第一章 登場人物・用語解説


※第一章のネタバレを含みます。





〈登場人物〉



陽苓ようれい かい

・女性 19歳

 本作の主人公兼ヒロイン。稀癌の作用により感情が薄い。依琥乃と出会う前は「人形」と称されていた。今では昔に比べて人間らしくなってきている。しかし未だ本人がきちんと識別できる感情は「怒り」だけ。それは幼少期、「怒り」だけに長い時間さらされ続けたためであると考えられる。

 県内の大学に通う。小柄で容姿は整っている。不愛想でも長身の同性から可愛がられるタイプ。つり目だが、本人がいつも眠たそうにしているため、むしろたれ目に思われがち。日常生活では面倒臭がりのダウナー系として周囲に認知されている。

 危険感知の稀癌を持ち、自身に降りかかるあらゆる危険を五感で感知する。この五感は本来の五感とは切り離されたもの。誡本人は感覚が二重に存在すると理解している。

 戦闘においてパワーはそれほどないが、俊敏性や機動力でそれを補っている。使用武器は二丁のハンドガン。このリボルバーと自動拳銃は師匠である祇遥ぎよう射牒いちょうから贈られたもので、本人が好んで使用しているわけではなく、種類すら把握していない。



更科さらしな 奏繁そうはん

・男性 20歳

 もう一人の主人公。誡と同じ大学に通う同級生。少し前に誕生日を迎えた。物心ついた頃から稀癌により二重人格だが、それを自覚したのは中学生になってからだった。二つの人格にはそれほど差異がなく、若干の個性が見受けられるようになった今でも判別は難しい。ちなみに容姿も身長も平均値。

 戦闘能力はからきしだが、大昔に忘れ去られた「異常を消し去る」魔法を使う。誡に好意を寄せており彼女が危ない目に遭うのは避けたいと考えている。しかし誡の戦闘力は正しく把握しているため、事態が悪化してから彼女に助けを求めることもしばしば。



◇レーゾン・デートル◇

・男性

 いつの頃からか上城町の「赤井廃ビル」に住み着いた「自称千年生きた吸血鬼」。「自称」まで含めて自称である。銀髪とサングラスがトレードマーク。日光浴しながら餃子を食べるのが日課。壊れた十字架をいつも胸に下げている。

 依琥乃の紹介でやって来た奏繁と出会い、後に師事してきた彼を受け入れ師弟となる。誡との初対面時には、彼女に脳天を撃ち抜かれたが普通に生きていた。正真正銘の化け物。人間という生き物を暇つぶしの道具ぐらいにしか考えていない。本来は人類と相いれない存在。



◇老人◇

・男

 かつては資産家であったが、妻の死を境に没落していった哀れな男。蘇りの研究に人生を捧げたが人間の一生では時間が足りないと気づき、不老不死へと研究の対象が移っていった。死の間際に呪いを生んでしまい魂を消耗していた。呪いの効果は、「魂を一定の場所に縛り付けること」。自分の魂を肉体に定着させることで、生前に近い思考能力を維持していた。だがそれも完全ではなくその思考は狂気に近いものであり、また自覚もしていなかった。

 二十五歳で結婚し、その五年後に妻が他界。以来、第一章の時間軸の約六年前に亡くなるまで、ずっと妻のことを想い続けた。享年七十三歳。




〈用語〉


稀癌きがん

 前世の強すぎる願いが今世で異能力として発現したもの。癌とは言うが治すことは出来ず、また、発現者は稀であるため詳しいことはなにも分からない。稀癌を発現した人間は「稀癌きがん罹患者りかんしゃ」と呼ばれる。魂に根差した特異な能力のため、罹患者の精神を歪めてしまう場合がほとんど。誡の「未感情」や奏繁の「無個性」もその一種。だいたいは精神異常として歪みが生じる。

 稀癌の力は多種多様で類似性はない。あらゆる法則を無視した超常的な力である。前世の自分が何を願ったかによって力の方向性は決まるが、罹患者本人にその願いは分からない。



◇魔術・魔法◇

 超常現象に対する信仰心が集まってできた感情エネルギーを利用し奇跡を起こす術を指す。魔術や魔法を使う人間は術者と呼ばれる。

 それなりの資質がある人間は呪文を唱えれば魔術を使うことができる。一方魔法には個別で使用者との相性があり、いくら術者の素質があろうと使えない魔法は決して使うことができない。レーゾン・デートル曰く、魔術は威力が弱い分、融通の利きやすい「異常を放出する」術。魔法は威力の強い分、融通の利かない「異常に塗り替える」術とのこと。



◇呪い◇

 人の負の感情が生み出す超常的な力。使用者の魂をエネルギー源とするため、使う人間の魂をむしばみ最後には跡形もなく食い尽くしてしまう。呪いは使用者が死に、生まれ変わっても魂にまとわりついたまま。本人の意思でも完全に消すことはできず、専門の術者に解呪してもらう必要がある。効果は生み出す人間の意思によるが、その規模は魔術以上、魔法以下の領域を出ることはない。

 昔は呪いの生成や解呪を本業とする人間もいたが現代には残っていない。そういった人間は「呪術者」と呼ばれ忌み嫌われていた。



◇十字架◇

 レーゾン・デートルが首から下げる壊れた十字架。現在は片割れを奏繁が所持する。大昔人間から贈られたものだとか。レーゾン・デートルが術に必要なエネルギーを貯蓄するのに利用している。

 術に使用するエネルギーは信仰心から生成される。同じく信仰の対象である十字架などは、そのエネルギーを蓄える入れ物に丁度いいのだとか。

 半分になってしまったといえど、すでに相当量のエネルギーが貯められており、結界などによって外界から隔絶されても術を使うに十分な量。むしろ奏繁一人では一生かかっても使い切れないほどのエネルギーが貯蔵されているという。現在はレーゾンにより退魔の力が施され、奏繁のお守りになっている。



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