エイプリルフール番外編 春先の悪夢。
● 妖精騎士と双頭の龍
14.5。
………………………………ほう…わ?!
な…何だ、これ!?
何か視界が二つあるみたいで…オカシイぞ?!
………び……病気か、病気なのか!?
とうとう《俺》、異世界特有の風土病とかに掛かっちゃったの?
まだコッチに来て日が浅いから、失念していたよ…。
こんな寄生虫はともかく、細菌や微生物の存在自体が知られてなさそうな…。
微妙な衛生環境の異世界に、ワクチンとか予防接種みたいに高尚な医療技術なんか……無いよね?
……や、やっぱり……悶絶するような苦しみの果てに、七孔噴血しながら死んで行くんだろうか…。
……ツ…キン…。…チク、…。
何か…さっきから…。
痒いというか…何か、チクチクする。
………は!?
び、病気の初期症状?…いや、まさか!?
………末期症状…なのか。
……………………………………………………………………………!?
……ひぃ?!
……………うろ…………こ?
………鱗だよね?
あれ?《俺》って
ゾ…ゾゾゾ…。
全身に怖気が駆け回る…。
……も…もしかして、これが異世界の洗礼…風土病の正体なのか!?
助からないのか?《俺》…。
……リ、
………いや、蜥蜴人なら…まだいい…《ぬいぐるみ》より、格段に進化した感があるから…。
そう、問題は…。
…………魚類………だった場合、だ…。
……ま。
マーマンは嫌……マーマンは嫌…マーマンは嫌。マーマンは嫌!マーマンは……嫌ああああああ!!
あ…アレキサンダーー!…じゃなくて。
…早くダイスを!…て、抵抗判定を!?
アレにだけは! 成りたくないのですよ《俺》は!
成る訳にはいかんのですよ!
『人よ…原始に還れ』とは言っても…。
それは、せいぜい爬虫類までなのですよ!
……チクチク…チク、チクチクチク……ズクン…。
あおわ、痛ぁ! いぃい、痛いっ!!
びょ、病状が!…病状が悪化してる?!
……ん?
…《俺》の周りを…何か、ブンブン飛んでる…。
蠅か虻かな?
いや、あの大きさなら…雀蜂か?でも…。
…………ピンク色?
ていうか、薄桃色?…。
…それとも桜色っていうのかな。
そんなオメデタイ色の異世界雀蜂に《俺》は刺されていたのか…。
…………!………いや!?
何か違う!…虫じゃ、ない!………人型で…耳が! 長い!
アレは待望の!
妖精さん!!
やったあー! ナビ妖精ゲットだぜ!
さああ、説明を! 存分に含蓄ある蘊蓄を垂れて貰おうか!!
……ズクン、ズクン…ズシュシュ!
イダイ、イダイー!
……もお何するの? この娘……は。
その時、始めて…小さな彼女と目が合い。
《俺》は、何故か…言葉を発っせなくなり…。
そして、彼女から目が離せなくなった。
……彼女は言った。
「…師よ。…余りある程の大恩ある師よ! 妾の、私の全力を以て貴方を倒し!…貴方を!……元の………世界に……!…」
…………………………………………………………………。
その小さな桜色の妖精さんは…。
泣きながら…泣きじゃくりながら…。
……ああ。
彼女の涙を拭ってやりたかった…。
……!?
でも…。
《俺》の両手…いや、両腕が共に…。
……白金色の《片翼の龍》だっ…た。
…こんな美しくも凶悪な…牙の並ぶ手指では …彼女の涙を拭って上げる事は、出来ない。
諦観や別離の、最期の機を…。
…《俺》は突然、何故か悟れた。
そう。
彼女と《俺》の間で、決定的な何かが収斂して行くのを…沈黙だけが肯定していた。
大量の眩しき稲妻を纏う妖精騎士…。
彼女は、その周囲に展開されていた十数本の黄金色の太めの針(槍かな)を操り飛ばし…。
それらを、《俺》の身体の各所に突き立て…。
「………………『
彼女は数瞬躊躇った後…そう、叫んだのだった…。
=======================
……………という夢を、今朝がた視たんだが…どうだろうか?
「へえ。アンタ夢なんか見れるんだ?」
と、金色の巻き角を持つビキニアーマー女…ローテ。
ついで…。
゛どうだろうか…と聞かれましても…゛
とは、清楚な黒髪の女魔術師スターマ。
゛「キモい」です!゛
うわ、コイツらステレオで、シンクロして人を……いや《ぬいぐるみ》を罵りやがった!?
更に、追い討ちの如くローテが…。
「《双頭にそれぞれ片翼を帯びた、白金色の
という、更なる罵倒と共に…《俺》の魂までも凍てつかせようかという冷ややかな視線を容赦なく叩きつけて来るし…。
死んだ!もう立ち上がりたくも無い!
ファンタジー世界の住人に、『夢見がち』などと言われる《俺》の存在って………何?
【ぬいぐるみ。戦記】 人喰いウサギ @redrose0620
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【ぬいぐるみ。戦記】の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます