第30話 memory④

そして儀式は始まった

最初は不安で怖かったが、次第に意識が

ボーッとしてきた

手離しそうになった時


"今回の子は美味しそうねぇ"


「!?」


どこからか声が聞こえた


"こんな子を食べられるなんて、今日はついてるかもぉ"


「誰!?」


見えない何かがいることに怯える


"大丈夫よぉ〜怖がる事はないわぁ!!貴方は黙って食べられればいいのよぉ"


辺りを見渡すも声の主はおらず

ひたすら老婆が何かを唱えている


「怖い…助けて…助けて!!!!お母さん!!!!」


少女の声は聞こえていないのか

誰1人として反応しなかった


"貴方は生け贄として捧げられたのぉ

だからその身体頂くわね!!!!"


そう聞こえたと同時に少女の中に何かが入ってくる

息が出来ず苦しい

暗くて怖い

何よりも自分が自分でなくなる気がした


「嫌だ!!!!」


咄嗟に放った拒絶の言葉

すると辺りが禍々しい空気になる


「!?な、なんじゃ」


異変に老婆が驚くのと同時に凄まじい

爆風が起きた



「ばば様!!大丈夫ですか!?」


側近の人達がやってくる


「あぁ…なんとか。じゃが一体何が起きたのだ」


爆風が落ち着くとそこには

背中から黒い翼を生やした少女がいた


「!?あれは!?」


「ばば様??」


老婆のただならぬ様子に周りがざわつく


「何ということだ…まさか、そんな」


「嘘つき」


そう言い少女は老婆達の元へと歩いて行く


「みんな、みんな……死んじゃえ!!!!」


少女の瞳からは紅い涙が流れていた。




『!?』


少女の記憶に触れていたルビカーフィンだったが、意識を戻す


『貴方…あの時……あんな事を』


何を言ったらいいのか分からず

上手く言葉が出てこない

だが、目の前の少女はなにも知らず

生け贄として捧げられた

その結果が今の状況だ…

どうしようか考えていると


「泣いて…るの??」


『え…』


ルビカーフィンは泣いていた

この状況をどうにかするため

とか

可愛そうだから

とか

そんな涙ではなく、無意識に出ていた涙だった


「お姉ちゃん…怪我したの??」


『!?』


この世界では存在しないはずの自分に

少女は声をかけてきた

焦点は合っておらず、どこか遠い所を見ているようだが

こちらを向いている


「それとも…お姉ちゃんも酷いこと…されたの??」


『……違う、違うよ』


涙を拭い、少女を見る


『私は貴方を助けたいの』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

PROMISE FOR YOU 〜時を越える想い〜 霞大寺 るん @runsama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ