126 - 胸攻神姫ビキニードG!

 わたしは絶体絶命のピンチだった。

 王宮を襲われ、さらわれたのだ。

 将軍や衛兵は蹴散らされ、かつて偉大な英雄王だった父も殺された。

 そして今、国境の朽ちた砦に閉じ込められている。

 第三王女、つまり御姫様おひめさまだから、さらわれるのはわかる。

 でも、隣で豪快に笑うのは、悪の魔王なんかじゃない。


「ガッハッハ! どうしたあ? さっきまでの威勢は? ああ?」

「カシラァ! 御姫様はビビってんスよぉー!」

「んだんだ、かわいそうに震えちゃって……ウヒョー! いいニホイ」


 ちょっとやだ、汚い顔を近付けないで。

 でも、周囲の手下達が慕う男は、強い。何故なぜなら……粗野で下品な巨漢は、その人ありと言われた竜騎士りゅうきしウッホバッハ・ドルクール。

 そう……世はまさに大騎士時代だいきしじだい

 108人の騎士がしのぎを削る戦国乱世なのだ。

 聖騎士、黒騎士、魔導騎士に盾騎士、重騎士……そして、竜騎士。

 魔王がはびこる暇さえ与えぬ、この大陸の覇者達だ。


「さて、御姫様。へへ……助けはこねえ、そろそろいい返事を聞かせて欲しいねえ」

「……口が臭いわ。騎士なら紳士らしくふるまったらどう?」

「ハッ! 口の減らねえ御姫様だ! なあ、みんな!」


 わたしの長い金髪を手に取り、ウッホバッハはべろりと舌で舐めた。

 最悪、無事に帰れたら髪を切ろう。

 この時点で貞操は無事だが、純潔を多くを汚された気分だった。

 そして、これからいよいよ本格的に陵辱されるのだから。


「御姫様は下の毛も綺麗な金髪かなぁ? じっくり拝んでやろうじゃねえか!」


 ドレスが引き裂かれ、わたしは汚れた床に押し倒される。

 必死に両脚を閉じて抵抗するが、厳つい手と手が両膝を掴んで、乱暴に股を開かされた。

 絶望を感じた、その時……不意に凛とした声が響く。


「よぉ、大将……派手にやってくれたじゃねえか」


 誰もが武器を手に振り返る、その視線の先に……細く小さな人影。

 そこには、一人の騎士が立っていた。

 年端もゆかぬ少女、わたしよりずっと年下に見える。褐色の肌も顕なビキニアーマー。真っ白な髪をツインテールに結って、背には大剣を背負っている。

 なんて凛々しい……まるで救いの熾天使セラフか、戦乙女ワルキューレか。

 わたしは直感した。

 この騎士様は、わたしにとっての福音になると。

 逆に、ウッホバッハとその一味は声を尖らせる。


「何だぁ? へっ、女かと思えばまだガキじゃねえか。消えな」

「へぇ、大将。俺があの、騎士殺しの姫騎士ひめきしって名乗っても……そんな口が叩けんのか?」

「なっ! ……騎士殺し。あの、姫騎士ティン・ティータ!?」

「おうっ! 悪趣味なパーティは終わりだ……姫さんは返してもらうぜ」


 そして、風。

 あっという間に背の剣を振るって、騎士様は悪漢達を吹き飛ばす。

 ひるんだウッホバッハとわたしの間に割り込み、背でかばってくれた。ティン様……ああ、姫騎士ティン・ティータ様! なんて素敵なのかしら。雄々おおしく猛々たけだけしく、そしてしなやかな肢体。くびれた腰、針金のような細い脚。……胸はないけど、その不思議な魅力にわたしはうっとり。

 でも、ほうけている場合じゃなわね。


「ティン様! 気をつけてくださいまし。奴は竜騎士、つまり――」

「そういうこった! 来ぉい! 我が下僕しもべっ!」


 瞬間、廃墟のような砦の天井が吹き飛んだ。

 夜空の月に、巨大な竜の影が浮かび上がる。

 そう、竜騎士は……竜を飼い慣らし、使役する。その背に乗って飛べば、無敵の力を発揮するのだ。

 だが、ティン様は物珍しそうに目を細めて、そして笑った。


「トカゲ風情がよぉ……しゃーねぇ! おい、姫さん!」

「は、はいっ!」

!」


 ティン様は突然、薄い胸を覆う小さなビキニを取り外した。

 顕になる乳房は……あ、あら? 真っ平ら……というより、骨格が、あらら?

 そう、

 よく見れば、確かに股間にささやかな膨らみがある。


「いっ、いやああああ! おっ、おおお、男っ!?」

「おいおい、そんなに嫌がるなよ。それじゃあ、行くぜっ!」


 ティン様は、有無を言わさずビキニアーマーを、わたしの胸に押し当てた。瞬間、シュン! とサイズがわたしのGカップにフィットし、広がり変形する。

 その時、わたしは不思議な声を聴いて全身が広がるような錯覚を覚えた。


『PRINCESS CONNECT!! SIZE"G"……BIKINI ON!! LET'S BEGINNING!!』

「おっしゃあ、行くぜ……起動っ! 胸攻神姫きょうこうしんきっ、ビキニードG!」


 ちょ、や……やめてっ!

 わたしは信じられないことに、ビキニアーマーを着た巨大な神像へと変身していた。ガラガラと崩れ出す砦の上で、夜空へと立ち上がる。

 ティン様の声は、鋼の装甲に覆われた胸の奥から響いてきた。


「覚悟しやがれっ、竜騎士ウッホバッハ! 砕けぇ、プリンセスッ、ナッコォーッ!」

「わわっ、わたしの右腕がっ!」


 わたしの右腕が火を吹き、拳を握って飛び出した。

 肘から先が、星空を舞う巨竜へと放たれる。


「ガッハッハ! 姫騎士ティン! それがお前の力……姫に乗る力か!」

「待って、わたしの右腕! 待ってーっ!」

「安心しな……左腕もっ、あんだよぉっ!」


 今度は左腕が同じように発射された。

 一撃目を避けて羽撃はばたく竜の脳天を、わたしの左拳が木っ端微塵に粉砕する。

 ビシャリと粘度の高い血が周囲に撒き散らされた。


「おっしゃあ! ヘヘッ、流石さすがGカップ! 強ぇぜ、ビキニードG!」

「あわわ……あ、あの、ティン様」

「おう、両腕はほら、戻ってくるからよ。あとは王宮から迎えが来る。安心しな、姫さん」


 それだけ言って、わたしの胸の谷間から小さなティン様が出て来る。

 違う、わたしが大きいんだ。


「へへ、国に帰んな。じゃ、あばよっ!」


 ティン様は飛び降り、指をパチン! と鳴らした。

 それで、わたしの無駄に大きな胸を覆っていた、あのビキニアーマーが外れて小さくなる。それは光となって、ティン様の平らな胸に戻ると……そのまま、偉大な勇者様と共に去っていった。

 だんだん小さくなりながら、見送るしかできないわたし。

 ああ、そうか……この状態、ティン様が乗ってないと動けないんだ。

 そして、もうティン様は行ってしまうのだ……わたしを救って乗りこなし、乗り捨てて行ってしまうのだ。

 わたしはこの時完全に、身も心も姫騎士ティン様に乗っ取られてしまったのだった。


NEXT……127 - 次元機神センチュリオン 最終話「次元を超えた絆」(Aパート)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885440692/episodes/1177354054885554923

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