第13話 騒音問題 その2
騒音はどこの大家さんも抱えている問題だ。だが、管理会社の魔女、真莉愛が言うには、魔法によって防音効果はバッチリだと言っていた。
魔法の効果を鵜呑みにするわけにはいかないが、購入前の説明でもトラブルはない。武さんの家にいるガルムは摩訶不思議な空間(下駄箱)に居る。
とりあえず、真莉愛に聞いて見ることにした。
「ちょっと聞きたいんだけど」
「ん〜、何ですか、こんな朝っぱらから」
寝起きを起こされたのか、携帯に出た真莉愛の声は不機嫌そうだった。
俺は真莉愛に良子から聞いた事を話した。
「武さんの家の犬は大丈夫だよな?」
「うーん、多分、大丈夫だと。普段は下駄箱の中に居ますから、心配なら明日の夜、家賃をもらいに行く時に様子を見てはどうでしょうか」
そうだった。武さんはいつもの家賃回収日には都合がつかないから日にちを変えていたんだった。
「あぁ、そうだな。じゃ、明日一緒に行った時に聞いて見ることにするよ」
次の日の夜、俺と真莉愛は武さんの部屋に向かった。
武さんの部屋に入ると凶悪そうな顔の犬が口からチロチロと火を出しながらこちらにやってきた。
「アチッアチッ」
「コラ、ガルム。コッチに来い」
武さんがガルムを引き戻す。
「すんません、コイツ、最近、落ち着きがなくて」
「吠えるんですか」
「うーん、たまにですかね。魔法の障壁が張ってあるから近所には聞こえてないはずだけど」
「因みに、犬が20匹泣いても大丈夫ですよ」真莉愛が自信たっぷりに胸を張る。
「散歩も行けないから大変だよな」
俺はガルムが少しかわいそうになった。
「連れて行くよ 」
武さんがシレッと答えた。
「火を吐いたらどうするんですか」
「安心してや。ちゃんと魔法で火を出さないようにしてから連れ出してるで」
俺は胸をなでおろす。
「誰にも迷惑かけないよう、気をつけてるで。ストレスも貯めさせないよう、夜中思いっきり外で遊ばせてるし」
「夜中に?」
俺は少し気になった。
「大丈夫、大丈夫。今日これから連れて行くけど、一緒に行く?問題無いこと見せたいし」
俺と真莉愛はガルムの散歩に同行することにした。
アパートから歩いて10分の所にある公園に着いた。公園に来るまでにガルムは吠えるそぶりも見せなかった。
「ほらっ、走ってこい」そういうと、武さんは首輪に付いているロープを外してガルムを放し飼いにした。
「えっ」真莉愛も俺も驚いた。
サラリーマン大家と魔界アパート 岩上尚行 @sumauo
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