第ニ節:婚約者同士として

37:コンヤク#予定の構築

 俺ことP.N.『水縹みはなだF42(@Mihanada_f_42)』には彼女が居る。



 で、彼女さんとは婚活をもとに知り合い、恋人同士になったのはご存知の通り。




 実はデートの終わり際、余りにお互い別れ難すぎて、次の日もちょっとデートしませんとなったのだ。


 いすぎかよ。


 ただ昨日と違うのは、ちゃんと気持ちを素直に表現できて彼女の素がちゃんと出ていること。ちょっとだけ雰囲気の柔らかくなった彼女とともにアキバの街を巡る。


 日曜日の今日は何やら市場が立っており、アウトレットセールで様々な商品が売られていた。本日は此処の手芸用品の入手が目的だ。



 とはいえ恋人とのデートであるから、お店を探しつつ道をずんどこずんどこ歩く歩く歩く。ただそばにいるだけで楽しいのだから楽しくて仕方ない。



 で、目的のお店……手芸用品店にたどり着いたらお互い目がガチになった。


 俺達は物創りを趣味とするカップルであるからして、


 『これ、アレに使えるよね』『分かる』

 『こうしたらよくない』『最高かよ……』


 というような応酬が続くのがデートの基本方針だ。めっちゃ楽しいで?


 俺も俺で目指すものが在るから、安売りのアイテムから使えそうな品物を漁っていく。此処でも彼女の引き出しからアイデアの卵がポコポコ生まれては俺が受け止めていく。


 控えめに言ってハンドメイカーにとっちゃ最高の彼女である。


 そんなわけで受け止めつつ俺も俺の対応をしつつで結局ボタン類を2千円分も買ってしまった。畜生バーゲンセール恐るべし……。



 結局2時間ほどうろついて14時ごろ。お昼も食べてなかったし一緒にランチどう? ってなった。もちろんオッケー! 一緒に適当なランチやってるお店に入ることになる。



 此処で俺は致命的なミスを犯してしまった……。



 彼女さんはパスタを、俺は肉屋のサラダなるものを頼んだ。美味かった。野菜もなかなかあなどれないなとなった。それはいいのだが……これでは『あーん』が出来ないのだ。


 パスタが出来ないのは想定内だが、サラダこのやろう一口大にまとまらねぇ。


 あーんできない。。なんて失態だ。チクショウメ!!



 ああそうだよ惚気だ許せ。



 ところで当エッセイは冒頭でも書いてるが『婚活をするために活動する』という内容だ。そのうえで恋人同士になったということは、ということである。


 つまり彼女は『婚約者』ということだ。


 必然単なるデートでイチャイチャするだけではなく、今後の実質的な予定も立てていかねばならない。



 なので通常の結婚相談所(もちろんとら婚さん)の時説明された時系列処理に従いプランニングしてみよう。



 通常であれば『お見合い→フィッティング→婚約』の状態まで1ヶ月~2ヶ月、さらに『結婚に向けて活動→成婚退会』併せて3ヶ月。


 しかしながら俺達カップルの場合マッチングから2週間、会って2日で第一段階に到達してしまった。


 いや、これは俺が馬鹿正直で真っ直ぐ彼女に向き合ったから、そして彼女が一歩踏み出す勇気を持てる人だったから。心の距離ってやつは時間が長いほど近づくって単純なものではない。ときには一瞬に近づいちゃうことだって在るのだ。


 たまたま俺達はそうだっただけで。


 というわけで大まかな時系列とイベントの取捨選択を決定することにしよう。




 まず籍を入れることは確定とする。これはお互い合意をとったことだし当たり前といえば当たり前である。結婚ってそういうことだし。


 次に式をあげるかどうか。これは彼女さんより『写真でいっか』となっている。とはいえ食事会はしてもいいかなーとは両者一致の意見だ。


 次にお互いの両親への挨拶だが……ぶっちゃけ前述の通り出会ってからが濃密すぎて急激にラブい状態担ってしまったがゆえに日が短すぎる。なので、7月~8月を目処にしていくことにした。


 となると6月という期間が空いてしまうが、此処は結婚に関する諸所情報収集に当てることにした。ゼクシィ買わねえとな、あの重ったるい鈍器をよ……!!


 あと……この期間にもデートを重ねて、どこかしらでお泊りデートしましょうとかそういう話にもですねぇ……。はい、これも惚気けだ畜生め。



 というわけでタイムラインは次のようになる。


 6月:

  結婚に関する情報収集

  お互い仲をさらに深めるためのデート

 7月:

  予定合わせ及び入籍準備

  俺氏自宅を彼女を迎えるための環境に改善

 8月:

  両家同席のもと面談

  最短の場合このあと入籍

 9月以降:

  彼女さんの引越し作業

  両家揃っての食事会

  彼女と俺の記念写真撮影



  ゆっくりやってだいたい2ヶ月、ゆっくりやって4~6ヶ月の工程だ。つまりしたともいえる。出会いが衝撃的であったが……婚活市場でこの流れは一般的ではなかろうか。


 そんな感じの事を話してまとめてイチャイチャしつつお店を後に。



 だがまだちょっと時間が在るし、そのままじゃ寂しいよね。更に言えばお互いドールオーナーであり、聖地アキバに来た以上行くべき場所が1つ在る。


 そう、だ。正確に言うとラジオ会館の『アゾンショップ』と『天使のすみか』である。


 アゾンショップはあまむすの原型たるオビツ11を販売するショップでもあり、我々カップルにとっては初めてなのに実家のような安心感がある。それはそれはもう入り浸り、


『いつかオリジナルでドール作りたいよねー』

『ほんまそれなー』


 とか話し合っていた。ドールオーナーなら分かると思うんだが、もし自由自在にドールを作り出せるならマジ夢だよネって話。


 言い換えれば『自分が神絵師だった時の事を考えてご覧』ってところか。



 ちなみに秋葉のすみかはDDドルフィドリームメインだ。所謂リアル系ではなく、アニメっぽい体型のドールをメインに扱っている。


 端的にいうと、手足が長く、胸が超でかい。そして顔……というよりドールアイがアニメイラストにガラスを流し込んだ作りのものになっている。本当に2.5次元の存在なのだ。


 彼女さんは此方のほうが好みのようである。うむ、スーパードルフィーはリアルさと清楚さがあるが、ドルフィードリームにも良さ味があるからな。


 マクロスFのランカちゃんとシェリル、巡音ルカや展示限定のセイバー(アルトリア)、ルーラー(ジャンヌ・ダルク)に興味を示していた。また衣装も『こうしたらこうなるよね』と持ち前のアイデアの卵をぽこぽこ落としていくものだから、俺も慌てて拾い集めていった。



 うーん、やっぱりドールオーナーとしてはドール達に囲まれていると、またその衣装の旨さを見てしまうと戦慄するものだ。俺もいつかその高みへ至りたいと願わんばかりである。


 俺は我儘だからな。趣味的にモノカキもドールディーラーも両立したいのである。



 さて、こうしてじっくりドールを見ていれば時間はあっという間。お時間も17時を回ってしまった……。


 そして今日は日曜日。サザエさん症候群よろしく今日はこれ以上一緒にいると翌日に影響が出るだろう。なのでここでお開きだ。




 だが諸君、それじゃあつまらないと思わないか?

 思うならば君は俺の友だ。




「ねぇ彼女さんちょっとこっちに」

「うん?」


 そうして俺はちょっと人通りから外れた壁際に彼女さんを連れてきて、彼女さんの顔を覗き込む。


「……明日は月曜日ですよね。じゃあ、元気の出る魔法があるんですけど掛かってみませんか」

「?!」


 そっと顎に指をかけ、くいっと上に。だけど彼女は非がってあげようとしない。


「や、です……ひとまえで、恥ずかしいし……」

「大丈夫。これは魔法ですからね。それとも……いや?」

「……(ふるふる)」


 そうして力の抜けた彼女の顎にてをやって、そっと唇にキスをした。だが物語で書かれたような甘い味はしなかった。ただ彼女の柔らかい感触が帰るだけ。


 代わりにのようになった。だから女性の唇は『甘い』のだ。




 恥ずかしがる彼女がより嬉しそうにしてたので、俺としては大成功である。まぁおでこコツンと叩かれたけどね。一応まぁ時と場は弁えたつもりなんだけどな。ちょっと怒られてしまったよ。これも惚気けになるんだろうな。


 さて、そんな彼女とも駅のホームに着いてしまい……でも別れを惜しんで電車を一本分だけ逃してたった5分間でも一緒に居てくれることになった。



 なんて尊い5分間だろう。なんて絶望的な5分間なのか。



 ねぇ、彼女さん。


 どれだけ俺が君と一緒にいたいか、伝わっているかな?

 どれだけ俺が君を好きなのか、ちゃんと伝わっているのかな?


 囁くように『愛してる』と言えば、彼女が頭を俺の肩に載せて甘えてくる。ああ、世界一かわいいなぁこの子なんだろうこの子可愛い。



 でも秒針は刻一刻と時を告げて、電車はガタリゴトリと近づいてくる。


 嫌だ。この手を離すのは本当に嫌だ。でも出来ないことは百も承知。だから……。


「彼女さん彼女さん、俺良いこと思いつきました。こうしてお別れする時は、お互い頬にキスしましょう」

「ぇっ?!」

「いやですか? 俺は……したいです」



 電車がホームにやってくる。


 彼女も緊張し、恥しがって、それでもぎゅって抱きしめてから、俺から頬にキスをして、彼女は頬にキスをしてくれた。やっぱり彼女は恥ずかしがり屋で、そしてとてもいい娘だ。


 本当に女性の唇は熱くて、柔らかくて、心地よい。ほんとうに好きになってよかった。



 電車のドアが開く。



「じゃあ、また」

「うん」


 でも、なかなか手を離せなくって、それでもドアはしまってしまうから……惜しむように手を組んで、指は離れていった。



 そうして俺は微笑む彼女を見送って、手を振って今日のデートを終えたのだった。



 嗚呼、諸君。親愛なる読者諸君よ。

 人を愛おしく思うって、本当に素敵なことだぞ……。



 ではコンゴトモヨロシク。

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