きらきらとひらひら

花祭暁平

きらきらとひらひら

きれいなおはながさいているはなばたけには

ひらひらとちょうちょがあそびにきます

みんな、きれいなおはながだいすきなのです


だけども、あるいっぴきのちょうちょだけ

はなばたけにはいきませんでした

「おはなもきれいでだいすきだけど

 もっとだいすきなものがあるんだ!」


いっぴきのちょうちょは

くらくてこわいもりなかをすすんで

くらくてこわいどうくつのなかはいっていきました


ちょうちょがもっとだいすきだったのは

どうくつのなかにひかる、いろとりどりのほうせきたち

「きんいろ、ぎんいろ、みどり、あかあお

 みんなきらきら、ステキでしょ!」


だけども、そのちょうちょをたほかのちょうちょたちはいいました

「くらくてこわいどうくつに、ちっぽけないしころをにいくなんて、へんなちょうちょ」

「あんなはほっといて、わたしたちは、はなばたけにいきましょう」

ほうせきがすきなちょうちょは、いつしかひとりぼっちになってしまいました


「どうしてみんな、あんなことをいうんだろう

 ほうせきだって、あんなにきれいなのに……そうだ!」

ほうせきがすきなちょうちょは、なにかをおもいついたようです


くるもくるも、ちょうちょはもりなかのどうくつをたんけんしていました

はなばたけにもあそびにこなくなって、いつしかほかのちょうちょたちは

ほうせきがすきなちょうちょのことをわすれてしまいました


あくる、どろだらけのちょうちょがはなばたけにやってきました

ほかのちょうちょたちはびっくりしていいました

「あなたはだあれ?」


せたいものがあるんだ」

どろだらけのちょうちょは、ほうせきがすきなちょうちょでした

すこしいやそうに、ほかのちょうちょはこういいます

「きれいじゃないちょうちょは、あっちにいってよ!」


しかしほうせきがすきなちょうちょはあきらめません。

「みんなにぜったいせたいものがあるんだ。ぼくのだいすきなものなんだ。だからおねがい!」

ほかのちょうちょたちは、すこしだけ、そのちょうちょのだいすきなものをたくなりました。

「そんなにいうなら、せてちょうだいよ」


くらくてこわいもりのおく

くらくてこわい、おおきなどうくつのなか

まっくらやみでなにもえません

「どこにあるの? あなたのだいすきなものは」

「もうすぐだよ」


そのとき

ちょうちょたちののまえで、なにかがひかりました

かべいちめんに、おおきなほうせきがずらりとならんでいます

ちょうちょたちよりずっとずっとおおきくて、きらきらしたほうせきです

ちょうちょたちは、それををかがやかせました

「とってもきれい!」


ほうせきがすきなちょうちょは、すぐににんきものになりました

「ぼくのだいすきなものをみんなにおしえてあげたら

 もうひとつ、もっとだいすきなものがつかったよ!」


ほうせきがすきなちょうちょは、だいすきなほうせきにかこまれて

もっとだいすきになったほかのちょうちょたちにかこまれて

うれしそうにわらっていました


おわり

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