やっぱ雰囲気で書くのはよくないですよ。


為三:オッスオッス。


大澤:どもども。お久しぶりです。


為三:15年ぶりくらい? お互いにラノベ作家になるとは因果なもんだな。


大澤:ねー。あ、じゃあ為ニキの紹介から始めるけど、為三さんは2013年にストライプ・ザ・パンツァーでMF文庫J新人賞、優秀賞を受賞してデビューしました。ちなみにパンツァーというかパンツです。


為三:とりあえず、ろくろを回せばいいんでしょ? それをめぐちゃんが逆回転させていく感じで。


大澤:はい、順番にやっていくから自由に喋らないでね。で、この対談は、いろいろな人の小説の書き方を聞いてみよう! って趣旨でやりはじめたんだけど、なんか喋りはじめると毎回、そもそもの目的を忘れちゃって。


為三:ロッキンのとかすごかったな。マジでいつもの雑談だった。


大澤:なにしろわたしもロッキンも雰囲気で書いているからね……、ふんわりしてしまうのも致し方なし。その点、為ニキは一番「書きかた」で小説を書いている感じがするから、そのへんの話を聞けたらなぁと思っています。


為三:そもそも最初から趣味じゃなくて金を稼ごうと思って始めているからな。まったく稼げてないけど。


大澤:儲からないよね~、ラノベ。えっと、なんの話から始めようかな。


為三:まあ最初だし、順番どおりデビューまでの経緯を軽く話してみようか。


大澤:おっ、聞きたい。


為三:そもそもは当時FF11にハマッてた関係でネトゲ実況板に在住していて、そこでネタというかSSてきなものを書いていたわけよ。で、そのころからよく野良のプロと間違われていて。


大澤:あー、じゃあわりと出自としては大澤とかとも近いかもね。わたしはほら、VIPで出会い厨(検閲済み)って(検閲済み)すスレとかやってたから。


為三:あと、今もやってるのか知らないけど、電撃文庫マガジンで読者参加型のSS企画みたいなのがあって、匿名でやってたネタが好評だったから、そのノリでブン投げたら二連続で最終候補まで残って、よし、プロになれるなと思って本格的に長編を書き始めた。なもんだから、最初は電撃に出して、二次と三次に残ったのを、そのままMFに投げて受賞、というのがデビューまでの経緯やね。


大澤:パンツが最初に書いた長編?


為三:パンツは二本目かな。当時は一年で五本くらい書いた。なにがうまく書けるかも分からんから、ジャンルをバラバラに一通り書いてみて、結果を見てから絞っていこうと考えていて。創作のきっかけが掌編だから、今でも短い話のほうが得意だけど。


大澤:それでかな。最初からわりとこなれてるよね。あんまりデビュー作特有の前のめりなガリガリガリガリガリ~~~!!!! 感はないよね。これが書きたいんじゃうおおおおおお~~~~!!!! みたいな前のめり感は、デビュー作はだいたい誰でもあるものなんだけど。


為三:たぶん最初からガリガリな感じはなかったと思う。書きたいものを書くというよりは、審査するひねくれた大人が喜びそうなものを出した。


大澤:最初からわりと勝ちにいく書きかたをしてたってことね。


為三:パンツは速攻ゴミ箱にブチ込まれるか、あるいはいい線いくかの二択だろうなというバクチで、五本書いたなかでも特にピーキーだったのではないかな。


大澤:でも、設定はピーキーだけど、わりとお話の転がしかたは王道っぽいんだよね。


為三:ピーキーにピーキーを重ねると読みにくいからな。とくに書き慣れていないうちだと難しいのではないか。


大澤:正直、平然と唐突にゴリラを出すわたしとしては、もっとカッ飛んでいてもよかったなと思わなくもなかった。意外と正気なのね。


為三:その辺はレビューでもよく言われたな。ある意味、そこらへんがまだ発展途上ということかもしれない。


大澤:あれは、発想としてはまず「せや! パンツ生命体! これや!!」みたいなところからスタートしているの?


為三:いや、鉄腕バーディーDECODE(一期)だよ。


大澤:元ネタさくっと出てきた。


為三:着想としてはまずパンツ抜きのSFアクションがあって、それだと地味だからパンツ足してるだけ。


大澤:不可分のバディとしてのパンツなのね。


為三:でもパンツ出すからには作中のすべてに絡めようか、みたいな感じでまとめた記憶。だから、ある意味すべてにおいて正気で書いてるから、狂気を求めている層には物足りなさもあるのではないかとは思う。パンツをむしゃむしゃ食べるイケメンを出して狂気が足りないと言われても困るみたいなところはあるが。


大澤:たぶん、かなり雛形に忠実に書いてるよね。物語の展開とか、ちゃんと正しく展開している感じ。


為三:そもそもイカれた話が描きたかったわけでもなく、パンツで感動できたらウケルwww くらいの悪ふざけだから、王道展開の中に違和感なくパンツが存在できたら俺の勝利、という実験的挑戦だったので、自分に定めていた課題はまぁクリアできてるんよな。


大澤:パンツは途中から気にならなくなってくるので、それは狙い通りかもね。パンツってことをちょいちょい忘れる。ふと、そういえばこいつパンツなんだよな……って思い出すくらいの感じ。


為三:うむ、それが狙いなんだけど、狙い通りにいったからといって、それが正解とは限らんのよな。


大澤:自分で設定した課題をクリアしたっていうのは大事だよね。大澤もおにスタは文章表現としてわりと挑戦してるところがあって、反応見てるとアレでも7割くらいには受け入れられているっぽいから及第点かなって。


為三:その辺は人に依っても評価が変わるので、正気度が高いからこそ良かったという人もいるし、狂気が足りないっていう人もいる。


大澤:怪作、鬼作を求める人、なんだかんだいって本当に前例のないようなものをぶつけると怒り出す傾向がある。んで、パンツの次が封神かな?


為三:だねぇ、あれは苦しかった。当時の時流として俺TUEEEE全盛期だったから、VRMMO系俺TUEEEEラノベじゃないと、そもそも本を出せないんだ。「君、パンツとかじゃなくて、ちゃんとしたものも書けるよね?」みたいな雰囲気で。なにせ売れてないから別のものを書かないといけないわけで。


大澤:わたしのロクハルも「君、普通の書けるでしょ?」みたいな流れだった覚えがある。ヘンテコなのでデビューした人の宿命かもね。次は普通の書いてみようか? みたいな。


為三;めぐちゃんは特にプレゼン下手だからな……。俺も構想を聞いてて「???」ってなって、完成したものを読んでみて「ああ、なるほど」ってなることが多いから


大澤:説明するよりも本文書いちゃったほうが早いんだよね……。


為三:雰囲気で書いてると書く前に説明できないんだろうなと。



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