第四章 登場人物・用語解説


※第四章のネタバレを含みます








<登場人物>



菅良すがら

・女性 31歳

 玖玲葉の友人。大学が同じで玖玲葉の数年上の先輩であった。現在は看護師として病院に勤めている。プライベートではコスプレが趣味であるらしく、私服も派手。本当は甘ロリよりパンク系が好きらしいが、あまり似合わない。それでも気に入った洋服があるとつい買ってしまい、一度も着ないという悲劇が時々起きる。スチームパンクも好きだがやはり似合わない。ベビーフェイスのお姉さんである。



兵部ひょうぶ

 龍神を喰らった人間の生まれ変わりとして、村の人間から蔑視されている青年。腕に細長い痣がある。五歳の時に村へ引き取られた。十歳までは龍神の信者宅に居候していたが、その後は村の一番はずれにある小屋のような家で一人暮らしをしていた。子供から石を投げられたり大人から無視されたりと村人からはあまり好かれてはいない。だが兵部自身が悪人というより善人よりなので、彼に同情的な人間も多かった。しかしその感情よりも、龍神への信仰心のほうが高かったようである。その身に龍神の一部を宿しているということで、捧げ物が自宅に頻繁に置かれていた。

 本人は人懐こく、他者に寄りそうタイプの人間である。また他者を理解したいと願っている。誰よりも優しい青年は、歪んだ村の中でも寄のおかげで真っすぐに育った。寄のことを大切に思っているが、自分と一緒にいると村人たちから不審がられるため、あまり自分から近寄ろうとはしない。



より

 龍神を信仰する村に生まれた少女。五歳から十歳までは、引き取られた兵部も加えて家族四人で暮らしていた。明るく面倒臭がりで、心優しい女の子。村の事が好きだが、龍神のことは信じていなかった。それは兵部が傍にいたためである。兵部に好意を寄せているが兵部の遠慮が伝わって来るため踏み込めず、仲が進展しない。

 兵部の死後、生涯一人で過ごし、家庭を持つことはなかったという。まるで誰かの訪れを待つかのように。彼女は死ぬその瞬間まで、今度こそ大切な物を守りたいという願いを強く持ち続けた。



更科さらしな玖玲葉くれは

・女性 28歳

 奏繁の姉で眼科医。仕事には真面目で腕もいいが、私生活での奔放ぶりが欠点。学生時代につくった悪い友達がたくさんいる。そういった人間からの仕事もひっそりと請け負うので、裏の世界でも有名な眼科医となっている。実は射牒とは友達。

 大雑把でおおらか。自己中心的に思われがちだが弟を大事に思っている。家族愛が強く人情にあつい。が、言動が適当であるためそうとは思われない。弟である奏繁や友人の誡がどこか普通とは違うことには気づいているが、それは本人の問題として踏み込まない。他者との境界線をしっかりと理解している大人。だが助けを求められれば応える心の準備はできているあたり、人として甘い部分がある。




<用語>



◇龍神◇

 とある村で信仰されていた神。泉に住んでいたとされる。むかし人間に喰われてしまったが、いまでも村を見守っているとされる。泉の底には龍神の骨が沈んでいるというが誰も潜って確認したことはない。龍神を食べた罪人の生まれ変わりの話は、村にいつのまにか広まっていたもの。兵部が本当に罪人の生まれ変わりであったかは定かではない。しかし皮肉にも、兵部が自身を泉に奉げてから、続いていた地震は収まったという。



◇鏡の魔術◇

 魔術は“神秘”へ対する感情から生まれるエネルギーを使用する。しかし日本ではそのエネルギーは多く手に入らない。そこで大昔の術師が作り出したのがこの魔術である。人間の魂ではなく魂の記録ログからエネルギーを収集する術。取られた人間も、魂も傷つかない。その筋に詳しい者が絶賛するほど良心的かつ効率的なエネルギー収集魔術である。集めたエネルギーによって半永久的に自動運用されるもののため、エネルギーが切れない限り主がいなくても動き続ける。

 しかし療養型の病院が土地に建ってしまったことで収集できる魂の記録ログが極端に減り、エネルギー不足から暴走を始めていた。それこそが誡が鏡を壊す数か月前のことである。この魔術はもともと限界がきていた。誡が壊さなければ、病院の外にまで術の影響が漏れ出ていたことだろう。ちなみに奏繁の魔法によって魔術を破壊した場合、内にため込まれていた魂の記録ログが噴き出し、半霊体のような状態で上映を繰り返す怪現象が起きていた。魂の記録ログが存在することそのものは異常なことでないため、奏繁に消すことはできない。


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