146 - 恋結鉄拳ツナイダーロボ
――感情というエネルギーがある。それは持つ者の精神を揺さぶり、時として普段とはかけ離れた力を発揮することもある。
そして今、その「感情エネルギー」は
人類のように、感情を持つ知的生命体が発する「負の感情」をエネルギーとし、地底に潜む古代恐竜を媒介にして発現する巨大怪獣――「
人々は今、その脅威に晒されており――かの魔獣が相手では、防衛軍の兵器もまるで通用しない。そこで軍は、兵器開発の権威と名高い
やがて彼は、怨厄魔獣と同じ「感情エネルギー」を動力とする機動兵器の開発に着手するのだった――。
◇
「
放課後の屋上。赤銅煉はある日突然、学園のアイドルである
「……えと、十文字さん。夢のように嬉しい話だけど、ちょっと待って。そういうことを女の子が言うのは良くないと思う。物事にはまず、順序というものが……」
「あっ……! ご、ごめんなさい! 実は、これには深い訳がっ……!」
「訳?」
すると、途端に結は顔を赤らめ、手を振り事の経緯を語り始める。元々それほど接点もない上、高嶺の花であるはずの彼女から唐突に告白された煉としても、それは興味深い内容であった。
◇
――十文字博士の娘である彼女は、父が開発した防衛軍の新兵器「ツナイダーロボ」の機動キーに相当する、
怨厄魔獣が恐竜を媒介に感情エネルギーで怪獣化するように、「感情をエネルギー化できる超能力」を先天的に有していた彼女が、機動キーとなり媒介である巨大兵器の動力となる。結は、その為の改造手術を受けているのだ。
しかし、人類の為とは言え機械の体になったことで、彼女は学園のアイドルと持て囃される一方――誰にも本当の自分を打ち明けられずにいた。
そんなある日。ふと、階段を踏み外して転んだ自分を、颯爽と受け止める男子と出逢ったのだ。
100kg以上の体重になる機械化ボディを、まるで普通の女子を扱うかのように、お姫様抱っこで受け止めて見せた彼――赤銅煉に。自らの体のことで悩んでいた結は、瞬く間に心を奪われてしまったのである。
『私が……重くないの?』
『女の子が、重いわけないだろ?』
『……!』
以来、彼を想う際に発生する感情エネルギーは、過去最高の値を叩き出していたのだ。
そしてこの情報を聞きつけた博士は、煉を
◇
一連の経緯を知った煉は、暫し考え込むように腕を組む。そんな彼の姿に罪悪感を覚えた結は、申し訳なさそうに目を伏せた。
「……ごめんなさい。私のせいで、こんなことに……やっぱり私、お父様にお願いして、この件をなかったことに……!」
「いや、やるよ。初めて俺を好きと言ってくれた子が、助けを求めてるんだ。……彼氏ヅラ、させてくれないか。
「煉君……!」
だが、改造人間だろうと彼女を1人の女として見る煉は、その光景を良しとはせず、結の為に戦う意思を表明する。そんな彼の凛々しい表情に魅入られ、少女は感涙を浮かべるのだった――。
◇
――それから僅か1ヶ月後。東京郊外の、とある山中。
十文字科学研究所での訓練を終えた煉は、ツナイダーロボの
胴体と比べて異様に太い両腕を持つ、接近戦に特化した巨大
「煉君、頑張りましょうね! この戦いに勝てば、お父様も交際を認めてくださいますし!」
「あぁ、そう、だな……」
「……?」
結の身体はいわば操縦系統の代わりでもあり、操縦席に座る煉とは向かい合う格好になっている。彼女の両腕は操縦桿の役割であり、恋人繋ぎのように煉と両手の指を絡め合うことで、操縦可能となるのだ。
全長18mにも及ぶ真紅の鉄人の中で、煉はなんとも言えない表情を浮かべる。
「……あの、結。さすがにそうやってガン見されると流石に気が散るというか……」
「ご、ごめんなさい。煉君の凛々しい瞳が余りにも格好良くてつい――!?」
だが、
『ヴラヤマァー!』
独特の咆哮を上げて、魔獣が突進してくる。それは
「――汚い手で、結に触るなッ!」
その絵面が煉の怒気に火を付け、ツナイダーロボの鉄拳が唸る。真紅の拳を顔面に受け、魔獣は転倒するが――反撃の火炎放射を仕掛けてきた。
煉は咄嗟に2本の剛腕で防御するが、火炎の熱はじわじわとコクピットに及んでくる。
『ハゼロー! モゲローッ!』
「くッ! 結、ケガはないか!?」
「は、はい!」
このままでは、結にもダメージが及んでしまう。
「……結ッ!」
「煉く――んうッ!?」
煉は素早く結の唇を奪い、舌を入れ込む。この濃厚なキスは、彼女を一気に蕩けさせ――凄まじい力をロボに齎すのだ。
紅い巨体がさらに赤熱し、ロボは指を絡ませ合うように両手を組む。そして、その両拳を高く振り上げ――
「ラブル! スレッジハンマーッ!」
『バクハツシローッ!』
煉の絶叫と共に、魔獣を頭から打ち砕くのだった。魔獣は怨嗟の断末魔を上げると、瞬く間に爆散四散し――戦いは終焉を告げる。
「やった……! 俺達やったんだ、結! ……結?」
「あ、あぁぅ……煉君の顔、まともに見れません……」
だが、歓喜の声を上げる煉に対して。手を離して顔を隠す結の耳は、ツナイダーロボのボディよりも赤くなっていたのだった。
――かくして、
頑張れ! 爆ぜろ! 我等のツナイダーロボ!
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