第28話 memory②

バタバタと足音がする


『ん…』


ルビカーフィンは目が覚めたようだ


「ねぇねぇ!!次はあっちに行こうよ!!」


「あまり離れるなよ!!」


そんなやり取りが自分の近くで行われている


『子…供??』


ルビカーフィンの近くには少年と少女が居た

近くにある花にソッと触れるも


(また私は見ていることしかできないのか)


そんな事を考えていると


「もーう…お兄ちゃんは一々うるさい」


『!?』


自分と同じ口癖の少女に驚く


「うるさくてもなんでも、危ないものは危ないんだから」


少年の方は前回、見ていたモノよりも

ますますコウに雰囲気などが似てきた


(なんでだろう…とてもコウに似ている)


ルビカーフィンが考えていると


「ほら!!早く行くよ!!」


そう言い少女の手を引いて歩いて行く

少女はとても嬉しそうに笑っていた


(幸せそう)


何気なく思った


じはらく歩くと前回見た家よりは少し豪華になった家へと着く


「お母さん、ただいまー!!」


少女が大きな声で言う


「おかえりなさい。そこにおやつが置いてあるから食べなさい!!」


「今日はおはぎだー!!」


きなことあんこのおはぎを見て喜ぶ少女


「どっちがいい??」


少年が問う


「うーん…どっちも食べたい!!」


少女は無邪気にそう答える


「なら半分ずつしよう」


少年は慣れているのか器用に半分ずつにする


「ありがとう!!お兄ちゃん!!」



ルビカーフィンはなぜだかその光景をとても羨ましく思った

幼少の頃の記憶がない自分には

無い物ねだりなのかもしれない


「あ、お父さんだ!!おかえりなさい!!」


「あ、あぁ…ただいま」


どうやら父親が帰宅したようだ

だが表情がどこか暗い


「??なにかありましたか??」


異変に気付いた母親が問う


「2人とも少し川へ水をくみに行ってくれないかい??」


「え…でもまだあるはずじゃ…」


「頼んだよ」


少年は言いかけるも有無も言わさずな物言いに


「分かったよ…行こう」


と少女を連れて家を出て行った


(なにかあったのかな??)


ルビカーフィンは気になり、とどまることにした


「なにかあったのですか??」


「ついに、ついにうちの子に回ってきてしまった」


父親は顔を伏せながら言う


「!?それは…本当なのですか!?」


ただならぬ様子だ


「先ほど決まった……どちらかを出さなければ」


「そん…な」


母親はヘタリ込んでしまう


(どちらかを出す??何があるの??)


ルビカーフィンにはなんの事だかサッパリだ


「儀式は明日だ…それまでにどちらか決めなければならない」


「私にはとても決められないわ」


「俺も決められない……決められる訳がない!!だが……それがこの村のシキタリなんだ」


ドックン


『!?』


何故だか嫌な胸騒ぎがした

自分はここに居たらいけない気がする

だが、帰り方もわからなければ

どこに行けばいいのかすらわからない

この場から離れたいのに足が動いてくれない

ルビカーフィンはそんな状態になってしまった


「まだ何も知らないあの子なら」


唐突に母親が言う


「それは僕も思った……でもあの子になんと説明したらいいのか」


「説明なんて必要ないわ…あの子は分かってくれる」


「だといいんだが」


とても重く暗い雰囲気が漂う


「最後くらい……最後くらいは笑顔で見送ってあげましょう」


「だが…なんて言ったらいいのか」


「それは私に任せて…あの子ならきっと分かってくれる。許してくれるわ」


この3文字がルビカーフィンの頭のなかを支配する


「ただいまー!!」


何も知らない2人が元気良く帰ってくる

いや、少年の方は少し落ち着いてみえる


「お帰りなさい。ありがとうね」


先ほどまでの雰囲気とはうって変わって

いつも通りの笑顔を向ける母親


「リヒトはそのお水を井戸まで持って行ってくれるかしら」


「分かったよ」


少年は井戸へと向かう


「ねぇ…もし明日少し遠い所に行かなければならないとしたらどうする??」


少女に目線を合わせるようにしゃがむ母親


「1人で??」


少女は首をかしげる


「うん…最初は1人。でもね、そのうちみんなになるの」


「みんな来るなら平気だよ!!」


少女はニッコリと笑う


「そう……明日貴方は大切な人を目覚めさせる器として使われるわ…でも大丈夫。すぐにみんな行くわ」


ギュッと少女を抱き締める


「器…??」


「大丈夫、心配は要らないよ」


父親も優しく微笑みかける


なんだかその光景を見ていられなくなった

ルビカーフィンは力の入らない足を無理矢理動かし走る

木々をかき分け走り続けるが

無理に走ったため急に力が抜ける


『っ!?』


転んでしまった

痛みなどは特に感じなかった

そして、起き上がる気力も無かった


ポツリ、ポツリと雨が降ってくる

その雨すらもルビカーフィンに当たる事はなかった




いつの間にか日がのぼっている

ボーッとする頭を動かし

昨日の出来事が気になったため

あの家に向かうことにした


昨日は無我夢中で走って来たのに

なぜだか道が分かった

スムーズに家へたどり着く

すると


「父さんと母さんも見殺しにするつもりかよ!?」


少年の怒る声が聞こえる


「あいつを生け贄にするんだったら俺を連れていけばよかっただろ!?」


『!?生け贄…??』


「なんで父さんは止めなかったんだよ!!なんで俺にしなかったんだよ!!なんで平気なんだよ!?」


「平気なわけないだろ!!!!」


父親が声を荒げる


「だがこうするしか無かったんだ!!それがこの村のシキタリだ!!予言により村から1人出すことは何千年も昔からしてきたことだ!!」


「なんであいつなんだよ!?なんで俺じゃないんだよ!!!!」


少年も負けじと声を荒げる


「貴方が賢いからよ…リヒト」


黙っていた母親が口を開く


「賢い??だったらそっちの方がいいだろ!?」


「だからよ!!貴方はあの儀式の意味を知ってしまう…そうなったら成功しないの」


「どうゆう意味だよ」


困惑する少年


「いずれ分かるわ…私はあの子の後をすぐに追う」


そう言い家から出ていってしまう


ルビカーフィンはなんとなく母親の後を追う


「すぐ行くからね……ごめんね。ルイちゃん」


『!?ル…イ??』


ズキッ


(また…この痛みか)


遠ざかる意識の中、目の前に居る女性の顔をしっかりと記憶に刻むのだった。







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