この勇者は強いが詰めは甘い。
「…………。」
「なんだ、どうかしたのか?」
マヨネーズを出していた
「いや、どうもしないけど。実際のとこ、どのぐらい重いものまで持てんのかなぁってちょっと思って」
マヨネーズは封を開けたばかりだ。しかもマヨは一般サイズ450g。15センチの体長からしたら相当大きくて重いはずなのに、
「そう言われてもな。別に測ったことなんかないからな。でもこのぐらいなら余裕だ」
そう言ってさらにマヨを出す。さすがに出し過ぎだと思ったが、
「よし、試してみるか?」
「は?」
マヨのことを考えていたので反応が遅れた。その間に
その姿勢、なんかで見たことあるけど。
「…………?」
「ほら、早く。腕相撲だよ。知らないのか」
ああ、腕相撲。え、正気か?
「知ってるけど、でも」
しかし
どう考えても手は組めない。そっと右小指を出す。肘と体の位置を微調整してなんとか合わせた。
ひたりと彼方の冷たい手が小指をつかむ。
「号令は俺でいいか?」
「うん、いいけど」
……この体勢でうまく力をかけられるだろうか。あらぬ方向へ彼方をぶっ飛ばしてしまうかもしれない。気をつけないと。なんてのんきに考えていた。
「そんじゃ。レディ、ゴー」
気づいたら、仰向けに天井を見つめていた。
「……は、え?」
慌てて起き上がって振り向くと、さっきと同じところで同じ姿勢で、頬杖ついてニヤニヤしている
「な、え? 今どうなった?」
「分かんなかったのか? じゃ、も一回やるか」
そう言って、また右手を出してくる。混乱しつつ元の位置に戻り、再度手……というか指を組む。
「今度はお前が号令でいいぞ」
「え、うん。それじゃあ」
自分の肘、支点の位置と
「レディ、ゴッ」
同時に思いっきり彼方の腕を押し倒した。が、驚くべきことに
次の瞬間、小指に捻りの効いた力がぐっとかかる。抗う間もなくねじれは腕から一気に駆け上り。
やはり気づくと天井を見ていた。
つまり。170センチが15センチに片手でひっくり返されたのか!?
「…………まじかー」
信じがたい力だった。が、二度もひっくり返されて、ぐうの音も出ない。
得意げな
「ま、これは腕力っつーよりも一種のワザだけどな」
それにしても。さすが勇者。15センチでも侮れない。
とはいえ、相手がいくら勇者様だからって、黙ってやられっぱなしになっては沽券に関わる。
「ところで。ひっくり返されはしたけど。腕相撲のルール的には手の甲が床についてないんだから、俺負けてないよね?」
「なッ!」
したり顔だった勇者は一転して狼狽える。その手からぽとりとキャップが落ちた。
※手の甲がついてなくても試合中に肘が動いたら負け
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