第4話 足跡

  最果ての町で平和を祈る老齢のシスターが十字架の前でひざまずく姿。

  待てども待てども来ない勇者の来訪をひたすら待つ卵の中のラーミア。

  遊び人はメタルスライムの鎧欲しさにカジノへ入り浸りうらぶれていた。


  数々の心打つ上映会が幕を閉じると、勇者の心に大きな変化が訪れていた。もちろん身体は痛みで声にならない悲鳴をあげたまま。


 「俺は今まで何をやっていたんだろう。勝手にやさぐれて、アル中で、最低のクズ野郎に成り下がっていた・・・」

 

 そう思いつつ勇者は気を失い、闇がやってきた。

 完全な闇が。


 

 目覚めると、朝日が洞窟の中にうっすら差し込んでいた。

 ちりじりになった元キングウィスキーの欠片たちが太陽の光を反射させている。

 あの悪魔のボスやモンスター達の姿はなく、いつもの見慣れた洞窟だった。


 「夢だったのか・・・いや・・・」


 ズキズキ激しい痛みが夢ではなかったことを証明する。

 

 「俺にはやらなくちゃいけないことがあったっけ」


 トンカチを置き去りにして木の棒をめんどくさそうに装備する。

 勇者は無精ひげを生やしたまま、重い足取りでおんぼろ馬車に乗りアリアハンを後にした。


 城下町では、あのトンカントンカントントンカン♪という音をめっきり聞かなくなったので、きっと勇者は酔って平原にでも出てしまい、一角ウサギにでも突き殺されたのではないかと噂になった。

 が、不倫騒動で話題になった芸能人がすぐ忘れ去られるように、数日で誰も彼の事を気にしなくなった。


 30年ぶりの“そして伝説へ”。

 

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最低な勇者を改心させた悪魔の話 よもぎもちもち @yomogi25259

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