「働く」ということ。
そしてそれに似た「金を稼ぐ」ということ。
収入を得るという意味では同じであっても、捉え方や価値観は思いの外千差万別であり、社会人の方なら一度は思案したことのあることかと思います。
企業勤めが当然と思う人もいれば、フリーで稼ぐ道もある。
趣味が高じて稼ぎになることもあれば、働かずに効率良く稼ぎになることもある。
人の為と何かを作るのも、自分のためだけにただ稼ぐという行為を繰り返すのも、生活するという点では同じ結果をもたらすもの。
多様な職種が存在する現代では、何が特殊であるとも言い切れない。
正解か不正解かの確たる証明はなく、反論意見は個人の感情に帰結する。
この作品はそこにあるそれぞれの価値観を如実に表したものだと思います。
或いは、特殊と断じて思考から外した世界に、もう一度目を向ける機会になるかもしれません。
そうでなくとも、この作品で描かれたものは、色々と考えさせられる命題であることには違いないでしょう。
幸せの価値観や働き方の価値観というのは当然、人それぞれで変わってくると思います。
それはもちろんですが、価値観はその時代、時代によって、根底にある価値観の定義というものが変わってくるのでしょう。
貴族の生活がメインだった平安時代。戦いをする戦国時代。大量に物が作られ消費するようになった昭和、そして平成。
その時代のあり方によって幸せや働き方も変わってくるものだと思います。
そして平成も最後となり、新しい時代へと変わりつつある昨今、スマホ、インターネット、AI、ドローンなど、技術革新が目まぐるしく変化しています。
少子化や環境問題なども加わり、人々の価値観の変化が来ている時期なのだと思います。
この作品は、ほんとうに近い将来、起こる可能性がある事柄なのではないか、と思いました。
大変おもしろく、そして読後、考えさせられる作品でした。
時代の変わりゆく「今」、読んでほしい一作です!!
主人公は勤めていた会社を退職し、デイトレードで生計を立てる日々を送っていた。そんな彼とは対照的に、友人の山田は真面目に会社に勤め続け、「働かざる者食うべからず」の精神に生きていた。
社会に貢献すること。常に人と関わること。それが現代社会に属する条件であり、いかにそこに適応できるかで、その人の価値は決まる。それは間違いなく正義であり、山田もそう信じていた。
生き方は違えたが、悪し様に思う必要などない。お互いがお互いなりに、それぞれの人生を歩んでいく――はず、だったのだが。
正しい「社会人」としての在り方。人が幸せを感じられる条件。今の社会の中で、生きていく意味。私達が生まれながらに触れ続けている、現代の社会の「生きにくさ」を端的に描き出した意欲作です。
ぜひ、ご一読ください。