「淫靡でふしだらなわたしを撮ってください」

「うわぁ。なんか、未来の世界に来たみたいです!」


思わず感嘆の声をあげ、入り口で立ち止まったわたしは、部屋のなかを見渡した。


ロビーに設置された、部屋の内装の写真が並んでいるパネル。

そのなかから迷いなく、最上階のいちばん高い部屋を選んだヨシキさんは、はじめて来たとは思えないくらいスムーズに部屋にたどり着き、ドアを開けた。


ペパーミントグリーンを効かした、白を基調とした清潔な部屋。

淡い光を放つフロアは、踏んだ場所のブロックの色が変わるのが、未来的。

壁にも大きなスピーカーが仕込まれていて、モニターには不思議な放射状の模様が映し出され、まるで宇宙船に乗ってワープでもしているかの様。


「このライトもおもしろいな」


ヨシキさんがパネルを操作すると、天井から下げられていたライトがめまぐるしく動き、鋭いレーザービームを放った。

いろんなところに埋め込まれた鏡に、レーザーの光が乱反射して、目が眩みそう。

確かに、こんなサイバーな空間なら、ボカロの撮影にはピッタリかもしれない。


衣装に着替えたわたしは、光る床の真ん中に座ってポーズをとった。

カメラを構えて撮影に入ろうとしたヨシキさんだったが、ふとファインダーから目を離した。


「そのスパッツ。脱いだ方がいいな」

「え?」

「パンチラ防止に穿いてるんだろ。オレとの撮影じゃ必要ないだろ」

「あ。ごめんなさい。つい」


脱いだスパッツをバッグにしまい、撮影の仕切り直し。

わたしの支度が整う間、ベッド脇のパネルをいじっていたヨシキさんは、むき出しになった壁のスピーカーから、ボカロの曲を流しはじめた。

アップテンポの電脳旋律コンピューターミュージックが、部屋いっぱいに響き、レーザービームが激しく頭上を回る。

繰り出すポーズもつい、リズムとシンクロしてくる。

曲に合わせるように、わたしは次々とポーズを変えていった。

そんなわたしを、ヨシキさんは軽やかに動き回り、あらゆるアングルから狙う。

一曲終えて見せてくれた画像は、今まで見たこともない様な光の洪水。

まさに無機的なボーカロイドそのものだった。


新鮮な刺激に一気にテンションがあがり、音のドラッグに溺れるように、わたしは柱に脚をからめ、床を這い、挑発的なポーズをとった。

短いスカートの裾からは生のパンツも見えるだろうけど、そんなの構わない。

ううん。

むしろ、撮ってほしい。

思いっきり淫靡いんびでふしだらなわたしを、ヨシキさんに撮ってほしい。

ほんとのわたしは、まじめで清楚なお姫様なんかじゃない。

いつだってヨシキさんを求めてる、淫らな女。

アフターでの嫌な気分を振り払うように、わたしは撮影に酔いしれた。


「すごいよ凛子ちゃん。大胆で淫らで綺麗だ」


そう言いながら、ヨシキさんは思いっきりわたしに近づき、シャッターを切っていく。

そのまま濃厚なキスをすると、わたしの脚を大きく開き、パンツの上から秘部をまさぐりはじめる。


「はぅ、、 いい、、 もっと!」


はじめてのラブホテルの非日常的な空間で、コスプレ姿でエッチしてるという刺激が、よけいに快感を昂めてくる。

わたしを四つん這いにしたヨシキさんは、衣装をめくり上げ、パンツをずらして後ろから貫いた。


「いい。いいよ、凛子ちゃん。コスプレでやるのもすっごい新鮮だな。ほら、見てみろよ」


そう言ってヨシキさんはわたしの髪を引っ張り、目の前の壁に顔を向かせる。

そこには大きな鏡があって、ふたりの姿を映し出してた。

高く突き出した真っ白なお尻を、ヨシキさんは両手でグイッと掴み、激しく腰を打ちつけている。

自分の最中の姿を見るのって、そういえばはじめて。


「いや、、 恥ずかしい」


あられもない姿に、わたしは顔から火が出るみたいだった。


「じゃあ、もっと恥ずかしくしてやるよ」


意地悪げに言ったヨシキさんは、両肩に腕を回して、わたしの上体を起こす。

繋がってる部分が鏡に映り、わたしはさらに頬を赤らめた。

その姿に興奮したのか、ヨシキさんも動きを早めていく。

壁や天井の鏡に映るふたりのもつれ合った姿を見ながら、わたしたちは一気に高みへ昇りつめた。


この瞬間だけは、なにも考えられない。

レイヤーやカメコの人間関係とか、匿名掲示板とか、煩わしいものいっさいから解放されて、ヨシキさんとの世界に溺れられる。


コスプレ衣装を脱いだわたしは、今度はヨシキさんをベッドに押し倒し、自分から彼の胸に愛撫をはじめた。

まるでオモチャでも扱うように、わたしはヨシキさんに跨がり、お気に入りの玩具を秘部に入れる。

されるがままのヨシキさんだったが、思いついたように枕元のあんま器のようなものを手にとると、わたしの秘部に当て、スイッチを入れた。


「ひゃうっ、、」


いきなり激しい振動がわたしを襲い、思わず素っ頓狂な声を上げる。


「これもはじめてだろ。たまにはこんなプレイもいいよな」


怪しい光を瞳に宿したヨシキさんは、体勢を入れ替えると、それを陰部に当てながら、激しくわたしを突いた。

二重の快感に意識がトリップしそう。

もう、どうなってもいい!


愛の確認とか、聖なる儀式とか、そういう詩的なものじゃなく、その夜のふたりはただ、快感を貪る野獣になっていた。




 激しい情事のあと、ようやく家に帰り着いたのは、門限ギリギリの10時近く。

いつもに増して、別れが辛い。

何度もキスを交わし、わたしたちはつかの間の別れを惜しんだ。

そして、帰宅したわたしを出迎えたのは、いきなりの母のビンタだった。


つづく

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