリフ。
思わずページをもう一度めくり、あれ、あそこ、なんだっけ、どこのシーンだっけ、って思いながら、気づいたら何回も読み返している。
これだ――これだよ! 学生の頃夢中で読み耽った、私の大好きだったラノベはこれだった!
ハーレムもない、チートもない、異世界もない、今で考えたら異色の作品。だけど、私のように今のラノベの流行が好きになれずラノベから離れていった読者には、絶対刺さる。
もう私の好きなラノベはなくなってしまったんだ……そんな悲しい理由でラノベから完全に卒業する前に、読んでほしい。
どうか届いてほしい。「もう一度ラノベを読もう」そう思わせてくれます。
冒頭部の最初の区切りまでを読んだ時。
強烈な世界観と、疾風怒濤の展開と、太陽輝く青空へと高く跳び上がる主人公たちをこの目で見たような心地になった時、僕は既に『錆喰いビスコ』にすっかり魅了されていました。
物理書籍を読了済みです。電撃文庫の公式サイトで試し読みをしたらその時点で見事にハマってしまい、購入してじっくり読んだところ、冒頭の面白さのまま失速することなくむしろ加速していく物語を叩きつけられ、終盤、何度も泣きました。この作品は、熱い展開が好きな人には必ず響くと思います。
激しい性格をした最強のキノコ守り・ビスコと、使命感あふれる医者であり美貌の少年・ミロ。伝説のキノコ《錆喰い》を求めて旅を始めたふたりの道中は、まだ見たことのないものを見にいくワクワク感、そして血が滾るようなバトルの熱さで満たされています。
さらに驚くべきは、情景の想像のしやすさ。キノコ矢という斬新な攻撃手段や巨大な進化生物、そして「北埼玉鉄砂漠」「浮き藻原」などといった不思議な土地も、巧みな表現力と設定自体の持つわかりやすさにより、読んでいて理解に手間取ることがありません。だからこそ、物語の持つアクセルべた踏みの勢いが損なわれないのです。
また、何よりも。この物語は、強い奴らが強い奴とボロボロになるまで戦う物語です。
腕が壊れ、脚が砕けても、敵の喉元へ食らいつく。そしてそれは悪役も同じ。彼らの繰り広げる血だらけ錆だらけの戦いは、決して綺麗なものではないけれど、それでも、美しいと感じずにはいられません。
読めばきっと良い旅ができると思います。おすすめです。