持ち物。水着、麦わら、甥っ子、サングラス。
まだ梅雨入りもしていないというのに。じきに暑い暑い夏がやってくる。そんな予感のひしひしする蒸し暑い日だった。
「暑い……はぁ、夏だなぁ」
「おう。こっちの夏も暑そうだなぁ」
そう言う
「うん、暑いよ。……やっぱりあれか、逆に寒いのは苦手だったりするのか?」
かっぱのことは知らないが、爬虫類だったら冬眠とかするんじゃなかろうか。
「んー、まぁそうだな。どっちかっつーと寒いのは苦手だ。やっぱ気温が-20℃とかになるとキツいからな、上着着るな」
「ふーん、やっぱそうなんだ」
相づちをうちながら、なんかちょっと違う気もした。でもなんだろう。分からない。……
「そうだ、暑くなったらプール行かない?」
なんとはなしに思いつき、言ってみる。
「ほう、ぷーる?」
「そう。えーと、泳いで遊ぶための広い溜め池みたいなやつ」
「ああ。そりゃいいな」
喜んだ
「じゃあ、いつでも行けるように
まぁ、プールシーズンはまだちょっと先だから、それまで
「そうかそうか、お前も泳ぐの好きなんだな!」
なぜか
「え? 別に。好きじゃないけど?」
ここ数年、プールには行けどもまともに泳いだ記憶はない。だからうっかり本音で答えたら、
「好きじゃない? お前から誘ったのに? なんでだ?」
「あ、あー。ええと、なんていうか」
うーん、どうしよう。どうでもいいことなのに。ややこしいな。
「んーと。いや、たぶんお前泳ぐの好きだろうから、プール行ったら喜ぶんじゃないかなぁと思ったんで……」
面倒だったので、適当に思いついた理由を口にする。
なぜか真顔になった
「ちょ、え? え?」
噴水みたいだ。
「くううううう」
「な、なに? どした?」
「そんなお前。ぷーる嫌いなのに、俺の……俺のために、行こうって言ってくれたのか!」
「え、あ、うん、いや……」
「それが俺は嬉しくて!
「そんな、別に…………」
目元をごしごしとこすり、
「でも、嬉しいが。お前が嫌いなら、無理すんなよ?」
「……あー、大丈夫。そんな目茶苦茶嫌いとかじゃないし……プールなら去年とかも行ったし……」
「そうか? ならいいが。しかしお前、嫌いなのによく行くのか?」
「えーと、だから。別に泳ぎに行ったんじゃなくて、つまり甥っ子を連れてったっていうか」
なるほど、と
「あのちっこいのか」
「うん。今年も
「おう、もちろんだ」
すっかり笑顔になった
適当に相づちを返しつつ、観察した
プールに行く目的なんて、そんなの生の水着女子が見たいだけに決まっているが、なんとなく
甥っ子? 男一人じゃ浮いちゃうから、もちろん偽装ですよねー。
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