ある地域で噂の都市伝説4

■6月7日 午前9時30分 森本風花


「昨日の変質者の話、お父さんに話したら、口裂け女って言うらしいよ」

 そう言うと亜里沙ちゃんは目を(元々丸い目だけど、さらに)丸くして私を見返してきた。

「亜里沙のうちも、ママとパパが口裂け女だって言ってたよ!」

「やっぱり! やっぱり口裂け女なんだよ」

「やだ、どうしよう会っちゃったら」

 亜里沙ちゃんは首をぶるぶると振った。

「口裂け女に会ったら、ポマードって3回唱えると逃げられるんだぜ」

 プロレスごっこをしていた男子たちが話に加わってきた。

「馬鹿、それは初代口裂け女の話だろ。二代目口裂け女にはリップクリームを6回唱えるんだよ」と他の男子が話す。

「二代目って?」きょとんとした亜里沙ちゃんが尋ねる。

「初代口裂け女によって口を裂かれた二代目の口裂け女さ。父ちゃんが話してた」

 進藤くんが亜里沙ちゃんに自慢げに話した。私も昨日お父さんから聞いた話を男子たちに話した。

「私のお父さんは口裂け女の娘じゃないかって言ってたよ。口裂け女は今はおばあちゃんぐらいの年だから年齢的に娘だって」

「へぇー、それも面白いな。なぁ今日の夜にでも実際に口裂け女がいるか確かめに行ってみようぜ」

 進藤くんは悪巧みをする顔で誘ってきた。

「やだ、こわいよー。それに危ないから変な人には近づいちゃダメなんだよ」

「いいじゃんか。おまえらはいいよ、俺らで確かめてくるよ」

「やめなよ、危ないよ。先生に言うからね」

「ちぇっ。森本はうっせぇな」

 男子たちは「行こうぜ」と言って、他の男子グループのところに移動した。



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