第3話 すべては起こりということ

1. 「頭の中の声」は無くならない


自分が、ハリボテだと気付き、

それが「頭の中の声」をつかんで貼り付けたものだと分かった。


だけど、「頭の中の声」って無くなんなくない?


そう、無くなんない。


頭の中の声は、ただ勝手に湧き上がってくるもので、途切れることはない。


それが分ることは、喜ぶことだ。

「頭の中の声」が無くならないことに気付くということは、

「頭の中の声」が「あなた」ではないと分かってきた証拠だ。

無くならないものが、見えてきたようだ。


「頭の中の声」を流れるままにして相手にしないか、つかむか、

わたしたちにできることは、どちらかを選択することだ。



では、ちょっとチャレンジしてみよう。


今、何もしないでいる。

じっと、じっと、前を向いてじっと。


あなたがいるところがどこであれ、


目の前には何かが見えるだろう。

目を閉じればもちろん消えるが、目を開ければ見ようとしなくても見える。

何か音も聞こえる。

景色も音も勝手にそこに現れている。


それと同じように、考えや思い、感情も、ただそこに現れる(起こる)。

これを思おうとか、こう感じようとしなくても、思うし、感じることができる。


それをじっと眺めていると、

すべて、勝手に湧きおこり、流れ去って消えていくことがわかる。

消えてしまうものは、わたしたちではない。


現れた考えや思いや感情を、ただ眺め、流れ去るままにしたときと、

考えや思いや感情に、何か意見・判断を持ち、考え続けているときがある。

その違いだ。


誰かに何かを言われて悔しい思いをした、という経験をしたとしよう。

あの人にひどいことを言われた → 悔しい → 言い返せなかった 

→ 今度会ったらなんて言ってやろう、などと、

次々と頭には思考が浮かんで来る。


考えや思いをただ流せない時は、それをつかんでいる。

つかんでいるとは、主に

・ 同じことをずっと考えている

・ 思いや考えに準じる物語を作っている

などだが、

あの人に言われたことや、悔しい思いを、繰り返し、繰り返し考えている状態とか、

わたしの何が、あんなことを言われる原因なのだろうかなどと、言われたことにまつわる物語を作っている状態だ。


頭の中で繰り返されていることや、物語り作りに、

「あ、繰り返している」「あ、物語を作っている」と気づくと、

「あの人にあんなことを言われて悔しい」思いに関する考えが一瞬止まる。


自分の頭の中の声を、切り替えることのできる瞬間になる。


その時、自分が今どんなフィーリングを体験しているか、

そのフィーリングはどんな思考からくるか、に目を向けることができる。



景色や音はわたしに所有できないが、

考えや思い、感情は「わたしの考え」「わたしの思い」「わたしの感情」として、

わたしの所有物、わたし自身とみてしまう傾向が、わたしたちにはある。


だが、もう一度言うと、

考えや思い、感情も、ただそこに湧いて起こっただけだ。

「ふぅ~ん」と流せば、消え去っていく。

ちゃんと気付けば、つかまない限り、気付いた瞬間、消えていく。

消え去るものはわたしたちではない。


現に、多くのことを、そうやって消え去るままにして、わたしたちは生きている。



①意識し続けていること = 執着している 

②考え続けていること = 物語になって悩みに感じる  

③そんなに重大と考えて無いこと = 消え去るままにして、わたしたちは生きている。


①も②も、気付くことで、③になる。

①と②が、苦につながる。③は解放だ。


それなのに、無意識で生きている間は、ハリボテの癖で反応して、

「頭の中の声」(思考)のある特定のものに強く意識を向けて、

目を離せなくなるのだ。


これが、「つかんで貼り付けたものの集積」のハリボテが成長する仕組みだ。


だから、意識しよう。


・ ハリボテと気付く

・ ハリボテは、頭の中の声の中からつかんだものでできていると気付く

・ 頭の中の声は、起こっていて流れ去るものと気づく

・ つかまずにいることができると気付く

・ それは自分ではないと気付く


その気付きの意識で現実を見ると、ハリボテの中身が分かってくる。

中身に気付けば、それは流れ去る。


ただの起こりである頭の中の声をつかんだハリボテ、

ハリボテで生きている限り、本当の自分では生きられない。


頭の中の声は勝手に起こっている=思い通りにならないもの=苦だ。

ハリボテで生きるわたしたちは、その「思い通りにならない苦」を

つかんでいるのだ。

そして人生が「苦」になる。


ハリボテを脱ぎ捨てたとき、

わたしたちは本当の自分で生きる喜びを知ることになるだろう。




つづく





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