第5話 詳細確認ソレダイジー

「よっと」

「ふう……うっ」


転夜てんやさんに掴まって俺達は帰ってきた。


「おかえり……って信護しんご! 大丈夫!?」


いきなりふらっと倒れそうになった俺を白輝すぴかが支えてくれる。


「うん……大丈夫さぁ」

「大丈夫には見えないよ……変身したままだし」

「ああ、そうだった。よっ……と」


俺は変身を解除すると、倒れてしまう。

あれ……どうしたんだか。


「うわっ、全身に火傷してる! きゅっ、救急車!?」

「痛ってぇぇぇ……!」


変身解除したら急に痛みが強くなってきやがったな!


「いや……恐らくは、このままでも2日程経てば治るだろう」


えっそんなに早く治るのか?

『はい。鎧装機甲がいそうきこうには自己修復機能も搭載されていますので。融合している体も同様に修復します』

本当に凄いんだな、鎧装機甲ってのは。痛い時はしっかり痛いけど。

『それは、まだ鎧装機甲を使い始めて日が浅いのと、マスターの体が貧弱だからです。もっと鍛えてくーださい』

本当にこの人工知能は優しくないな……!


「全身に火傷してはいるが、まだ軽度だ。それに、鎧装機甲には自己修復機能が搭載されているようだからな。信護君の体もすぐに治るはずだ」


神風かみかぜ博士が、シルバライトと同じような説明を白輝にしている。


「鎧装機甲って凄いんだね。こんな火傷でもすぐ治しちゃうなんて」


白輝も俺と同じような感想を言っている。


「でも……ちょっと怖いね。人じゃなくなってくみたい……。鬼面ファイターのけんじゃおにみたいに」

「えっ、いやそれはちょっと違うでしょ」


……でも確かに、そうなんだろうな。鬼面ファイターに似てると思って少し嬉しかったけど、人から遠ざかってしまう所も似ている。俺はこれからどうなるんだ?


「あっ……ご、ごめんね。つい思い出しちゃって。そんなこと言われたら、嫌だよね」

「い、いやいや大丈夫だよ。平気」

「手当ての準備は整ってるから、とりあえず応急処置はしておくぞ。こっちへ」


博士がちゃんと準備してくれたようで良かった。このままじゃ寝れやしない。


「あっ、ボクも手伝うよ! 支える!」

「ありが――痛っだ!!」


メルカが触った箇所は特に痛く、飛び上がっちゃいそうだった。


「わわ、ごめんよ!」

「はは……ありがとうね。それともうちょっと優しく……」


なんてことをしていると、ずっと黙ってた転夜さんがこちらをにらみつけてきた。

何なんだあの人は……。

博士とメルカに支えられながら、手当てできる所まで移動した。



「さて、今度こそ話を始めるぞ」

「はい!」


神風博士と白輝、転夜さんとメルカと全身包帯の俺。皆が揃っている。いよいよ、鎧装機甲やその他諸々の話をするからだ。

場所は、相変わらず秘密基地みたいなメカとか大きいモニターが設置されていたりする広めの部屋だ。落ち着かないっちゃあ落ち着かない。


「はぁ、めんどくせぇな……」

「そう言うな、これからは信護君も行動を共にすることが多くなるだろう。話はちゃんとしておいた方が良い」

「ったく、分かったよ」


転夜さんは相変わらずのようだ。なんでずっとあんな調子なんだか。


「信護さん、誤解されやすいけど転さんはそんなに悪い人じゃないよ」

「えっ、うん。大丈夫だよ、別に悪い人とは思ってないから」


メルカが訂正している。転さんって呼んでるんだな。


「メルカ、余計なこと言うな」


おっ、ちょっと転夜さんが笑ったような。


「私、凄い居づらい……」

「はいさっさと始めるぞ!」


白輝が気まずそうにしていると、博士が強引に始めた。


「まずは自己紹介だ。僕以外は互いのことをよく知らないままだからな。まずは転夜達からだ」

「……月波つきなみ転夜てんやだ。エレメントは転移てんい


黒い髪がツンツンしてるな。よく見ると、優しそうな顔をしている……かもしれない。鍛えているようで、がっしりとしている。


「メルカ・ニーカだよ! エレメントは形状けいじょう変化へんかで、メカニック! ロボットアニメが大好き!」


よく見なくてもメルカは可愛い。長い緑の髪に薄い黄色の瞳。華奢な体で特に突き出た部分は無く、一般的な幼い女の子だ――犯罪臭がしてきたからもう考えるのはやめよう。


『マスターってロリコ』

シルバライトは黙ってような? 違うから。


「メルカのメカニックは自称だな。実際は僕の手伝いだよ」


なんだ、自称だったのか……ちょっとおかしいとは思ったけど。


「色々造ってるんだからメカニックで良いでしょ、博士!」

「ははっ。とはいえ、メルカはなかなか頭が良くてね。僕ほどではないが、ちょっとした発明とかもしているんだ。説明はまた後にするが」

「そうなんだ、メルカちゃん凄いんだね!」

「えへへ、ありがとう! 白輝さん!」

「さんじゃなくて、ちゃんでも呼び捨てでも何でもいいからね」

「じゃあ、すーちゃん!」

「ふふ、うん!」


俺が居ない間に仲良くなっていたのか、楽しそうだ。


「俺も、呼び名は何でも良いからな?」

「えっと、まだ信護さんでいいかな」

「あら。何かあだ名つけてくれるのかと思ったよ」

「何でも良いんでしょ?」

「ま、まあそうだな」

「また後で気が向いたらつけるよ!」

「うん、よろしく」

「なあ、さっさと進めようぜ!」


話を切るように言う。また転夜さんは機嫌が良くないようだ。何でか段々分かってきたぞ……!


「そうだな。じゃあ今度は白輝と信護君の番だ」


そう言われて白輝が自己紹介する。


神風かみかぜ白輝すぴかです。エレメントは風です。よろしくお願いします!」


白輝らしい真面目かつ普通な自己紹介だ。よし、俺も!


賭頼とらい信護しんごです! エレメントは無いけどよろしくお願いします!」


転夜さんとメルカが驚いたような顔をしている。まさか、一人だけエレメントが無いからって落胆してるのか……?


「信護さん、エレメント無かったの!? 神風博士が紹介した人だから、あるのかと思ってた!」

「何ふざけてんだ! あるだろ! くだらねぇ冗談は好きじゃねぇんだ俺は!」

「えっえっ!? 何!? 何!?」


生まれてこの方エレメントなんて使ったことないよ!

「三人共落ち着け。信護君、先に伝えておくが、君にはエレメントがある。何らかの原因によって使えなくなっているという状態だ」


何だって? 俺がエレメントを使えるのに使えなくなってるって……ええ?


「俺はエレメントが無いと思って生きてきたのか……」

「まあエレメントを持っている人がそもそも珍しいから仕方ないさ」

「ふん、エレメントが無いヤツが虹害獣こうがいじゅうに勝てるわけねぇんだからな。あるのは当然だ」

「その辺の所を含めて説明するために、まずは鎧装機甲からだ」


鎧装機甲……俺の体に融合している物。

『そして、この私が宿る物』

うお、急に話すなって! 危うく変な反応をする所だったぞ!

『いいじゃないですか、私のことを説明すれば』

ああ、まあそのタイミングが来たらな。


「信護君は三年前の事を覚えているかな?」

「はい……覚えているというか、思い出しましたよ」


あまり良い思い出とは言えないけどな。


「あの日、信護君は傷だらけでとても助かる状態じゃなかったんだ」

「じゃあ、何で俺は生きてるんですか――そうか、そこで」

「そう、僕が信護君の体に鎧装機甲を埋め込んだ。そうしなければ、助からなかった……」

「でも、何で助かったんですか? 鎧装機甲を埋め込んだだけで」

「信護君にはエレメントがある――つまりはSECT《セクト》なわけだが、エレメントを使うにはポテンシャルプルーフというエネルギーが必要だ。エレメントを使う時光るだろう? アレだよ。」

「ポテンシャルプルーフ」


専門用語増えそうだな……。


「そのエネルギーはSECT自身の体が生み出しているんだ。信護君はその量がかなり多い。使うエレメントがそれだけ強大なものなんだろうけど、それはひとまず置いておく」

「はい」


俺って凄いかもしれないのか?

自惚うぬぼれない方がいいかと』

少し位期待してもいいだろうよ!


「それで、エレメントのお陰で鎧装機甲に適合して、自己修復能力によって一命を取り留めたというわけだ。上手くいって本当に良かったよ」

「そう思うと、有難いです。この命は神風博士によって救われたんですね」

「今更感謝はしなくて良いぞ。本来なら信護君に使うつもりも無かったし、鎧装機甲を埋め込んだ後も普通に生きて欲しかったと後悔もした」

「でも、俺は感謝しますよ」


命を助けられて感謝しない人はいない。今思えばあの人と博士の二人に助けられたことになるんだな……。


「……ああ、ありがとう」

「ねぇ、信護さんは何色なの?」

「色? 何が?」


肌なら、肌色だけど……。


「さっき言ってたポテンシャルプルーフの色だよ。ボクはピンクだよ!」

「そうは言っても……あっアレか! ええと、青白かったよ。水色とはちょっと違う気がする」

「ふーん。綺麗そうだね! 後で見せて!」

「もっちろんだよ!」

「ちなみに転さんは紫だよね!」

「ああ。つーか賭頼は一緒にいたから知ってるよな」

「はい。で、白輝は」

「緑だよ。他の人のを見たことなかったから、皆緑色だと思ってたよ」


なるほど、色んな色があるな。ディメンジャー(特撮番組)みたいだ……!


「あと他に知りたいことはあるかい?」

「強いて言うなら、『ここ』のことですかね」


俺が今いるこの場所。壁やテーブルなどが金属であることを隠そうともせず自己主張している、如何にもSFな雰囲気の空間。金属じゃない家具も置いてあるが、この空間では違和感に感じてしまう。他に何部屋もありそうで、相当広いのだろう。

家の地下にこれは凄過ぎるだろ。


「それは私も気になるから教えて、お父さん」

「よし、まあ話せば長くなるから簡単に説明するぞ」


さてさて、どんな話が出てくるやら……。


「ここは、彩月さいげつ市……もっと言えば日本を守る為に創設したSEGという組織の本拠地だ」



――は?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鎧装機甲セクトマン @Kikai_Kotaro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ