やはりハジケなければならない。


為三:ていうか、これちょっと内輪な話になっちゃうけど。


大澤:うん?


為三:めぐちゃんやロッキンは雰囲気で書くじゃん?


大澤:うん。


為三:で、俺としちゃ進捗ペースも落ちてるし、なに書いてもうまくいかねぇから雰囲気で書いてみたんだけど。


大澤:あ、ぼくの可愛い破壊神の話?


為三:そうそう。で、俺の場合、雰囲気でやると先に進むにつれて苦しくなってくるから、やっぱりある程度はプロットを作ってから書いたほうが楽だなと思った。だからまあ、タイプによって楽な書き方というのは変わるよな。


大澤:わたしも別に好き好んでプロットを書かないわけじゃないんですけど……。わたしの場合、どんな出来事が起こるのか? みたいな、いわゆるプロットはわりとどうでもよくて、コンセプトは事前にすごく考えているかな。言い換えると、書くうえでのルールみたいな。ロクハルなら、まず「実在の地名を出してリアリティレベルをあげよう」「じゃあ安曇野にしよう」「じゃあ早春賦を全体のモチーフにしよう」「あ、一曲足りないや。じゃあダフトパンクで」みたいな。どんな話かは全然決めてないけれど、早春賦であることは決まっていて、そうなると自然といろいろと定まってくる、みたいな?


為三:うむ。雰囲気で書くか、計算で書くかと一口に言っても、実際はなんも考えないわけでも、緻密に考え抜いているわけでもなく、こう、フォーカスを当てている場所が違うだけなんだよな。たぶん。


大澤:モチーフに早春賦を設定した以上は話の流れはある程度縛られるわけで、一話は鶯が鳴かない話だし、セリカは「春と知らなければ気にもしなかったのに」っていう話にしないといけない。で、そういうルールが多いほうが実は物語って描きやすいの。道標だから。


為三:ていうか、めぐちゃんの場合、計算してないけどクソ馬力で何度も崩して組み立ててというトライ&エラーを繰り返して仕上げているから、事前に考えるよりも手を動かすほうが楽というだけだ。


大澤:ああ、まあそう。なにもせず考えるよりは、とりあえずノープランでも書いてみるし、書き直してみる。やっているうちに見えてくる。


為三:俺は手を動かすよりも、事前に考えた方が楽だということを去年学んだ。ただ、俺の話だけど、計算だけで書いていてもどこかで壁にぶち当たるから、計算で書くにしてもどこかに遊びを、雰囲気で書くにしてもどこかに計算を、と、絶妙なバランスをとれるようになるとさらにレベルアップできるのだろうな。


大澤:そうね、バランスは大事。あと、為ニキはダメだと思ったらわりとイチからやり直しちゃうところあるけど、わたしはダメでも出てきちゃったものは出てきちゃったしって考えるタイプで、う~ん出てきちゃったし、どうしようかって。基本的に後戻りはしないのね。書いちゃったものは書いちゃったんだから、そのままその先に進む。


為三:まあ、それもバランスよな。というわけで、今はそのバランスを探っている感じ。まだまだ精進ですね、お互い。


大澤:たぶん、自分でもちょっと完全には制御しきれないくらいの感じが自分で書いていても一番わくわくするので、こう、手を放すところと、手綱を取るところ。まぁ、バランスって話に収束するのかな? 封神はかなり事前に考えて書いてるよね? 設定とかぜんぶしっかりあるっぽい。


為三:パンツまではノープロットで、封神からプロットを作ってやるようになった。基本的な書き方は封神で学んだのではないかな。ていうか、担当さんが一から十まで説明を求めるタイプだったから、自然とそうなった。


大澤:VRMMOっていう、まず事前にルールがしっかり提示されてないと、どんなどんでん返しも意味ないやつだから、こういう事情でこれはできないけど、そこを今回はこれをこうしてこうじゃ! みたいなやつだからね、基本。設定をちゃんと見せないと成立しない。


為三:説明パートは労力かかるわりに面白さに直結しないから本当にしんどいんだよな……。説明しつつ楽しませる、ができなくても、最低限、説明が読者のストレスにならないようにする、というのが達成できないと厳しいから。説明は基本、目が滑るものだから。


大澤:そうね。でも把握しておいてもらわないと後のデデーン! が空振りしちゃうというか、よく分からなくなってしまう。そのへんはミステリーでもあるよね。必要な情報をちゃんと提示しておかないと成立しない。


為三;今ならもうちょっとうまく書ける気がするけど、デビュー作で「パンツだから!」とか「宇宙だし!」とかギャグで逃げてたところを直球で求められるから、吐きそうになるほど書き直した記憶がある。バトルとか、パンツのときはコメディの延長だったのに、いきなりメインで書かなくちゃならんから、そもそもバトルってどうやって書くの?? という手探りからはじまる。ちなみに今でもバトルは苦手なので一気に筆が遅くなる。


大澤:バトルとか無理。書けない。物語を前に進めるのは勝ったか負けたかだけでいいし。


為三:最近はガチのバトル展開から逃げつつ、うまいことバトルしている風に書くという感じでやってる。我々、なんだかんだ言っても理屈っぽいので、油断すると淡々としてしまうのよな。そこらへんがバトルを書くときに弱点となる。まあ、俺がそうなのだけど、めぐちゃんもバトル書く時は遊戯王てきな後出しじゃんけんを手本に書くと楽だと思う。ミステリてきな伏線転がしをそのまま応用してカタルシスを作るやり方だからごまかしが効く。


大澤:なるほどね? (←分かってない) わたしの場合、バトルなんか書かなくていいじゃんを極端にやったのがキャスカルで、基本的に戦闘が始まるところで話が終わって、次の話の冒頭で結果だけ教えられるのね。勝ち負けさえあれば話が前に進むのならば、そういうハックもありかなぁって。


為三:ちょっと突っ込んだ話になるけど、キャスカルは劇的なことが起こっているにも関わらずどこか淡々としているから、そこらへんカバーできると強度上がりそう。やはりアツい空戦なのでは? という気もするので難しいね。


大澤:一人称は語り部の性質にかなり左右されるんだけど、キャスカルはどっちの主人公も淡々としてるから。


為三:王道の書き方から離れると別のベクトルで強さを求められるので、ハンデを背負った戦いにはなってしまう。


大澤:王道の書き方が分からないので自分なりにやってみると邪道みたいになるんだよね。


為三:最近のめぐみ一人称は大澤シンクロ率が以前よりも上がっていて、語り口がより淡々としている印象を受ける。いいほうにも作用するし、悪いほうにも作用する。


大澤:やはりハジケなければならない。あと、どんなお話でもいいんだけど、やっぱ、どう喋るかっていうのは重要よね。同じ話でも、喋りかただけで面白くなったりするから。


為三;めぐちゃんの場合は、今とくに小説の練度が上がっているから、もともと持っていた怖いもの知らずなところがスポイルされつつあるのかもしれないね。


大澤:まあでも、おにスタのアレを今からもう一回やれるかっていうと厳しいところはある。やりたさはあるけど。


為三:まあ、勢いでデビューしたやつはたぶん、誰でも舵取りで苦しむのでは。ガチで殴ると誰もついてこれないし、コントロールするとパンチが足りないって言われるのだ。だから、光と闇の両方を調和させてアルティメットバーストしないと。


大澤:まあ、書いてりゃそのうち上手くなるから、とりあえず書かせてくれって感じですね。


為三:ていうか、めぐちゃんと話すようになったの一年くらい前じゃん?


大澤:うん。


為三:そのころからスランプ期にさしかかっているから、状態異常にかかってない俺を、そのころに知り合ったメンツは誰も知らんのよな。なので、そろそろちゃんとしたい。


大澤:本を出そう。


為三:出したいね。でも、今書いてるやつはたぶん書籍化はしない系だ。


大澤:どっかに潜り込みたいな。とりあえず本を出せるところに。


為三:とりあえず現物がないことには。


大澤:うん。完成原稿はいっぱい持っていた方が安心。書いたものは絶対に無駄にはならないからね。オーダーメイドのお店でも、一着二着くらいは展示品を吊るしているものでしょ。それを無駄なコストという人はまずいないはず。


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