勧君更尽一杯酒,西出陽関無故人
「どうした? 大丈夫か?」
「え?」
突然
「え、なにが?」
「ん、いや。さっきっからお前、何度か胸押さえてるから。どっか痛むのか?」
心配されるほど押さえてただろうか。無意識だった。
「別に、そういうんじゃ……」
「どっか悪いんなら、ヒールかけてやろうか?」
「いや、いいよ、ちょっと変なとこにニキビ、てか、え? ヒール?」
すごいファンタジックなやつ来た。驚いて、もう一度確認。
「え、ヒールとかできんの?」
「ん、そりゃまぁ勇者だからな。簡単なヒールぐらい当然できるが」
当然と言いつつ、心なしか得意げに頬を緩ませる。
「へぇ! すごいな、それ。知らなかった」
ちょいちょい不思議な技とか魔法っぽいものを使っているのは見てたけど。ヒールが使えるってのはびっくりだ。ゲームや小説みたい。
「いやぁ、すごい」
「そ、そうか?」
感心しすぎたのか、
「そんなに珍しいか? こっち来てから俺、結構使ってたけどな、ヒール」
「え? そうなの? 全然、見たことないけど」
鼻をこすりながら、
「ああ、まぁなぁ。そういや、だいたいお前が仕事行ってるときだったか、うん」
「ふうん。え、でも。そんなヒール使うって。そっちこそどっか悪いのか? 怪我? 病気?」
よく考えれば、ヒールを使わなければならない状況なんて剣呑だ。
「いや、いや、大丈夫だ。そんな深刻な問題じゃない。ただなァ……」
「ただ? なんだよ?」
万一のことがあっても、
「……まぁ、なんだ。こう言っちゃなんだが、やっぱり異世界での生活は慣れないことも多いからだろうな、知らんうちにストレスが溜まるみたいでよ……」
「そっか」
迂闊だった。そりゃそうだろう。この世界は、
「いつもじゃないが。たまに朝な、頭がガンガン痛かったり、胸がムカムカして吐いたり、熱っぽくて乾いたり、動けねぇことがあってなぁ」
「それ、ただの二日酔いだろ」
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