172 - ロボっちゃダメよ! ロボ我慢選手権
「“お手伝いアンドロイド、一家に一台”なんて言われてたのはもう十年前の話ですよ、奥さん。今はもう、一人に一台の時代!」
「いりませんて」
「待って話だけ。話の先っぽだけでも」
「うちにはいらないんで」
「それ! そこなんですよ。見たところ、どうやら一台もないご様子。もしやロボアレルギーの方がいらっしゃるのでは?」
「……まあ、はい。10歳の娘が」
「あ~、やっぱり! 最近多くてですね。でしたら大チャンスですよ、奥さん。じつは我が社では、ロボアレルギーのお客様にもご安心して使っていただける製品をね、作っておりまして」
「へえ、安心って?」
「まず金属アレルギーとゴムアレルギーに配慮して新しい素材を使ってます。肌部分だけでなく、中身もすべてそうなんですよ」
「ふーん、ほかには?」
「合成音声がいやだというお客様に配慮して、より人間らしい喋りになるシステムを積んでおります」
「ふーん、ほかには?」
「……ちなみに娘さん、どういった種類のロボアレルギーなんでしょう?」
「娘はロボっぽさを感じるだけで発作が出てしまうの。ロボ自体は好きなのにロボアレルギーなのがかわいそうで。アレルギーが出ないロボならぜひ買ってあげたいわ」
「なるほど~! ご興味を持っていただきありがとうございます。大丈夫ですよ、我が社の新型アンドロイド“ロボジャナイサーZ”ならきっと娘さんに寄り添う一台となるはずです。よかったら試していただけますが」
「そうね、ちょっとだけ試してみようかしら。そのかわり娘に発作が出たらすぐやめさせますからね」
「はい、それではすぐ準備いたしますね」
% % % %
「わーい、ロボだロボだー! うれしいな~!」
[はい、というわけでですね。さっそく試してみましょう。私と奥さんは別室でロボジャナイサーZの内蔵カメラからチェックということで]
[もう一度言うけど、発作が出たらその時点で終了ですからね]
[問題ありませんよ! ロボジャナイサーZ、まずは娘さんにご挨拶を]
「こんにちは、わたしの名前はロボジャナイサーZです。あなたの名前を教えてください」
「うう、名前がロボっぽいよぉケホケホ」
[あっ発作が]
[ストーーップ!! 名前チェンジ! 今日からサトシ!]
「こんにちは、俺サトシ! きみは?」
[口調は前のままでいいわ]
[はい]
「あなたサトシって言うのね。わたしはアイ!」
「アイ――AIと書いてアイ、ですね? いい名前です」
「うう、AIってロボっぽいよぉケホケホ」
[あっ発作が]
[自分の名前でダメなの!? ストップ
「ねえ、おつかいがあるの。一緒に来てくれる?」
「もちろんです」
[アイには夕飯の買い物を頼んでおいたの]
[これは
「近所のスーパーに着いたよ!」
「ここが【スーパーマーケット】ですか、初めて来ました」
「庶民の生活を初体験する様子がロボっぽいよぉケホケホ」
[あっ発作]
[サトシ、
「スーパーとか知らないけど、たぶん全商品買ったぜ」
「サトシ、かっこいい!」
[そんな男はダメよ、アイ]
[ちなみにそういう男から守る機能も付いていますので年頃になったらぜひ]
[いいわね、夫に買ってあげたいくらい]
[…………あっ、アイちゃんが野菜コーナーに行きましたよ]
「うーんと、じゃがいも3つと、にんじんが2本……あっ、玉ねぎも2個。あー、また高くなってる。お金、足りるかな?」
「3700円のじゃがいもが3、4900円のにんじんが2、9400円の玉ねぎが2。小計39700円に先月25%から28%に上がったばかりの消費税をあわせてしめて50816円です」
「うう、計算が早いのロボっぽいよぉケホケホ」
[あっ発作が]
[計算もダメなの!? サトシ、
「だいたい3万円くらいだラッシャイ」
「わあ良かった、じゃあ足りるね!」
[アイにはWAONカードを持たせてあるから大丈夫よ]
[WAONカードには数百年の歴史があるから安心ですね]
「わ、レジ並んでるね。うーん……あっ、あのレジだけすいてるよ!」
[研修中のレジかしら]
[サトシ、そのレジがどうして空いてるか解析してくれ]
「了解――解析完了。地球に留学したてのノペノペ星人バイトが日本語に苦戦している様子です」
[星間留学生のレジだったのね。ちゃんと買えるかしら]
[ご安心ください。ノペノペ星語の翻訳機能も完備しており……翻訳機能ってロボっぽいですかね?]
[とてもロボっぽいと思うわ]
[サトシ、レジ列を変更! 隣のベテランおばさんのレジへ! そこはたくさん並んでいるように見えるが進みも早い!]
「了解」
「ねえ、さっきからだれとお話してるの?」
[ロボより先にあなたのほうが学習してきたわね]
[営業努力をしないと仕事をロボットにとられますので]
[21世紀の日本人みたいに勤勉な人ね]
[あっ、会計が終わったようですよ]
[アイ、ちゃんと帰れるかしら]
「わーん、家までの道がわかんなくなっちゃったよー!」
「大丈夫です、アイ。現在地から家までのルートを検索します」
「うう、ルート……検索……くるしいよケホケホ」
[あっ発作]
[ストーーーーップ!! サトシ、ルートも検索もストップ!!!]
[ここは家のすぐ裏の道ね。迎えに行きましょう]
% % % %
「というわけで
「ロボたのしかった!」
「うんうん、そうだね。お母さまはどうでした?」
「そもそもの質問をしていいかしら?」
「もちろんでございます」
「このお手伝いアンドロイド、荷物持ち以外でなにか役に立った……?」
「あっ…………、ということは、ご購入のほうは……?」
「いらんて」
☆
NEXT……173 - 思い出のスタードルフィン
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885440692/episodes/1177354054885618865
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