科学的な根拠とかはないけど、気分で酔う
出来合い惣菜のカツのパックを開ける。ふわりとソースの匂いが漂った。
「えーと。とりあえず掃除お疲れさまでした」
「掃除じゃない、探索!」
「はいはい。えー、探索お疲れさまでした」
「なんだ、これ、なんだ?」
「カツです。ソースカツ」
持って帰る間に衣がふにゃっとしてしまっているけれども。それはそれで旨いので、トースターで温め直しとかはしなかった。
包丁で小さく切り分けようとしてみるが、意外とこれが難しい。肉のスジに苦戦してると衣が剥がれる。面倒になったので、適当なサイズで
「おう、ありがとな」
やや大きめのそれを彼方が持ち上げる。かぶりつこうとして、やはりちょっと苦しかったらしい。そっとカツを置いた。もう少し頑張って切らないとダメか。そう思って包丁を持ち直すより早く、
「って、ちょっと待て。なんだそれ。どうやって出した? どう見たって甲羅よりでかいだろ、それ」
びっくりして声を上げる。
「え、そりゃ甲羅だからな。剣ぐらいしまってあるだろ」
いやいやいやいや。便利すぎるだろう。そういえば、さっきも
満足げに剣を一拭きし、しまう
本人がいいならいいんだけど。
「おお、旨いなこれ。肉か? 肉だな。中は肉だ。外はなんだこりゃ、旨いな。この黒いのがまた旨いな、うん」
食リポには向いてなさそうだが、お気に召したらしい。すぐに次の一切れを突き刺し、もぐもぐと美味しそうに食べている。良かった良かったと思いながら俺も食べようとカツに箸をのばす。うん、旨い。
ちらりと
「……あ。そうだ。忘れてた」
分かった。というか、思い出した。台所へ立って冷蔵庫で冷やしていたソレを持ってくる。
どんとテーブルに置いた。
「今日はこれ、サッポロ生だ」
「ほお?」
第三じゃない。本物のおビール様である。しかもロング缶1パック。昨日と同じCGCの酒でも良かったのだが、なんとなく奮発。
さて問題は。昨日はペットボトルのキャップをコップ代わりに出したわけだが。どう考えてもビールをそれで飲んでも美味しくないだろう。だから考えてある。
大きいグラスに思いっきり注ぐ。
「おおお! これはあれか、エールか」
「うん。いや、エールつーかラガーだけど。まぁエールみたいなもん」
「ふーん。澄んでてすっげー綺麗だ」
でもこれでは
「ほい、どうぞ」
「おう、ありがとな」
「ぷっはー。旨い。すげー爽やかだな」
満面の笑みでご満悦のようだ。さらにビールを一気にいき、槍先のカツを頬ばる。
こちらも満足げな気分になりながら、泡が消える前にと冷えたビールに口をつける。やはり一口目ののどごしは格別だ。ソースカツもビールにばっちり合う。最高だ。
ところで。さっきからなんか、
……あ、コレ、貧乏学生とかがお酒ないのに酔いたいときにやるヤツだ。なんかよく分かんないけど、回るんだよなー。
ほどなくして、
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