魔女の魔法にかけられて

 ねえ! 聞いて!

 前記事をアップしたらツイッターで教えてくださった方がいらしたんですけど、古典インクに含まれるタンニンという成分はそもそも、植物が動物に対して「自分は食べられるものじゃないので食べないでください。そこんとこよろしく」と伝えるために発するものなんですって!

 僕の動物的勘が当たってたってことですよね!

 やっぱり言われてたんですね! 「食うなっつってんだろ」って!!



 閑話休題。

 あれは、昨年11月のこと。

 ひとりのヲタクが東京を訪れました。

 初めておひとりさまサークルとして文フリに出展した帰り際、ヲタクは表参道に佇む一軒のお店へと駆け込みます。

 そのお店の名は、ブングボックス――ヲタクがある日雑誌で見かけ、以来憧れてやまなかった、万年筆とインクのお店でありました。

 ヲタクは気づいていたのです。店員さんがネットにあげた、一枚の写真。その片隅に、長らく完売御礼であったはずの幻のインク――『魔女のインク』がひとつだけ写り込んでいることに。



 ……というわけで、先だって、ブングボックスさんのオリジナルインク『魔女のインク』と運命的な出会いを果たした僕でありましたとさ。

 『魔女のインク』については『Witch the Third』の記事で少し触れましたね。見た目は濃く暗い赤なのに、書くと黒いという、不思議なインクのことです。

 これを魔女の万年筆にいれて使いたくて使いたくて……数年ごしの念願がようやく叶いました。やったね。


 実際、手にとって眺めた感想ですが、赤というよりは、紫に近い印象を受けました。ペンに詰めて書いてみても、インクの伸びたところはやはり紫色でした。

 紫か……魔女まじょいですね。とても魔女い。良い。

 濃赤とばかり思い込んでいたのでちょっと面食らいましたが、これはこれでありですね。

 そして、『液体の外見とはうらはらに、筆記した文字は黒い』という噂の真贋ですが……

 思っていた以上に黒かったです。

 インクを詰める過程では色付きインクに見えるので、「まぁなんだかんだ言っても、案外鮮やかに発色があるのでは?」と思っていたのですが、甘かったですね。

 今、ノートに書きつけた文字を見返しながら打っておりまして、その所見を述べると「まぁ堂々黒をうたっている商品よりは黒くな……いや黒……漆黒ではない……とも言えないような……黒……これは黒い……でもインクが薄い箇所は薄紫に見える……なぜ……?」といったところですね。絶賛思考がとっちらかっております。

 コメダの暖色灯の下で見ておりますので、ご自宅の白色灯だとまた見え方が違うやもしれません。

 それはそれとして、黒いです。

 しかし、ネットの海を漂っていると、他の方の書き文字ではかなり紫が強いと見受けられる画像もあるのですよね。……なんで?


 僕が入手したときはちょうどインク瓶のリニューアル直前だったこともあり品切れ状態でしたが、現在は新デザインのボトルで絶賛発売中です。

 従来のいかにもインク瓶といったデザインも素敵でしたが、現行品はハイヒールを彷彿とさせる形状をしています。大変おしゃれです。

 なんでも、このデザインにすることで、リザーバーを必要としなくなるんだとか。

 魔女のインクは今後も使い続けていこうと思うので、いずれ新ボトルを手に入れたらまたいずこかで使用感をお伝えしたいですね。



 さて、インクについての記事も、これで4つめ。

 我が家にあるインクたちについては、概ね語り終えました。

 名残惜しくはありますが、『万年筆探訪記<番外編>』は次回最後のご挨拶を以て〆させていただきます。

 それでは、万年筆とインクの沼先案内人に、何卒最後までお付き合いいただきたく――。

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