第4話
教室に入った星夜は、窓際いちばん後ろの自分の席へ向かった。教室にはがやがやと騒がしかった。星夜はクラスメイトとあいさつを交わながら席に着いた。
「おっはよう星夜!毎朝一緒に登校とお熱いですね~。どっから見てもカップルの君らを見せられてる周りの身にもなってもらえる?」
一息つく星夜の目の前に、ニヤニヤと笑みを浮かべた青年が現れた。
青年は東雲玲央(しののめれお)といい、星夜の友人だった。焼けた肌に少し癖のある整った顔立ちと黒髪を刈り上げた髪型が特徴だ。
「玲央か、おはよう。…お熱いって何?夜月は幼馴染だし、一緒に登校するとか普通でしょ。あとその顔やめてくれないか?気持ち悪いんだけど。」
喚く玲央を冷めた目で見ながら、星夜は教科書を机に入れ始めた。玲央は星夜の言葉に口をへの字に曲げた。
「気持ち悪いって!親友に向かってその言い草はないだろ!あと仲いいのは知ってるけど、お前がカップル並みに距離が近いのが悪い!」
「本当に元気だな…。何回も言うけど、俺たちは仲の良い幼馴染同士で付き合ってない。」
喚く玲央を気にする様子もなく、星夜は黙々と作業を続けた。
「はぁ~、まぁいいや。そういうことにしておくよ。」
玲央は頭を軽く掻き、やれやれという風にため息をつくとニカッと笑った。
星夜はちらりと玲央を見たが、特に気にする様子もなく手を再度動かし続けた。
「あ、そうだ。星夜に頼みたいことあるんだけど。」
突然の玲央の言葉に、作業をしていた星夜は顔を上げた。
「頼みたいこと?あ~うん、そんなに時間かからないならいいよ。」
「まじで⁉うわ~ありがとう!頼みたいことってのは、今週の土日にちょっと勉強見てもらいたいんだよ。今回のテストけっこーやばくてさ…。」
玲央はサッカー部に所属しているが、成績のほうは良いとは言えなかった。
そのため星夜に個人で勉強を教えてもらうことが多々あった。
「あー、いいよ。今回俺は勉強会は断るつもりだし、大丈夫だよ。」
「マジ⁉っしゃあ!マジで助かる!ありがとぉう!」
玲央は腕を振り上げてガッツポーズをし、手を前に合わせて拝むポーズをした。
星夜と夜月は校内ではかなりの有名人なのだ。
2人とも容姿が整っている上に、頭も性格も運動神経もいいという高スペック持ちのためだ。
星夜は特に頭脳面でのスペックが特に高かった。
学内のテストでは常に主席、全国模試でも常に上位にいた。そのため試験前に友人などから頼まれて勉強を教えていた。
それ故に友人たちの成績が飛躍的に上がり、多くの生徒や学校からの要望で学習会が開かれることとなった。
テスト期間は本人の勉強優先のため、星夜の都合で開いたり開かなかったりした。
夜月は高い運動面でのスペックが特に高かった。
所属しているバスケ部の全国大会で二年連続優勝に導き、さらに最優秀選手・全国選抜にも選ばれる選手だった。さらに多くのプロチームから声がかかっているが、夜月は断っていた。部長兼キャプテンの後任の話もあったが、夜月は生徒会に入っているため時間がないと返事を渋っていた。
普段ではもともとの運動神経の高さから、他の部活からの助っ人へ行ったりした。
持つ能力が高いために苦労の多い二人だが、モテていた。異性からはもちろん、同性からは憧れの視線が多かった。だが告白などの行動を起こす者は少なく、その理由は二つあった。
一つは持つスペックが高いこともあり、自分では釣り合わないと身を引いてしまうからだ。もう一つは、星夜と夜月の恋人のような距離の近さと仲の良さで打ちひしがれてしまうからだ。
学年問わず多くの学生が、この罪作りな二人に憧れを抱き現実を見せられていた。本人たちは無自覚・無意識のため、余計にたちが悪かった。
流れ星が消える前に 松理 音 @komatsu12
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