第29話:言葉のキャッチボール
物事には、理解できる事と理解できない事って有りますよね。
そして、許容できる事と許容できない事も有りますよね。
私はこの2つを別々に考えています。
そういう考えを持つ人が居ることは理解できる。しかし、私はその考えを許容する事はできない。
私が19才頃に、よく通っていたお菓子屋さんの店員さんに、
「結婚しないの?」
「早く結婚して、国の為に子供産まなきゃね」
と言われたことがあります。
この日以降、私はこのお店に『行きたい』と思えなくなってしまいました。
お菓子屋さんの商品は美味しくて大好きです。
しかし、店員さんと顔を合わせたく無い気持ちの方が強かったんです。
こういう考え方を、“偏見”と思う方もいるかもしれません。
ですが、よく聞くじゃないですか。
『嫌なら見るな』
まさに、そういう事なんです。
ある日、母に『お菓子を買ってきたから一緒に食べない?』と誘われました。
ですが、私は当時過敏になっていたので、『食べたく無い』と断りました。
母に、何故かと問われたので、経緯を説明しました。
すると、その店員さんにも事情があるんだから…と、母から返ってきたのです。
どうやら、その店員さん夫婦の間には、なかなかお子さんに恵まれないのだとか…。
事情はなんとなくわかりましたが、『自分達の代わりに子を産んでくれ』…というニュアンスに聞こえてしまいました。
しかし、それならば知っていて欲しい。
貴方達が子を望むように、
その願いの強さと同じ程に、
子を望まない私が存在する事を。
今でこそ、こんな風に書いていますが、当時は人格否定されたんじゃ無いか…と思ってしまうぐらいにはショックでした。
なによりも辛かったのは、店員さん側の意見を“理解”出来てしまうからなんだと思います。
相手の発言が“理解”出来ないと、『なんで?』『どうして?』なんて疑問でいっぱいになって、パニックになってしまいます。
ですが、私からすればパニックだけで済むんです。
パニック障害の方や、過呼吸の経験がある方には、心無い書き方になってしまうのですが、パニックや過呼吸なら、治す事ができるでしょう。
でも、“理解”出来てしまった場合は、同じ『なんで?』でも、『相手の言いたい事は理解できたけど、私と反対意見だしどう説明すれば伝わるのかな?』っていう風になるんです。
相手が芯の頑丈な
だって、どんなに伝えたくて発言しても、“理解”しようとしないんですもの。
そうなると、『なんで“理解”してくれないんだろうか』と、頭の中でグルグル考えて…私はよく、こうなっちゃうと涙が出てきますね。
悔しいんですよ。
どんなに説明しても“理解”してくれないのだから。
私は、“許容”して欲しいのではなく、“理解”して欲しいだけなんですよね。
ちょっと違うかもしれませんが…。
「私は日本人です」
って説明した場合、まず聞き手は私の発言内容を理解しようとしますよね?
『成る程。桜木は日本人なのか』…って。
ここまでが“理解”で、この後が“許容”になる筈で…。
「うん。桜木は日本人ですね」っていう趣旨の返事が返ってくれば、聞き手が“許容”してくれたんだと、私が“理解”出来ます。
「何言ってんだ。桜木は日本人じゃ無いだろ」って返事が返ってくれば、聞き手が“許容”出来なかったんだと、私が“理解”できるのです。
そういう意味では、私は店員さんに未だに自分の“主張”を伝えていません。
店員さんの発言は、今話題になっている“生産性”に関係する内容だと思います。
私は、このエッセイで『セクシャルマイノリティ』という表題で投稿しましたが、まさかこんなに問題視されているテーマだとは思ってもいませんでした。
様々な“思想”に干渉するテーマだったみたいで、かなり荒れていますね…。
“恋”の多様性は受け入れようと頑張ってみても、
“愛”の多様性の受け入れはまだまだ難しそうですね…。
もしかしたら、これも“理解”と“許容”なのかもしれません。
『セクシャルマイノリティ』の存在は“理解”…“認知”しているけれど、“許容”はされていないのかもしれない。
“許容”されていないからこそ、『パートナーシップ条例』にだって、沢山の反対意見が集まったわけじゃないですか。
でも、当時のニュース等のインタビュー見てると、あまり“理解”しようとしないで、“フィーリング”とか『なんとなく』で『反論』している様にしか感じられませんでした。
こういうのも、日本人の“傾向”なのかもしれませんね。
言葉のキャッチボールというよりも、素振りの方が得意なのかもと、思ってしまいます。
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