運命の日《魔法暦100年》 前編(3)
「『
総員100名の中継役が確認完了との情報を発信したようだ。
さあ、影の王へお
「龍の首AとBに対し、
号令と同時に、陽動に参加しなかった両翼計4門の砲台から河川を
ひとつの光条につき魔法弾60人分を集約した「
時間と共に薄れる煙の奥で龍の首2本から頭部と首の半分が消え失せた。根元の残骸は力なくうなだれた。魔法士から歓声が沸き起こる。聖弓魔法奏団は感情を表に出すことを容認していた。
「供給役を総動員する。
私は充分な効果を確認し、
一方で、集約した魔法弾を任意の砲台役まで送り届ける機能は、「
魔法弾を砲弾役まで経由させる計算はすべて「中継役」の魔法士に任せてある。魔法弾60人分の
数分後、カウルから準備完了との報告がもたらされた。全力を挙げた聖弓魔法奏団だ。訓練通りなら最短で30秒経つごとに連射が可能となる。
陽動に専念していた砲弾役は担当する首が撃破された場合、首1本ごとに4名が役割を終える。うち2名は装填まで30秒の状態だ。首2本を撃破すれば4名――彼らが次の
「龍の首CとDに対し、
炎の帯が先刻とは別の砲台から放たれる。空中の2箇所で発生する爆発音が大地を揺るがした。2本の首が新たに頭を失った。魔法士が作り出した炎は、影の王の主戦力と目される9本の龍の首を力で押していた。
一方、地上では幾つもの
影の王本体――球状の身体が炎に包まれ始めた。
首の数は「
「龍の首EとFに対し……」
指示を出す直前だった。龍の首1本が頭にぶつかる陽動の炎を無視して聖弓魔法奏団の左翼に突撃した。集団をこだまする痛烈な悲鳴。確認せずとも断末魔の声だとわかった。陣形を切り裂かれるのと同時に、一瞬で魔法士数十名の命が消え去った。
犠牲者を出してしまった――。龍の首が去った後に無残に喰い散らかされた魔法士の亡きがらが残った。生存している者はいるのか? 命を取り留めた負傷者は助けられるだろうか?
声を振りしぼった。
「被害を確認せよ! 陽動作戦中の砲弾役は担当する首へ攻撃を継続。中継役は魔法弾供給任務を果たしつつ、情報を集め本部まで伝達せよ!」
龍の首への陽動は首Fをのぞいて影響はない。砲台役と供給役の魔法士が一度にいなくなり、彼らの標的だった首Fに対しては、担当がすでに消滅し待機状態だった砲台役以下をあてがった。
「被害状況確認しました」
カウルが
首Fへ陽動をしかける砲台役に改めて首Cを担当していた砲台役を、地上に攻撃する砲門ひとつに首D担当だった砲台役を、亡くなった者の代わりに割り当てる旨をカウルへ伝える。後輩魔法士は、栗色の頭髪をひと撫でして伝令と共に隊列へと戻った。
戦況はあたかも生き物のごとく動き、休むことを知らない。魔法士たちが陽動を続けながら数分後、カウルから伝達終了と
「龍の首EとFに対し、
……残る5本の龍の首のうち、2本が炎の挟撃から生じる爆発によって四散した。
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