「高校生が入ってもいいんでしょうか?」
その日は結局、桃李さんとは話す機会がないままアフターは解散。ファミレスを出たわたしは、みんながいなくなるのを見計らって、駐車場に停めていたヨシキさんの『TOYOTAbB』に乗り込んだ。
シートベルトをつけていたヨシキさんに、わたしはいきなり抱きついて、キスをする。
「ん、、、 こんなところで、大胆だな。凛子ちゃん」
「ヨシキさん、そういうのが好きでしょ」
「まぁね」
「もっとしてあげます」
「だれか見てるかもしれないぞ」
「見せつけてあげましょ」
そう言ったわたしは、ヨシキさんの首に両腕を回し、さらに濃いキスをした。
それに応える様に、ヨシキさんもわたしの腰を抱き寄せてくる。
悩ましげに舌を
セーター越しの指の感触が、なめらかで気持ちいい。
やっぱり、ヨシキさんがいい。
悔しいけど、他の男じゃ話にならない。
ヨシキさんだけが、わたしの心もからだも満足させてくれる。
息もできないような長いキスと愛撫で、息が乱れて頬が紅潮してくる。
負けじとわたしも、ヨシキさんの下半身を指でなぞってみる。
その部分はもう、固く膨らんでいた。
パンツのチャックをおろして大きくなったモノを取り出したわたしは、指を上下に動かして先の方を撫でながら、ヨシキさんの耳に唇を近づけてささやいた。
「今から、お部屋に行ってもいいですか?」
「最初からそのつもりだったよ。でも、今日の凛子ちゃん、いつにも増して大胆だな」
「ええ。気分変えたくて」
「どうかした?」
ヨシキさんのモノから手を離したわたしは、吐き捨てるように言った。
「やっぱり気分悪いです。このメンツでアフターするのって」
「…そっか」
「以前、ヨシキさんも言ってたじゃないですか。『こんな腐海みたいな場所から、一歩引いた所にいたい』って。改めてその言葉を、実感しました」
「そうなんだ」
「ヨシキさんもアフター嫌いなのに、今日は無理やり誘ってすみません」
「まぁ、いいよ」
「でも、おかげで確認できました」
「え? なにを?」
「ふふ。いいんですよ。これは女の戦いなんですから」
「ふぅん。まあ、いいや。で、凛子ちゃんはそれに勝利したのかい?」
「完勝です」
「じゃあ、戦勝記念に、面白いところに行こうか」
「面白いところ? どこですか?」
「着いてからのお楽しみ」
そう言って意味深に微笑んだヨシキさんは、わたしが放り出したままにしてたモノを仕舞って、パンツのチャックを上げると、ひとつキスをして、クルマのイグニションキーを回した。
わたしもセーターの乱れをなおし、シートベルトをつける。
駐車場を出て、公道に入る前にわたしは、ヒエラルキーの戦いを繰り広げた
クルマは次第に加速していき、ファミレスはうしろに遠ざかり、見えなくなっていく。
もう、ここであのメンツとアフターすることは、二度とないだろう。
さよなら。
だけどわたしは、気がつかなかった。
そのファミレスの陰から、一部始終を見てたレイヤーがいたのを。。。
ヨシキさんがクルマを止めたのは、黒の大理石を基調としたシックな外壁に、カラフルなネオンが映えるビルの駐車場。屋上には『Hotel le charme』というサインが、群青色のトワイライトの残光と、綺麗なコントラストをなしている。
ここって、もしかして、、、
「ラブホテル、ですか? 面白いところって」
「凛子ちゃん、イヤだった?」
「いえ、、 ちょっとびっくりしただけで。こんなとこ、初めてだから」
「なにごとも経験だよ。ホテルガイドでここを知って、ぜひ凛子ちゃんと来たいって思ってたんだ。
内装がハイパーでSFっぽいんだよ。今日のボカロの撮影にはぴったりな場所だと思うよ。さ、入ろうぜ」
そう言いながらクルマを降りたヨシキさんは、後部座席のドアを開け、コスプレ衣装の入ったわたしのバッグを降ろす。
「ここで撮影するんですか? コスプレの」
「今日はカメコが多くて凛子ちゃんをほとんど撮れなかったし、あのボカロはオレのドストライクなキャラなんだ」
「でも、、、」
「な、撮らせてくれよ。最近はラブホでもオシャレなところ多いし、ここなら今まで見たことがない様な、ハイパーなシチュエーションで撮れると思うんだ。いいだろ、凛子ちゃん」
「ええ、、、」
「な。頼むよ」
こんな風に
そういえば以前、
『ラブホでもおしゃれな所いっぱいあって、スタジオもいいけど、『ホテルで撮ろう』ってことになったりもする』って、桃李さんが言ってたことがあった。
おそらく桃李さんも、ラブホで撮影したことあるんだろうし、やっぱり興味はあるし、ヨシキさんのお勧めなら間違いはないはず。
でも、わたしはまだ高校生。
ヨシキさんとは何度もホテルでお泊まりしてるとはいえ、高校生がラブホに入っていいんだろうか?
「凛子ちゃんももう18歳だし、法律的には問題ないはずだよ。そのカッコなら高校生には見えないし」
その言葉が、わたしの背中を押した。
「…じゃあ、わたしも入ってみたいです」
好奇心に負けて、わたしもクルマを降りた。
つづく
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