第29話 memory③

何かが焼けたような臭いが鼻をつく

勢いよく起き上がり周りを見渡す


『!?』


辺り一面、火の海になっていた


『なに…これ』


見慣れた風景から先ほどまで居た村だと分かる

走って逃げようとする人、泣いている子供、怪我をしている人、倒れたまま動かない人


それはまさに地獄絵図だった。


『一体なにがどうなっているの…??』


今までとは違うため、全く状況が把握できない


「お母さん!!お母さん!!!!」


子供が叫んでいる

どうやら母親が倒れた家の下敷きになってしまったようだ


「あなただけでも逃げなさい!!」


「いや!!」


「いいから!!!!」


母親は子供を行かせようとするが

それを拒否する


『助けないと!!!!』


走って母親の元へ行くも

モノが触れない事に気付く


(そうだ…私はただ見ていることしかできないんだ)


走って逃げる大人達は子供が泣き叫んでいる事を気にも止めず、走り去って行く


『なんて…無力なの』


グッと拳を握り締めた

次の瞬間


ドッゴーン


『!?』


目の前の建物が大地ごと吹き飛ぶ

何が起きたか分からなかったルビカーフィンはただ呆然と立ち尽くす


「お母さん…どこ」


『え…??』


急に聞こえてきた、どこか聞き覚えのある少女の声

土煙等がおさまると同時に見えた1つの影


『!?貴方は!?』


そこには先ほどまで家族と微笑んでいた

"ルイ"と呼ばれていた少女がいた

だが、少女の背中からは黒い翼が生えていて

ハイライトのない真っ黒な瞳からは紅い涙を流している


「1人は寂しいよ…1人は嫌だ!!!!」


少女がそう叫ぶと周りのモノが吹き飛ぶ

歩みを進める少女の近くにあったモノは次々と破壊されていく

さながら破壊神だ


「すぐに来てくれるって言ったのに…大丈夫だって言ってくれたのに…嘘つきだ。みんな!!みんな!!嘘つきだー!!!!」


ヒートアップする少女

既に村の3分の2は破壊されてしまっている


『辞めなさい!!こんな事をしてもなにもならない!!!!』


聞こえないと分かっていても

ルビカーフィンには黙って見ているだけ

なんて出来なかった

被害を受けないため少女に近付く


『なにがあったか分からないけれど、こんな事をしても何もならない!!!!』


必死に叫ぶも届かない声

村を破壊し続ける少女

燃え続ける家々

抉られた大地


『やめて…』


悲しいのか少女の瞳からは紅い涙が流れ続けている


『もうやめてー!!!!』


止めるために少女に触れようとする

いつもならすり抜けるのになぜだか少女には触れれた。


『!?』


その瞬間、ルビカーフィンの頭の中に映像が流れてくる



少女が連れて行かれた場所は暗く、所々にロウソクが置かれていて、いかにもをするのに相応しい空間だった


「怖いよ」


少女は不安を口にする


「大丈夫よ、すぐ終わるから」


数人の大人と老婆が安心させようと声をかけてくる


「お母さんは??すぐ来てくれるって言ってた」


「もうすぐ来るわ。さぁここに座って」


祭壇の1番上に座らされ、身体を拘束される


「すぐ終わるからそこで大人しくしていてね」


それだけ言うと去っていく


流れてきた映像は少女の記憶だった。

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