おわりに
前作『万年筆探訪記』がご好評いただいたことに調子に乗って書き始めたこの番外編。
開始当初は盛夏の頃でありましたのに、今や冬。冬真っ盛りであります。途中3ヶ月もほったらかしにした時期がありましたので、さもありなん、ではありますものの。
しかしながら、途中で断念せずにこうして最後のご挨拶まで書き切れましたのは、ひとえに皆様の温かいご声援あればこそ。
改めまして御礼申し上げます。ありがとうございました。
前作から通算して、10本の万年筆、4種のインクを使用感と共にご紹介して参りました。
皆さま、気になる子はいらっしゃいましたでしょうか?
万年筆好きを増やしたくて、万年筆について語れる仲間を作りたくて始めたエッセイでしたが、連載するうちに、レビューや応援コメントで少しずつ『万年筆との出会いの思い出』を寄せてくださる方が現れて、どれだけ嬉しかったことか。
僕の本懐は果たされました。
……っていう書き方をすると、あれですね。地縛霊が成仏したみたいに見えますね。
違うんですよ。嬉しかったんですよ。本当に。
カクヨムの規定で内容に直接関係の無い文言は削られてしまうらしく皆さんからは見えないのですが、僕の手元に届いたメールには、レビューで『万年筆との出会い』や『次回へのリクエスト』など寄せてくださっているのがしっかり載っているんですよ。
それを読めるのが、本当に嬉しくて嬉しくて。ああ、皆さんにもお見せできたら、どんなによかったか。
創作を始めて長いこと経ちますが、こんなにも楽しい気持ち100%で走りきれた作品は初めてです。
いつもはだいたい本文打ちながら『末期の時を迎える妖怪鵺』みたいなうめき声あげてますからね。
では、最後の最後に。
おまけのお話、『スタンダードなインクカートリッジさん』のお話をばいたしたいと思います。
僕が初めて使ったインクは、ウォーターマンのカートリッジでした。
その後、ボトルインクの魅力にとりつかれた僕はカートリッジから離れていたのですが、セーラーのほしくずを買った時、カートリッジインクと二度目の『出会い』を果たすことになります。
新しいペンを買ったはいいものの、セーラーのコンバーターを調達していなかった僕は「コンバーターが届くまでの間」と思って、おまけについてきたブルーブラックのカートリッジを差し込みました。
そして、線を引き――驚きました。だってそこには、僕にとって理想的な『海の色』があったのですから。
僕は海に取り憑かれた人間なので、海の名がついているものはだいたいみんな好きなんですが、色彩の『深海』よりも少しだけ深度の浅い海の色を普段遣いしたいと思って、折に触れて探していたのです。
『深海』も好きなんですけどね。深々度潜水航行の気分でない時もあるのです。
そして条件を満たしたのが、セーラーのおまけカートリッジでした。
では、今僕はそのインクをヘビロテしているのかというと、そうではありません。そうしたいんですけどね。できないんですよね。
……商品名がわからないので。
マジでわからないんですよ。商品番号とか商品名とか、どこにも無いんですよ。メーカーのサイトみても、特にあれとかそれとか書いてなくて。
質問サイトには「多分あれなのでは?」という推測が載っていましたが、多分で買って違ったら残りのカートリッジ持て余すことになるので、試してみる気にもなれず。
どなたか、ご存知ありません?
はてさて。
とにもかくにも、紫藤夜半の万年筆探訪記はこれにて終幕でございます。
皆さま、どうかお忘れ物などなさいませんよう。
お気持ちも思い出も、すべてすべてお持ち帰りくださいますよう。
なぜなら、いつかそれらが再び、皆さまを沼へ導く案内人となるに違いないのですから。
それでは皆様、楽しく美しくそして底知れない万年筆とインクの沼地へと、どうぞいってらっしゃいませ。
万年筆探訪記<番外編> 紫藤夜半 @yowa_shido
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