「淫らなわたしをもっと見てください」

「色温度をいじって露出オーバー目にして、青っぽい写真にしてみたんだ。どう?」

「すごくいいです。ほんとうに、雨の日にしか撮れない写真という感じで。こんなことができるなんて、尊敬してしまいます」

「はは。一旦撮影に出たら、どんな天気でも、作品をモノにしたいからな」

「執念ですね。さすがヨシキさん」

「まあ、それはうちの社長の口癖なんだけど」

「社長さんの?」

「ああ。『ロケは水ものだから、どんなコンディションでも、完成品として見せられるだけの引き出しを持っておけ』って」

「引き出し?」

「対応能力ってところかな?」

「対応能力。ですか」

「『雨が降ってたから』とか、『日が暮れて暗かったから』とか、プロは言い訳できないんだよ。

与えられた条件の元で、逆境を活かして、クライアントの要求に応えられるものを撮れるのが、ほんとのプロカメラマンなんだ… って、これも社長の受け売りだけどな」

「へえ。すごいんですね」

「社長に較べたら、オレなんて全然ヒヨッコさ。プロ意識がまだまだ足りない」

「ヨシキさんはその社長さんを、尊敬しているんですね」

「ああ。尊敬すると同時に、ライバル視してる。いつか超えてやるってね」

「なんだか、いいですね」

「いい?」

「そういう、切磋琢磨できる人間関係。向上心のある人って、わたし、好きです」

「はは… 嬉しいよ」

「『知れば知るほど、嫌われそう』なんて、全然そんなことないです。知れば知るほどわたし、ヨシキさんのこと、好きになっていきます」

「…オレもだよ」

「もっと教えて下さい。わたしにいろいろと」

「オレのことを?」

「はい」

「エロいことも?」

「…知りたいです。すごく」


瞳を閉じて微かに顎を上げ、唇を緩めて、わたしはキスをせがんだ。

水の滴るわたしの頬を両手で包み込み、ヨシキさんはやさしく口づけてくれる。

ちょっとしょっぱいキス。


「寒いだろ。あっためてやるよ」


そう言いながらヨシキさんは、わたしを抱きしめた。

肌寒い雨のなかで、この空間だけが、ぬくもりで溢れているみたい。

こうして抱きしめられていると、からだの芯がジンジンしてきて、もっとこの人がほしくなる。

キスをしながら、ヨシキさんの手が自然と、わたしのからだをなぞりはじめる。

そうすると、いやらしいスイッチが入ってしまって、からだがビリビリと快感に痺れ、自然と声が漏れてしまう。

その声に刺激されるように、ヨシキさんの指の動きがエスカレートしてくる。

打ち寄せる波を目の前に見ながら、砂浜に座り込み、ヨシキさんの脚の間に入ってうしろからすっぽりと抱きしめられ、わたしは彼の愛撫に身を委ねた。

逞しいけどしなやかな指先がわたしの太ももを這い上がり、濡れたワンピースの裾から湿った秘部へと滑り込んでくる。

ショーツをずり下ろすヨシキさんに合わせて、自然とわたしも、腰を浮かしてしまう。

荒れた海に向かって、ヨシキさんはわたしの脚を、大きく開かせた。


「向こうからは丸見えだよ」

「いや… 言わないでください」


意地悪く耳元でささやく、ヨシキさんの息が熱い。

恥ずかしいと同時に、パァッと心が解き放たれるみたい。

もう、どうなってもいい。

いじられ、もてあそばれ、そして貫かれて、わたしは快感の海を漂った。


「凛子ちゃんとなら、どこででもしたくなる。どこででも、していい?」


砂浜に座り込んだヨシキさんは、向かい合ってわたしをまたがらせ、繋がったままお尻を掴みながら息を上げ、色っぽい声でささやいた。


「ああっ… どこででも… して、いいです」


突き上げてくる快感に我を忘れ、ヨシキさんの言葉を、うわ言のようにつぶやく。


「人が見てても、していい?」

「いいっ… して…」

「凛子ちゃんは、人から見られるのが好きなんだろ」

「すっ、好き」

「最初からわかってた。凛子ちゃんはだれよりも綺麗で、だれよりも淫らで、見せたがりだって。そんな凛子ちゃんが大好きだ。世界中の誰よりも」

「あっ。ああ… ヨシキさん。わたしも、好き」

「もっと言ってくれ。『凛子は見られるのが好き』って」

「凛子は、見られるのが… 好き」

「おっぱいを見られるのも?」

「好き。わたしのおっぱい、みんな見て」

「この繋がってる部分は?」

「見てほしい、です」

「蜜が溢れて、オレのでいっぱいに広がってるよ。いやらしい眺めだ。もっと見たい」

「…いや」

「綺麗だよ、凛子ちゃんのここ。ほんとは見てほしいんだろ?」

「…ん。ん」

「どうだい? 凛子ちゃん」

「見て… ほしい」

「見られてると、もっと、気持ちよくなってくるだろ?」

「ん、いい。見て。ヨシキさんと繋がってるここ。全部見て!」

「凛子ちゃんは素直で可愛いよ。もっと好きになりそう」

「わたしも好き。もっと… もっと見て。淫らなわたしを、もっと見て!」


ヨシキさんの首に腕を回し、わたしは激しく口づけた。

激流に翻弄される小舟のように、わたしはヨシキさんの上で揺さぶられ、もみくちゃにされる。

目の前に広がっているのは、果てしない荒海。

大きな波が何度も何度も押し寄せてきては、わたしをさらっていった。


つづく

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