わ~痩せるんだ~。一回くらいなら大丈夫だよね~。


大澤:そういえば、チヒロさんは講師とかもやってらっしゃるんですよね? 小説講座とかハウツーとかで繋いでいくっていうのもトロフィーを使っての手段としてはメジャーですね。


藤沢:講師の仕事は知人の作家さんの紹介で3年前からです。私なんかが先生で申し訳ないなぁという気持ちしかないんですが、持った以上は頑張ってます。ここからは編集前提でちょっとお話しするんですが、小説の講師って、しょっぱくないですか? 基本的には。


大澤:でもニーズはありますよね。プロの選手になれなかった人が監督とかコーチで生きていくっていうの普通にありますし、スポーツジムのトレーナーみたいなものでしょう。スポーツジムのトレーナーをしょっぱいって言う人はあんまりいないのでは? 小説を書く力って基本的にはその人それぞれの内にすでにあるものに依存するので、教えられることってそんなないですし、基本的にはライザップのトレーナーなんですよ。ポジティブに、反感をもたれないように、かつ容赦なくケツをしばけばいい。


藤沢:レッスンプロか。ライザップのトレーナーという見方は新鮮というか、正しい気がする。ありがとうございます。それで言うと私は元アスリートではないトレーナーってかんじです。体はぶよぶよだけど、栄養学とか筋トレの仕方などに詳しいみたいな。


大澤:トレーナーがぶよぶよだとあんまり締まんないですけど、トレーナーのムキムキ具合は別にトレーナーとしての有能さの証明ではないので。わたしも小説大賞やって講評してて、講師じゃないですけどアドバイスてきなことはするじゃないですか。でも、あの講評っていうのは自分で小説を書いて身に着けたわけじゃなくて、何度も小説大賞やって講評し続けていることによって身に付いたことなんですよね。講評するのはね、ずっと講評してるとうまくなります。


藤沢:あー、そうですよね! 講評は、講評してるとうまくなる。わかる……。


大澤:わたしは講評では、もう書けている人には基本的に「いいね!」としか言わないので。小手先のテクニックとか、まあなくはないんですけど、そういうのじゃなくて「はい、立ってね」「はい、じゃあ足を前に出してね」「わ~すごーい! 歩けたね! じゃあどんどん歩いていこうね!」みたいなそういう感じですね?


藤沢:いやいや、大澤さんに小説習いたいです……あんよがじょうず……。


大澤:習えますよ。本物川小説大賞に参加するだけで講評がつくよ。無料だよ。みんなやってるよ。痩せるよ。


藤沢:わ~痩せるんだ~。一回くらいなら大丈夫だよね~。


大澤:わたしは子供のころずっとエレクトーン習っていたんですけど、あれもバイエルさえあれば自分ひとりで上手くなることは理論上は可能ですからね。小説でもダンスレッスンでも筋トレでも、自分ひとりでできる人のためのノウハウはすべて無料ないし安価で公開されていますから。ただひとりだとレッスンは絶対にしないので、自分のスケジュールにレッスンを組み込むために月何千円とかの費用が必要になってくるんですよ。「水曜の夜はエレクトーンの日」にするための費用が。


藤沢:なるほど。出来る人目線で考えたことがなかった……。私は小説をほとんど書かないですが、専門学校の講師を引き受けたのは、札幌には最近までラノベの編集をしていた人間は少ないだろうから、私でもちょっとは役に立つかなーと思えたからなんです。講師の仕事を今後も続けるとしたら、編集の現場にもまた出ていかないと、流行についていけなくなってしまって駄目だよなぁと思っているところです。

先生たちの中には、「小説を教えるために究極に磨き上げられて、懐もめっちゃ深いスーパー講師」という方もいらっしゃって、そういう方は純粋に尊敬してます。


大澤:なんかこう、小説を書くには? みたいな雑な創作論がタイムラインを駆け抜けていって喧々諤々みたいな不幸なコンフリクトがツイでもよくあるじゃないですか。あれ「小説を書きたい」の中に「小説家になってヒットとばして印税生活したい!」と「とにかく本を出して作家というトロフィーがほしい」と「自分の中にある創作熱をとにかく形にしたい」と「働きたくない」が混在している感じで、大抵はその前提となるレイヤーのすりあわせ不足みたいな感じですよね。


藤沢:ですね。でもそれは、プロの人もそうかも。


大澤:それぞれに対して適切なアドバイスというのがあると思うので、自分の「小説を書きたい」の解像度をもうちょっと上げないと全部的外れになりますし、逆にアドバイスをする側もそこを見極めてものを言っていかないと「自分の中にある創作熱をとにかく形にしたいんじゃ~」っていう人に「なろうでランキングを駆け上がるには?」みたいな話をしてもクソバイスでしかないですから。


藤沢:そうそう。「小説書きたい」の解像度はいい喩えだなぁ。今後意識してみよう。話それちゃうかもしれないんですけど、学生は「書きたい」の解像度がもやっと100dpiくらい(印刷に耐えない)しかないのに耳年増で「デビューしても使えない編集がついたらだめだし」とか言う。


大澤:そういうのはデビューしてから言おうね。まあ、アドバイスする側も見極めなきゃってのはそうなんですが、創作する本人も、特に小説の場合、まずはその自分の「小説を書きたい」を徹底的に解体して正体を見極めないとダメですよね。小説における「人物を描く」というのはほぼこれと同じ作業ですし。「好き」なら、その「好き」に含まれるあらゆる要素を解体して言語化していかなければいけません。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る