第6話:草食・肉食な人間達(後編)

 前回の続きです。

 

 何故最近マスコミは『草食男子・肉食女子』を話題にするのでしょうか。

 仮に、情報操作だとするのなら『自分は、草食男子だと馬鹿にされるのは嫌だから、婚活して彼女を作ろう』と思わせるためでしょうか?

 現在、報道陣やマスコミで発言している方達は、ちょうど私の親世代でしょうか…。

 前編で書いた、②の浪漫的結婚全盛期の時代でしょう。

 私から見た、その世代の人達は《過半数に身を置く事》を第一に考えている傾向があるように思います。

 なので、きっと当時の自分達を思い返して比較しているんだと思います。

 モテる事に必死で、《交際相手》の有無で周囲からの評価も変わってしまう時代だったのでしょう。

 バブル時代も重なっていたので、余計に年齢を重ねるごとに、《交際相手》がいないことは恥ずかしい事だったのかもしれません。

 そして、《交際相手》を作らなくてはならない一番の理由は、《圧力》だと思います。

 帰省して実家に戻った時に両親からの、

『今お付き合いしている人はいるの?』

『早く孫の顔が見たいわ』

『ねぇ。〇〇さん家の息子さんはどうかしら?』

 などの催促する言葉達。

 そして、年齢を重ねるごとにエスカレートする《圧力》。

 お見合い写真が送られてきたり…。

 次第に、《圧力》は職場にも及びます。

『〇〇君は、まだ独身なんだってね。』

『〇〇さんて、もういい年なのに独身なんですって』

 …そして、上司のお節介でお見合い写真が渡される事になってしまいます。

 帰宅すれば、実家から送られてきたお見合い写真。

 鞄には、上司から渡されたお見合い写真。

《圧力》に耐えきれなくなった若者は、両親や上司をさせたくて、自ら婚活に励んでいたのでしょうか。

 きっと、両親や上司を婚活にはげむのでしょう。

 私がその境遇にいたら、そうしていたと思います。

 きっと、結果幸せだったかもしれないけれど、《世間体》を気にしすぎた故に、周囲の人間は結婚を無意識に強要していたんです。

 そんな時代を生きてきた人達からすれば、結婚したり・しなかったりを自由に選択しながら生きている私達は、羨ましいのかもしれません。

『なぜ、俺達はあんな思いや経験をしてきたし、それがだったのにお前等は…』

 そんな嫌味や嫉妬が込められていたのかもしれません。

 少なくとも、私は両親から結婚を催促された事はありません。

 もしかしたら、諦めているのかもしれませんが…。


《結婚》に対しての選択肢が増えてきた昨今。

《草食男子》と呼ばれている男性は、別段変わり者という事はないんです。

 過去の《圧力》が普通だった時代とは違うから、『結婚したいか』という気持ちを大事にしているだけじゃないですか。

 自分の立場や環境を考えて、『結婚したいか』の優先順位を作っているだけなんです。

《世間体》を気にして結婚する時代は終わったんです。

《独身》は恥ずかしい事じゃない。無理矢理結婚して家庭崩壊するくらいなら、自分のタイミングで結婚すればいい。

 欲が薄くなったりしたわけじゃない。

 そもそも、《世間体》や《圧力》を当時の環境から取り除いたら、きっと結婚した数は減るでしょう。

 そして、《少子化問題》という深刻さを抱えているからこそ、マスコミ達が若者の男性を煽って婚活を促しているのかもしれません。


 一方で《肉食女子》と呼ばれている女性達。

 男性が現実的に生きていくのに反比例するかの様に、夢や理想を追い求めて生きています。

 近年では、少女漫画の他にもアニメやゲームそしてドラマでも、様々なイケメンや素敵な男性と出会うことができます。

 頭では、『画面の中の人』と理解はしていても、「理想のタイプ」として蓄積されていきます。

 ちなみに、私が小学生の頃に好きだったのは、忍たま乱太郎の土井先生と、ルパン三世の石川五右衛門でした。

 勿論、ラブではなくライクの方ですよ。

 なので、特に《理想の彼氏像》なんてありません。

 二次元の好きと、三次元の好きは別物ですからね。

《二次元》という英才教育を受けて育ち、『高校生になったら、放課後の屋上で告白されたいな』とか夢を抱いて成長します。

 まぁ、実際には屋上なんて入る事はできませんけどね。

 女性の場合は、《世間体》を気にする時代から《自分の価値》を気にする時代になったのかもしれません。

 人生の履歴書に『彼氏有り』という項目が欲しいのでしょう。

 そして、《告白される》という経験が人生の履歴書に多く記載されるほど、《自分の価値》が高騰してくるのかもしれませんね。

『自分は成功者なんだ』と自慢したいのかもしれません。

 そして、『どうせ彼氏にするなら相手のスペックも高いに越した事はない』という感情から、《ハイスペック結婚》なんて言葉が生まれたのかもしれませんね。


 街頭インタビューで、自称肉食女子の方や年上の方が「最近の男性は凄くなよなよしてて…」とか、「全然ガツガツ来なくて、仕方なく女子側からアプローチしなくちゃなんですよ」みたいな回答を見聞きしますが、気を落とす事はありません。

 だって、男性側と女性側とでは考え方の変化が違うんです。

 婚活等に参加しない独身男性には、結婚を考えていない人や、結婚したいとは思ってるけど自分に自信がない人など様々です。

 一概に《草食男子は変だ》と決めつける風潮は日本人らしいですが、よろしくない傾向ですね。

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