第9話 国民の意見は尊重するのです

「首相」


「かばんじゃないですか。どうしたのですか」


「これを渡しに来ました。不信任案です」


「はい?」


その紙をまじまじと見つめた。


「フレンズの皆さんは以前の暮らしに戻りたいと言ってます。僕はその意見の代表者として、選挙したいんです」


「...、こんなもの、

「こんなものは認められないのです」


そう言って受け取った紙をビリビリに破き始めた。


「何でそんなことをするんですか?」


「私が好きな時に解散するのです。

私が良いと言わないものは全て認められないのです」


「ずっと首相でいるつもりですか?」


「当たり前です。

たとえかばんでも私に意見し盾突き、

首相の座を奪おうとするとは。

これは明らかに私に対する侮辱、

憲法違反です。お前は犯罪者なのです」


「そんな、無茶苦茶じゃないですか...せめて裁判を...」


「そんなの知らないのです。

私がこの国の長、私が決める事です

私は裁判を認めないのです。

即刻、お前を監禁するのです」


「や、やめてくださいよ!」











「あぁ...、どうすれば」


「落ち着きなよ助手」


フェネックは私の肩を叩いた。


「何だあれは!閣僚の意味が無いじゃないか!」

憤りを顕にしていたのはヒグマだった。


「落ちたな」

低い声でタイリクオオカミが言った。


「別プランを使うしかないね。

タイリクオオカミの法律は、まあ

いま博士自身が法律みたいな感じになっているから意味無いね」


「じゃあ、どうやって博士に?」


ツチノコはフェネックを見た。


「クーデターだよ。

博士にはちょっと怖い思いをさせないとね...。作戦を話し合おうか」


「あまり気乗りはしませんが...

私でも手の打ちようが無いですから...仕方ないですね...」


重いため息を助手は吐いた。


そうして、作戦会議が始まった。







翌朝、作戦は実行された。


図書館の包囲をフレンズが囲んだ。


サーバルに、かばんの事を任せ、

セルリアンハンターの3人が、博士を取り押さえる。


という段取りだ。



バンッ


「何ですか」


武器を持ったヒグマとキンシコウが博士に近寄る。


「これはなんの真似だと言っているのです」


「博士、あんたのごっこ遊びにはもう

みんな疲れたんだ」


ヒグマはそう言った。


「今すぐ首相の座を降りれば…」


「嫌ですね。これは私に対するクーデターですか。面白い。こっちには権力があるのですよ」


「権力?そんなの紙切れと同じだ。

なんの価値も無い。図書館の周りには大勢のフレンズがいる」


「だ、だからなんなのです」


ヒグマは目を光らせた。


「周りには敵しかいないってことだよ」


「ふざけるなです。全員国家反逆罪で

捕まえるのです」


「1人が大勢に勝てる訳ないでしょう」


「負けを認めるんだ」


ヒグマは自身の武器を高く振り上げた。


「...わ、わかりました。

落ち着きましょう。一旦落ち着くのです。話し合えばわかります」


「残念だね」


「フェネック...」


「憲法5条、首相が仕事を出来なくなった場合に限り副総理が首相権限を引き継ぎ政務を執り行う」


「何ですかその憲法は...知りませんよ?」


「まあ、少しお休みくださいよー。

“元”首相」


「は?一体何をっ」


ドスッ


「気を失わせたぞ。あとは任せた」


「はいよー」




フェネックは外に出て、舞台の上に上がった。


「皆さん、どーもどーも。

博士は首相権限でクビにしたからねー

安心していいよ。

さっきの言葉の通り、今この時から

第2代内閣総理大臣になったフェネックだよー。と言っても5分ぐらいの政権だけどねー。この国を解体するよ。

内閣は解散、全て元の通り。

はい、この紙に私がサインしたら実行されるからねー」


「フェネック首相!握手して欲しいのだ!」


アライさんが壇上に上がった。


「はいはい、貴重だからね」


握手した後、フェネックはスラスラとサインをした。


「はい、これで施行だよ。

という訳で私は一般人だからねー。

今後一切口出ししないよ。それじゃあ

さようならー」


そう言って壇上を去った。






「博士...、大丈夫ですか」


目を覚ました博士にそう声を掛けた。


「一体何があったのです....」


「博士を元に戻すには、これしか無かったのです」


「まさか...」


「国はフェネックが解体したのです」


「何でそんなことを...」


「ここは自然のままに身を任せた方が幸せな所なんですよ...」


博士はどこかしら寂しげだった。


「もし、博士がまた首相になりたいのなら、この図書館を独立させればいいじゃないですか」


「え...」


「私はその国の、唯一無二の国民になりますよ」


私は笑って見せた。


「じょ、助手...」









後日、図書館はジャパリパークではない所になった。国民の私は博士の法律に

振り回されるが、それはまた別のお話である。



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コノハはかせのすてきなせいじ みずかん @Yanato383

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