ある地域で噂の都市伝説

ある地域で噂の都市伝説5

■6月8日　午後8時00分　森本美奈

　夕食時に風花はまた変質者の話をした。2日前に聞いた話よりも情報が増えていて、恐らくそれらの情報は子供たちによる作り話ではないかと思うが、念のため注意しておかなければならない。

　風花の話によると、ある人は白い服を着ていたと言い、またある人は血だらけのコートを着ていたと言う。

　さらに同じクラスの男の子グループが、やはり4丁目――つまりこの近所――の路地裏で口裂け女かどうか分からないが怪しい女を目撃したと言う。

　男の子グループによると、その女は口裂け女の特徴と同じく、長い髪にマスクをしていたようだ。男の子のひとりは、マスク越しでも結構美人だと思うと言っているらしい。

　また別の男の子によると、その女はボソボソと独り言を言っていたようで、耳を澄ませ聞くと「皆殺してやる。皆殺してやる」とつぶやいてたと言う。

　このところ世間的にも小学生を狙った変質者による事件が多発しているので気をつけておかなければならない。

　そうだ。今日の午後の出来事も念のため浩樹に伝えておこう。

　今日の午後、部屋の掃除をしている時にリビングの電話が鳴ったのだ。電話を取り「もしもし？」と話したが、相手は無言のままだった。ただ静かに息をする音だけが聞こえ、もう一度「もしもし？」と尋ねると、ガチャリと電話が切れた。

　無言電話だったのだ。言葉こそ話さなかったが、その息遣いから電話の向こうの相手は女ではないかと感じた。

　最近、口裂け女の話をしていたから、先入観からそう感じさせたのかもしれないが。