第3話

二人は校門を通ると、校舎の正面に位置する生徒玄関へ向かった。清川高校は薄い水色の壁が特徴的で、広大な敷地を有する進学校である。


「私の両親って、特にお父さんだけど仕事先のお土産を毎度買ってくるじゃない?食べ物とかだったら消費すればいいんだけど、本とか物になると場所をとるのよ。」


玄関で靴を履き替えながら、夜月はため息をついた。。玄関は登校時間のためか、多くの生徒が行き来していた。


「確かにね笑。でもいろんな国の特産品とか買ってきて来るから、すごい嬉しいし俺の両親も喜んでるよ。量はすごいけどね笑。」


星夜は下駄箱に靴をしまい、夜月の方へ歩きながら笑って言った。


「ふふっ、そうね。お父さんたちには、買ってくる量を抑えてって言ってるんだ…。」

「二人ともおっはよーう!」


2人が話していると、入口の方から大きな声が響いた。入口の方を向くと2人の中学からの友人である、篠愛陽(しのあいひ)がこちらに向かってきていた。頭の右上に結った茶髪と、ぱっちりとした目と低めの身長が特徴だ。


「おはよう、愛陽。朝から元気だね笑。」

「ほんとだよ。まったく、どこからそんな元気がでてくるの?」


星夜は笑いながら、夜月は呆れながらそう言った。愛陽は靴を履き替えると、ぱたぱたと小走りで二人に近付いた。活発に動く様子は小動物を思わせた。


「まぁまぁお二人さん、元気は私の取り柄の一つなんんだし気にしない!あ、そうだ夜月、今日お昼一緒に食べよ?相談したいことがあるの。」

「お昼?あ、うんいいよ。昼休みに私のクラスに来て。」

「ほんと?やったぁ!」


愛陽は夜月にテンション高めに迫った。夜月は愛陽の行動に若干引きつつも、了承の返事をした。愛陽は飛び跳ねんばかりに喜び、星夜は愛陽のことを微笑ましい目で見ていた。

そんな星夜をみて愛陽は口を尖らせた。


「ちょっと星夜!そんな微笑ましい目で見ないでくれる⁉地味に傷つくから!じゃあ、私先に教室行くね!夜月!お昼休みに教室にいくから!」


そう言うと愛陽は階段に向かって走り去って行った。。


「愛陽、走ると危ないよ…って、もう行っちゃった。愛陽の行動力は本当に凄いよ。」

「そうだね、まるで嵐だよ。いきなり現れたと思ったらあっという間に行っちゃうしね。後先考えずに突っ走れるのはもはや尊敬の領域だよ。」


夜月は呆れながら、星夜は笑いながら話していた。


「それでどこまで話したっけ。朝から愛陽のインパクトが強すぎて、何話していたか忘れちゃったよ。」

「う~ん、確か量のことについて直談判したところからじゃない?」

「たぶんそこらへんかな。とりあえず教室に向かいながらにしようよ。」


夜月がそう言い、2人は並んで歩き出した。愛陽により中断していた会話を再開させ、教室を目指して歩き出した。



二年生の教室は二階にあるため、2人は多くの生徒が行き交う階段を昇っていた。階段は様々な声が飛び交い、ざわざわと騒がしかった。


「あ、そうだ。私ね放課後に委員会があるんだけど、もしかしたら時間かかるかもしれなくて。もしあれだったら先に帰っても大丈夫だよ?」


夜月は申し訳なさそうに横にいる星夜を見た。


「あ、そうなんだ。う~ん…、でも待ってるよ。教室で夜月から貸りた本読んでるから、終わったら教室にきて欲しいな。」


星夜は不安げな夜月に笑いかけた。


「え、本当?じゃあ終わったら教室向かうね。一応RIME入れるけどなるべく早く向かうようにする。」

「おっけい。」


そう話しているうちに、星夜のいる二組の教室に着いた。


「あ、二組着いたね。んじゃ、また放課後に。」

「ん、また放課後。」


夜月は星夜に軽く手を振ると、隣の三組の教室に向かって歩き出した。

星夜も夜月を見送ると、教室の中に入っていった。

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