「過去さえ独り占めにしてしまいたいです」
そのあとは、くすぶっていた炎が一気に燃え上がるようだった。
人目につかない本殿脇の暗がりで、わたしたちはきつく抱きあった。
ヨシキさんの唇がわたしのからだを這う。
Tシャツを捲りあげると、ブラをずらして胸にしゃぶりつく。
そうしながら、性急にショーパンのボタンをはずしてチャックを下ろし、ショーツといっしょに太ももまでずり下げる。
露になったわたしの秘部は、ほんの少しの愛撫で、瞬く間に潤っていった。
荒々しく胸を揉みながら、指先はしなやかに敏感な突起を探り当て、昂まりへと導いていく。
膝がガクガクと震えて、立ってられない。
思わず、ヨシキさんの首にしがみつく。
片腕でわたしを支えながら、ヨシキさんは胸に顔を埋め、もう片方の手で秘部をまさぐった。
「もう… 来て。ヨシキさん、、」
「凛子ちゃん…」
胸元から顔を上げ、悩ましい目線で見つめるヨシキさんは、ゆっくりをわたしを抱え上げると、本殿の濡れ縁に横たえる。
わたしの足首を掴んで脚を広げ、自分は立ったまま、熱く昂まったもので一気に貫いた。
「凛子ちゃん、愛してる。
君なしではオレはもう、生きていけない!」
「ヨシキさん。もっと、もっとわたしのこと、求めて!」
「好きだよ。凛子ちゃん! いつでも君を抱きたい!」
「抱いて! どこでも! もっと強く!」
「オレのが入ってる凛子ちゃんが見たい! パックリ口を開けて、ヨダレ垂らしながら、オレのを呑み込んでる姿を!」
「いや… もっと、見て」
「こうしておれのモノでよがる凛子ちゃんを、いつでも見ていたい!」
「もっと… もっとよがらせて。ヨシキさんの熱いので!」
激しく腰を動かしながら、うわごとの様にヨシキさんはささやいた。
シンクロする様に、わたしもそれに応える。
ひとしきり、わたしの蜜壺をかき回したあと、繋がったまま、クルリとわたしのからだを裏返し、今度はギュッと腰を掴んで、ヨシキさんはうしろからわたしを突き立てる。
濡れ縁に肘をつき、思いっきりからだを反らしてお尻を突き出しながら、わたしは全身でヨシキさんを感じていた。
自分がどんなに、ヨシキさんに飢えていたのか、よくわかる。
この一週間の、
砂漠のなかを歩き回って、乾ききったからだを潤すように、わたしも貪欲にヨシキさんを呑み込んだ。
こんな住宅街の神社のなかだっていうのに。
いつ人が来るか、わからないっていうのに。
そんなことはどうでもいい。
他の女とエッチしたかどうかなんて、今はもう、どうでもいい。
わたしはヨシキさんがほしい。
今、この瞬間!
あわただしくコトが終わると、今までのケンカが嘘のように、わたしたちは濡れ縁に腰をおろし、抱き合って指を絡めあっていた。
こうして過ごすひとときが、ふたたび、甘く愛しいものに変わっていく。
ヨシキさんの肩にもたれかかって、わたしは頭をくっつけてみる。
なんて満ち足りた、幸せなひととき。
時が経つのも忘れてしまう。
わたしの髪を優しく撫でながら、ヨシキさんは何度も何度も『愛してる』と、耳元でささやいてくれた。
「あと二ヶ月くらいで凛子ちゃんの誕生日だろ。またふたりで、どこかに泊まりで行きたいな」
「そうですね」
「凛子ちゃんは行きたいとこ、ある?」
「ん・・・・ だれとも行ったことのない所」
「だれとも?」
「元カノとかと・・・ ヨシキさんが行ったことのない所がいい」
「…そうだな。考えてみるよ」
「訊いていいですか?」
「なにを?」
「今までのカノジョって、どんなだったんですか?」
ヨシキさんの肩から頭を離すと、わたしは彼の方に向き直って訊いてみた。
考えたくないけど、やっぱり気になる。
知ったところで、どうせ気分悪くなるだけだろうけど、聞かずにはいられない。
「どんなって?」
「『今までのカノジョとはつまんない恋愛だった』って言うけど、ヨシキさんは何人くらいとつきあったんですか?
『自分のペースに巻き込んで相手は言いなり』って、どんなつきあい方なんですか?
美咲さん以外で、わたしの知っている人、いますか?」
「そんなこと。知らない方がいいよ」
「そりゃそうだけど、、」
「お互い、過去の恋の話なんてしないのが、恋愛のマナーだろ」
「ふうん・・・ なんか、ずるい」
「ずるい?」
「だって。わたしには話せるような『過去の恋』なんてないのに、ヨシキさんにはいくらでも『過去』があるんだもん。そんなの全然、フィフティ・フィフティじゃないです」
「それは仕方ないじゃん。凛子ちゃん、処女だったんだから」
「そうなんですよね~。わたしってなにもかも、ヨシキさんがはじめてなんですよねぇ~」
「光栄だよ」
「口惜しいです」
「そう?」
「ええ。撮影だってそう。ヨシキさんは他のレイヤーといろいろ個撮してるのに、わたしはヨシキさんとしかした事ないし・・・ それって不公平。全然フィフティ・フィフティじゃない」
「じゃあ、他のカメコと個撮してみる?」
「いいんですか? ヨシキさんは焼きもちとか、妬かないんですか?」
「まあね。時間のムダだから」
「どういう意味です?」
「凛子ちゃんが満足できるカメコなんて、オレ以外にいないよ。他のカメコとは、撮影するだけムダってこと」
「すごい自信ですね」
「…いや」
考えを巡らせる様に、ヨシキさんは少し黙った。
「案外、いいかも」
「え?」
「他の男に撮られてみれば、凛子ちゃんもオレのよさが、改めてわかるだろうから」
「そういうのって、なんか… ムカつく」
「ははは」
「そうやって余裕で笑っていればいいんだわ。そのうちすごくイケてるカメラマンにすっごい写真撮ってもらって、思いっきり嫉妬させてやるから」
「凛子ちゃんはほんと、負けず嫌いだよな~。まあ、そんなとこに惚れたんだけど」
余裕たっぷりな笑みを浮かべて、ヨシキさんはキスをしてきた。
彼の腕に抱かれながら、わたしは安心すると同時に、口惜しくもなる。
この腕の感触を知っている女の人は、わたしの他にも大勢いる。
それだけは、どんなことがあっても、覆せない事実。
わたしは欲深い女なのかもしれない。
ヨシキさんの過去さえ、独り占めにしたいらしい。
つづく
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