36:LOVE#想いは常に真っ直ぐに。
俺ことP.N.『
さて、お見合いもとい、初デートもとい、ガチデートの話である。
ガチすぎて5時起きである。
いや、あの、早すぎるから二度寝はしようとしたんですよ? でもね、なんかこう眠れなくてですね……仕方ないのでそのまま起きた。朝飯を食べ、禊を済まし、洗濯物を干し、洗い物をして、一応のおしゃれ服を着て、準備完了!!
まだ7時である。シンカリオンやってるじゃねぇの。
いやその楽しみすぎたんや……! 俺は悪くねぇ、俺はわるくねええっ!! 仕方ないのでニュースを見る。もう森友学園はどうでもいいよ……攻める要素其処しかない時点で野党は敗北を察しようよ。それより取り組む課題たくさんあるでしょ!
そして『題名のない音楽会』! おめぇってやつは土曜日に移動してたのかよ! 俺は知らなかったぞ!! めっちゃすきだったのに日曜じゃなくなってしょんぼりしていたのだぞ!!!
じっくり音楽会の巨躯に耳を傾けつつ、お相手とチャットだ。おはようからお互い『落ち着かないねw』『ほんとそれw』『うわー、どきどきしてきたーwww』等とやり取りする。
まあ緊張するわな。俺としては意中の相手だから緊張しているが、お相手さんはとしてはその環状がLoveかLikeか見定めようとしているから緊張している。過去の恋愛から怖がっているので、こればっかりは俺は待つしか無い。半年……いや、一年を掛けて彼女を待とう、そう決めたのだ。
それはそれとして初デートだからお互い落ち着かない。似た者同士かよ。そうだよ似た者同士だよ。だからだろうか、こんな提案が出たのは……。
『ちょっと会うの早めません?w』
『是非www』
14時開始の予定が12時開始になった。まぁ落ち着かなかったしね、しかたないね。そんなわけで、久々のクラシックに落ち着いた俺は出発した。
いざ鎌倉!!
待ち合わせ場所に到着したのは予定の30分前。SEだったら電車遅延を計算に入れた普通出勤時間ともとれる時間だ。心を落ち着けつつ、新作のプロット書いて落ち着いて待つ。定期連載の長編持ってると、今から準備しないとカクヨムコン4間に合わねえんだわ……。
そして運命の時来る。お相手の登場だ。
ついに来てしまった。顔は写真で知ってたけど、見知った顔が、聞き知った声で挨拶してくれた。何だこれ可愛いかよ……。
で、行きましょうかと初っ端から手をつなぐ。
普通はそのまま一緒に行動するだろうがそこは俺達。予め『当日手を繋いでいいですか?』と聞いたらオッケーだったのである。俺得かよ。
しかも予期せず恋人つなぎである。俺得かよ!!!!!
だがしかし手が痙攣して……ちゃんと握り返せない! 俺のばかばかっ! 運動不足! だが握力を上手く安定して維持できないのだから仕方ない。仕方ないので手を楽にして、たまにぎゅって握り返された時ぎゅってすることにした。俺は天才かよ。
あー、女性の手ってこんなに柔らかくて暖かいんだ。諸君、恋人つなぎはいいぞ。
というわけで予定通り『天使の窓』へれっつらごーだ。今日はドルパアフターでドールたちを展示しているのでたくさんいる……はずだったのだが展示数なんか少なくねぇ? あっれおっかしいなぁ。そんな感じでお相手と見ていたのだが、どうもお相手はリアル系よりアニメ系の方が好みとのこと。
あまむす衣装のインスピレーションは刺激されたようだが、どうにも
じゃあ次は
http://www.dollfiedream.tokyo/
そんなわけであまむす談話しつつ『天使の窓』を後にして、予定していたカフェへ移動する。カフェは路の入り組んでいるところに居を構えているのだが、美味しいスコーンやケーキ、紅茶を出す店で紅茶党の俺には無くてはならない店である。
そんなところで席を通してもらい、お茶して雑談である。お相手はスコーンを、俺はショートケーキを頼んだ。
ショートケーキでらウメェ!
ところで此処まで読んできた諸君であれば分かると思うが、俺の会話は対お相手さんに対してはデフォルトで口説きモードに固定される。直接感情をぶつけられたことのないお相手さんにとって未知の相手であり、何もかもがパニックの要因となる。パニクったお相手さんははにかんで笑い、なんとも可愛いらしい。
なのでちょっとだけ虐めたくなっても仕方のないことだと思わないか?
俺はフォークにケーキを一口分載せて差し出した。
「お相手さん、俺のケーキ味見しません?」
俺氏にっこり。お相手も恥ずかしがりつつ、ぱくり。かわいいかよ。
お相手も恥しがりつつスコーンを一切れ、俺氏ぱくり。旨すぎかよ。
いや実際スコーンが旨いのはもちろんのこと、心が美味しいんだよ。相手が食べさせてくれた、という感情に起因する美味さである。 諸君、あーんはいいぞ、あーんは。
だが本日の本題は別にある。今回は見合いもといガチデートなのだが、まだ我々は恋人同士ですら無いのだ。言わば超すごく仲良い『お前等付き合ってねぇの?!』ってぐらい仲がよいだけである。
なのでちゃんと告る必要があった。告らずして今日というイベントは始まらんのである。いざ本能寺。最大限に
「お相手さん……俺とおつきあい、いただけますか?」
「……はぃ」
か細い声で頷かれた。愛いすぎかよ。だがこれで終わりではない。
諸君、親愛なる読者諸君。俺こと『
ならばただの告白で思いを伝えるなどつまらないとは思わないか。物語とは常に劇的で刺激的であり、官能的かつ蠱惑的でなければならない。
左様、俺とお相手さんの関係性と、俺の覚悟を伝えるためにはそれだけでは足りない。足りないのだ。
「ねぇ、お相手さん。手を貸してくれますか?」
「えっ?」
「左手です」
そう言って差し出された左手に俺は手を添えて、薬指にキスをした。ああ、敢えて意味は言うまい。そんな事の意味は言わなくたって分かるだろう?
悶えるお相手さん……もとい彼女さんがめっちゃ可愛かったとだけ言っておく。
さて、
とはいえ再構築したデートプランは既に破綻している。そもそも2時間前倒しなのだ、壊れて相応であるが、栄えて恋人同士となったのにこのまま分かれるのは寂しすぎる。
なのでまずは当初の予定通りコスプレ用品店やゴスロリ服のお店を見て回った。
もちろんちゃんと恋人つなぎである。ちゃんと告った後の恋人つなぎはまた違うぞ。とてもあたたかい気持ちになるし、彼女さんが其処にいるって分かって心地よい。
もし彼女さんがフェストゥムだったらヤバかったな。間違いなく『此処に居るぞ』と答えていたところだ。
とはいえすぐに終わったので、アドリブプラン『原宿散策』の開始である。
しかしながら俺は原宿初心者、あんなオサレシティに慣れているわけもないので、彼女さん主導で観光していく。まぁ仕方ないというか、別に女性が主導で見に行きたいところを見てもいいだろう? 昨今女性から告白することも多いのだ。だったら別に、彼女が行きたい所に往くでも別にかまやしない。
というか俺自身が、女性がリードしたからって傷つく安っぽいプライドなんぞ持ち合わせていない。そんなくだらないモノは犬に食わせ……だめだ! それはお腹を壊す! 指定のゴミに捨ててしまえというやつだ!
それに彼女さんが見たいものは俺が見たいものでもある。俺が求めているのは彼女さんとの時間の共有なのだから是非もないよネ。
そんなわけでアクセサリー用品店(ハンドメイド)を物見遊山である。
しかしまぁ彼女はすごい。パーツをみては『これってこうできるよね!』『ああしたらたのしいかも!』『これね、こう使えるんだー!』とアイデアが出るわ出るわ。
このアイデア一つ一つが珠玉のネタで、俺はもう感心しきりだったよ。こんなクリエイティブな女性、なんでいままで独り身やったんや?! おかしいやろ!!
でもこのひと俺の彼女なんだずぇぇぇ! 羨ましいだろぉおおお?!
まぁそれはおいておく。ぶっちゃけ超自慢したい。俺のヨメになるかも知れない彼女さんは世界一可愛いしアイデアウーマンだし可愛いし優しいし可愛いしアクティビティだし可愛いし可愛いのだと。
それ書くとキリがねぇのだよぶっちゃけ。
まぁそんなわけで原宿の街を闊歩しつつ、お店も見終わって駅についてしまった。だがまだ日も高いし、彼女さんはハツカノである。まだ分かれるにはと寂しすぎる。そこで俺は天啓を得た。
「彼女さん彼女さん! 明治神宮行きましょう! そこで願掛けしませんか?」
俺はマジ天才じゃねぇかと思った。そうして一緒に静かーな道を歩きながら、呼吸を併せて参道をあるく。静かな道を彼女さんと歩くっていいぞ。呼吸すら聞き取れる中で相手を感じ取れるのだ。
繋いだ手がとても暖かい。温かいと思える相手がそばにいる。心がぽかぽかしてくる。嬉しいという感情が溢れて、自然と言葉になってしまう。
「なんだかねうまく言葉に出来ないんだけど……俺、たぶんね、君を愛しているんだとおもう」
「(うつむいて悶える)」
人に恋する、人を愛する。これって素晴らしいことだ。馬鹿にしちゃいけないと思う。すごく尊いことだ。
そんなわけで明治神宮にやって来たのでお参りである。願いの内容は語るまい。だがしいて言えば……俺は人生で初めて、誰かのために、魂からの祈りを捧げたよ。
と、終わらないのが俺達なのか、なんとアクシデント発生。
「あっ」
「どうしました彼女さん」
「……これクレカですね、道に落ちてました」
「あ、不味いっすなこれは……」
「届けないと!」
「承知!」
頷く2人、駆け出す彼女さん、追いかける俺! 疾走する俺達はお守り売り場へ馳せた! で、無事カードを販売書に届けて一難去ったのだが……ほんとうのアクシデントはこの後であった。
なんと神前式の列が現れたのである。
これにはお互いビックリであった。お互い結婚を意識した(まぁ彼女さんの答えを待つ身だが)間柄の前で神前式。何がしか運命めいた物を感じる。
さらに聞けば、先週も同じ様に彼女さんは神前式に遭遇したと言うではないか。
「彼女さん彼女さん、これは何か天啓じゃないですかね?」
「死んだじいちゃんが見守ってるんですかねー?」
「だといいねぇ」
その瞬間風が吹いた。本当に狙ったかのように吹いたので、俺は『見てるな』と確信した。俺ぁおばけにゃあ詳しいンだ!
まさに神風が吹いた後も観光は続く。彼女さんはディズニーファンなので、せっかくだからと渋谷のディズニーショップを見に行くことになった。
へっ、たかがネズミの国じゃねぇか! ろくでもねぇにきまって――。
―――。
――。
―。
楽しい。
めっちゃたのしい。
なにこれ、ただのお土産売り場なんだがめっちゃ楽しいんだけど。え、なにこれ俺は孔明と戦わされているの? 可愛いものの築地市場かよ。
これに加えて彼女さんの解説が捗って非常に楽しい時間を過ごせた。鼠恐るべし……。
ただ、土産物は買わなかった。お互いハンドメイカーだからね、『これ、やれるよね』『マジそれな』で構造解析して終わるという始末である。買えよ、貢げよ。悪いファンである。
『これだからハンドメイカーは』などと文句を言いたいだろうがしかたないだろう、作れちゃうんだから!
さて、このへんから運命の歯車が加速しまくる。この『作れちゃう』という共通する動機でお互いめっちゃテンション上がりまくっている。結果何処へ向かったと思う?
東急ハンズだ。ハンドメイカー御用達、東急ハンズである。
正直に白状しよう。
クッソ楽しかった。彼女さんはホムセン好き、俺もホムセン好き、其処に違いなんてありゃしないだろうが! そうなのだ!! この渋谷のデッケェ店舗をまぁ闊歩闊歩練り歩く練り歩く。
木材売り場、実家のような安心感!
金具売り場、歩くだけで楽しい!
ホビー材料ブース、銀粘土最強伝説!
レジンコーナー、やっぱレジンはできねーとな!
レザーブース、革の匂い最高すぎるだろ。
科学物資コーナー、鉱石系のミニチュア可愛すぎか
ペットコーナー、ハリネズミかわゆす……。
プラモコーナー、種世代なのは分かってたが好みがコアだった!
そうしてかれこれ2時間はあるいただろうか。気づいたら18時なのもしかたない。そう、デート開始から既に6時間が経過していたのだ……えるしってるか、これ初デートなんだぜ……?
ちなみに彼女さんはすごく笑顔で楽しそうだった。どうもこうしてクリエイティブなことを話せる人がいなかったらしい。もちろん俺もすべてを理解できたわけではないが、8~9割は話を螺旋に拡張するように回答できている。
そりゃたのしいわ。1を打てば少なくとも5は帰るんだもん。時が吹っ飛ぶのも致し方ない。
流石にこの時間だとお互い『ヤベエ』となって観光を切り上げ、お夕飯を食べていこうということになった。まぁノープランだったし、量販店のフードコートに入って食べましたよ。
このへんまで来るともうお互い不可思議なほどに相性良すぎて楽しくて仕方がない。食事1つでもニマニマしながら楽しくって困る。そうなると雰囲気もあったのだろう。彼女も言いづらいことや、過去のトラウマを話してくれたりした。
ただ俺は以前も書いたとおり覚悟を決めている。だから俺は『過去は過去』と割り切り、『今、まさに俺を見てくれていること』と、『彼女が踏み出す勇気を出そうとしていること』を称賛し、ありのままを認めて口説いた。
これが、最終的に良い方向に働いたらしい。
夕食を食べた時はもう19時を少し過ぎたくらいだろうか。このあと別れ難かった俺は『わざと遠回りしませんか』と提案した。快諾した彼女さんは終始ごきげんだ。鼻歌の1つでも歌いそうな彼女と手をつないで、帰路をゆっくり話しながら帰る。
あーあ。まったく、別れ難くて困る。
ほんとうに、会ったのは初めてで、恋人同士になったとは言え。
今日此処で別れたら、またしばらく会えなくなるのだ。
やだなぁ、そんな事を言ったら彼女さんも頷いた。
駅のホームが近づく。
繋いだ手がぎゅっと握られて、俺も握り返す。
ちょっと無言になって、ちょっとだけ歩く速度を緩めたり。
でもまぁ、前に進んでいるには変わりないから。
「……あーあ、ホームに着いちゃいましたね」
「ですねー」
「手を離さなきゃいけないのかー……やだなー」
「……」
そっと手を離した俺達……だが彼女さんが決心したように俺に身を寄せる。そのまま俺は任せるままに彼女を抱きしめた。少しひんやりしてたかな。もう日も落ちて、ちょっとだけ寒くなってたからね。
こんな時間に歩かせてしまったことを、俺はちょっとだけ後悔した。でも永遠はないから、そっと離れて……いや、一つだけやることがあるか。
「彼女さん、ちょっと」
「?」
もう一度抱きしめると見せかけて、俺は彼女の頬にキスした。
目を丸くして気恥ずかしそうにぎゅっと身を縮こめて、俺の手をぎゅっとつかむ。
「あー、その、大丈夫?」
「(コクコク)」
「ほんとに? 帰れそう?」
「(うつむいてぎゅっとにぎってくる)」
彼女はもう一度俺を抱きしめようとして……お返しとばかりにそっと頬にキスをしてくれた。
「あはは、じゃあまた!」
「はい、また!」
お互い恥しがりつつまた会いましょうと手を振って別れた。俺は彼女さんの姿が見えなくなるまで、その場に留まり手を振り続けた。頬に残った感触が、何処か心地よく俺の心を熱くさせた……。
と、キレイに終わればよかったのだがそうは問屋が卸さねぇ訳よ。
頬にキスされた俺は徐々に感触の柔らかさを脳が理解して理性が蒸発した。結果新宿駅で迷子になった。おいおいダンジョンで迷子とかまず行ってレベルじゃねぇよ。
頬にキスされた彼女さんは完全にテンパってエレベーターの上りと下りを間違えた。危うく転落するところだったらしい。おいおい怪我には注意してくれよ俺が死んでしまいます。
こんなところも似なくていいだろうにw まったく似たものカップルが誕生してしまったのだ。
そんなわけでこんなアホな俺にも彼女が出来ました。
ではコンゴトモヨロシク。
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