このエッセイにおける世界の捉え方は多くの方、とくに考察を趣味としてない方々には奇天烈なものに見えるかもしれません。中には自分の考えと違うからって切り捨てたり攻撃したくなる人もいるでしょ。
でもそれはとっても勿体ないことだと思うんです。
みなさんご存知かとは思いますが弁証法というものがありまして。二つの命題を統合してシンテーゼに到達する方法です。
自分の考え方(A)も、それとはまったく違う考え方(B)も、それ単体では不完全です。矛盾してるように見えるその二つを統合できたとき、新しい真実(C)が見えてきます。
一般的なAとは異なるBをこうも大胆に、かつ明瞭に言語化できる人なんてそうはいないんです。勇気がなかったり、言語化できる技術がなかったり、そもそもBを持ってないかもしれない。
そう考えるとこのエッセイはとても貴重な文献なんですよね。少なくとも私にとっては……ついに、やっと見つけた「最高のB」になりました。
はじめてカクヨムでエッセイを読みました。
切り口というか、議題が直球でいいですね。
いまの日本社会の閉塞感そのものに声を上げた、若年層の生々しい意見がひとつの参考になりました。
正直なところ、著者の意見にはうなずきが半分、「それはどうなんだろう?」が半分、といったところです。
ぼくと著者とでは双方の属性にけっこうな距離があるからでしょう。
(性別が違うだけでも、ものの見かたは宇宙のように距離があるはずです)
それでも最後までしっかり読めたのは、先にも述べましたが、このエッセイが「直球の、生々しい声」だったからです。
話は変わりますが、ぼくは自己紹介というものがとても苦手でした。
出席番号順に黒板の前に立たされて、自分がどんな人間であるか発言させられるアレです。
嘘です、見栄を張りました、いまでも苦手です。
とにかく、ぼくの自己紹介はたいていの場合、自分が何者かを言えずにただ事実を述べるだけに終わります。
(好きな食べ物はハンバーグです)
(好きな色は青です)
本当なら「自分はどういう性質の人間であるか」とか「どういうものの考え方をするか」といったふうに、直球の本音を言うべきだし、それが自己を紹介するということです。
ぼくが青色アホアホハンバーグマンであることは、心の底から出てくる声ではないし、そんな情報には価値がないのです。
でも、このエッセイはそうじゃなかった。
「ちょっとばかし、思う事がありまして。」というタイトル通りの、桜木彩という著者の頭の中にあるものを、真摯にひっくり返して丁寧にぶちまけたものです。
世の中にはいろんなものの見かたがあって、意見も様々だけど、本音で語る言葉には、それだけで正面から向き合う価値があると思います。
もし良かったら、執筆の間に筆を止めた時、あるいはいつもの作品を読むのが一段落した時。
そういった時間に、著者の「本音」と向き合ってみませんか?