第7話
13。『また〈使えないスキル〉ですか?そうですか…。』
ズオ…オォオ…オオオ…オォ…オォォ。
……怨霊達の呻き声がする。
そして…。
゛爬痾唖唖唖痾唖唖唖唖唖…唖唖…痾唖痾唖唖唖唖唖…唖痾唖唖唖唖唖……゛
…ス、スターマの口から奇々怪々な声(?)が…。
吐き気を催しそうなリアル映像と
滝のように!
…そして、それらは…。
…お、《俺》の……顔の上に!!
正に、外道!
悪魔の所業であり断固抗議し、場合によっては裁判も辞さぬ覚悟ですよ!
いやいやいや!
いっくら腹に据えかねた事があっても、人の顔…。
…それも…ぬ、ぬいぐるみのプリチーフェースに亡者をブチ撒けやがるなんてっ!
それに!
こ、この…やや粘りのある液体みたいな感触は、まさしくゲ○でしょう?!
お、《俺》!
まだ、異世界生活半日くらいなんですけど!?
何で、こんな会ったばかりの悪霊ヤン女に ヒドい目に合わされないとならないんですかねー?!
…ねー?!……ねー…………ね……………ぇ…………。
………そんな《俺》の、青年の主張も虚しく…。
遠慮も容赦も…何らの呵責もなく吐瀉物は顔面にバシャバシャ浴びせ掛けられ、有るのか無いのか分からんMPみたいな『大切な何か』を削り続けられている…。
そう…《俺》は無力だ…。
ただ この空間に…そして、この時間に在って この暴虐という事象を、現実を『諸行無常』として悟り切るしか無い…哀れなる存在なのだ。
…はあ………………セツナイ。
……しかも、ぬいぐるみ仕様の…樹脂製らしき円らな《俺ズ》アイには目蓋という高度機能の実装など無く…。
…よって、見たくもない状景…。
……いやさ惨状を見続ける事を強要される、哀れなぬいぐるみの姿が…そこにはあった…。
………ぐうぅ。…とにかく…。
…スターマが吐き出したゲ○…じゃなくて、怨霊たちは その辺をウロウロしている。
その数、既に20体ほど…。
今のところ…。
騒いだり、通行人に悪さをするような不穏な気配はない。
………まあ、いま《俺》が受けてる仕打ちが十二分に不穏当な為、《俺》の分析や精神の健全性を保証する根拠には欠け、甚だ自意識自体に疑問が残るところだが…。
………しかし、まあ。
゛…烏腐、訃腑腐腐腐腐腐腐腐腐訃腑腐腐腐腐腐腐訃腑腐腐腐腐腐腐訃…゛
何故かスターマは、とても嬉しそうに…かつ、おぞましく笑っている。
笑い続けている…。
………顎関節症や脱臼が心配になるほどに。
…楽しそうですね?スターマさん。
まあ…人には色々あるからな、溜まってたのかな? ストレスとか、霊とか。
あ、人じゃなくて〈生霊〉か(本人曰く)
……いや、本体が生きているなら(これも本人曰くだが)……人間かな?
それに……。
……何だ?…さっきから…?
…………………………………………………………………………………………。
……ん?
…あれ?
何か……………この状況…。
……怖くない、のか?
…って言うか、段々どうでも良くなって来た気が……する?
…………………………………………何で?
……………………何か…また変な『耐性スキル』でも発動したのか?
……はん…またですか、そうですか。
…今度は何です?
前は、『空腹?耐性』だったっすよね?
………………………………………………………………………………………。
……分かった分かった、はいはい。
毎度お馴染み、自問自答のお時間ですね?
そうですね。はいはい、自分の脳ミソで考えますよー。
………まあ、ぬいぐるみ だから『脳無し』ですけどね、ええ。
目も瞑れない、縛りがキツ過ぎて顔も背けられない、ナビ妖精さんも出てくる気配なし、オマケに逆さまのまんま…。
正直、身銭切ったゲームなら『こんクソゲーがあああ!!』ってアパートの壁に投げ付けるレベルの不条理な環境ですわ、ホンマに…。
……………ふう、さて。
………発動?のきっかけは…………何だ?
14。『女性って……怖いですね!(テヘペロ)』
…………………………………ふむ。
やっぱり《俺》には…怨霊怪異自体への恐怖とかはないみたいだな…。
…目前で、あんな大量…。
かつグロく量産される霊達を見せ付けられても…。
…………怖くない、な…。
…やはり、怖いのは…。
゛唖゛、唖゛佗゛シ…ノ、ア…タ゛シの、運命いいぃ…ぃ…゛
…しきりに『運命論』を口にする…。
ちょっと夢見がちでイタ気な、そして大変迷惑なヤン系ゲ○女、スターマ女史。
……………………………………………………………………………………。
…ブルッ…。
………………うん、怖い。
女性に、こんな至近距離から怨嗟の声をゲ○と一緒に吐き掛けられても動揺しない、ハートの強さは…。
…
体と言うか、魂が拒否するような……ある種の根源的な恐怖が…。
《俺》を人生…ぬいぐるみ生 初めての金縛りに
《俺》の現状に対する率直なご意見は…。
早く、早く…この悪霊女と縁切りしたい!である。
正直、ローテに逆さ吊りでフン縛られてなければ逃げ出したいほどだ…。
……もはや怖すぎて慣れてしまいそうな程、ヤバい感じの安定した怖さ、と言っても過言じゃないだろう。
………………正直、自分でも今…何を口走っているか分かっていない。
ただ…。
……間違いなく、この世で一番怖いのは……憎悪に狂った女なんだな…。
………という実感と、それに伴う確信だけは本物だった。
…まあ。
『運命』…とか口にするからには、何らかの悲運を背負っているのかも知れない…。
職業柄 魔術までが使えてしまう…ようだし。
…………でもね?
…こんな形で、とは言え…。
知り合ったばかりの、赤の他人である《俺》に……チャラ男に対するヤン女の報復みたいな仕打ちをするのは間違ってると言いたい!
しかし、人間らしい…とは思います(まる!)。
……………んむう。
…まあ、こんなんでも『袖振り合うも他生の縁』という奴なのかな…?
とりあえずは…。
何とかスターマを落ち着けないと、またローテに…。
…って、すっかり忘れてたけど…。
ローテの奴、この緊急事態にも拘わらず静かだな。
………不感症か(霊的な)?
まあ…破廉恥な服装といい、ある意味とことん鈍い女だとは思っていたよ…。
よく、この状況下の道の真ん中で突っ立っていられるもんだよ。
いやはや、関心するやら呆れ果てるやらですわ。
まあ、それはさて置きと…。
確かに吐き出された霊達は ただ、ボーっと突っ立っているだけで…。
……ん?んーーーー。……………何だ?
…すると何か?
もしかして…この世界じゃ霊ってのは、見えない存在なのか?……一般的に。
゛…がう、わ…゛
…ん?……………!?
゛違うわ…゛
正に憑物が落ちた…とは、この事を指すのだろう。
……あの夜叉のごときヤン女顔が、まるで…。
そう……スターマは菩薩の様な慈愛顔に取って変わっていたのである。
……何で? ねえ ?!
女って、怖い。………ねえ?
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