075 - 甲鉄械テッカイン 第2話「コール!絆の力、最強無敵のスーパーテッカイン」爆風械獣ランチャロス登場
「テッカイ?!」
「大丈夫だ、テッペイ」
大地が揺るぎ、砂埃が巻き立つ。倒れ込んだロボットは見上げる少年を安心させるように、声音に絶えぬ戦意とあらん限りの優しさを含んだ。巨木のような腕を地に突き立て起き上がるが、しかし僅かなぎこちなさが垣間見える。言葉と裏腹に、余裕は如何程も無いようだった。
『テッペイくん、合体だ!』
少年の腕に巻きつけられた腕時計型多機能デバイス「
「
『あの敵は強力すぎる! テッカイでは……スーパーテッカインに合体するしかない』
「でもっ」
蒔島博士は焦りを過分に含んで語気を強める。しかしテッペイ少年は、それを実行することができない。その一歩が踏み出せない。
「テッペイ」
少年の葛藤を不意に打ち破ったのは、頭上から降った声だ。テッペイはハッと顔を跳ね上げる。
「テッペイ。情けないが、このままでは博士の言うとおり、あいつには勝てない」
「でも、まだ一回も成功してない! こんな土壇場で失敗したら、テッカイが……!」
テッカイは器用に微笑んで、テッペイへの全力の信頼を示した。
「テッペイ、君の勇気が、私という人格を生んでくれたね。今は私がその恩を返す時だ。今、君を守れるのは私だけで、私を守れるのはテッペイ、君だけだ。私はテッペイを信じている」
「っ!!」
ミサイルが迫る。テッカイは両腕をクロスして、身を挺して背後のテッペイを守った。爆炎があたりの空気を熱して、吹き荒れた突風が少年の髪を揺らす。
「……分かったよ、やろうテッカイ。合体だ!」
「テッペイ!」
少年は腹を括った。テッカイの声音が喜色ばむ。心は通じた。それなら後は決まっていた。
『テッペイくん、合体コードは覚えているね?』
「もちろん! 行くよ、テッカイ!」
「おうっ!!」
テッペイ少年は少しだけ息を吸って、I-コンの輝く右手を高く大空へ突き出した。そして空気を震わせるような大声で、あらん限りの覚悟と勇気を込めて叫ぶ!
「コールッ! 合体コード『スーパーテッカイン』……メタルアップ!!」
「了解ッ! メタルアァップ!!」
テッカイの復唱が空間を揺るがした。機械に本来宿るべくもない感情の爆発が、その咆哮聞くものすべての心を震わせたのである。
さて、スーパーテッカインの合体は、本来ならば実時間で百分の一秒に満たない間に完遂される。ここでは特別に、その合体プロセスの全貌を諸兄に公開するとしよう。
太陽を背にテッカイが跳ぶ。高々と飛び上がった彼の体は、胸の
テッペイ少年の危惧はしかし杞憂に終わった。合体シーケンスは完璧を上回る完璧さで推移する。これは二人の信頼と結束が生んだ奇跡か。いや、必然である。人の心もつテッカイは、机上計算を軽く凌駕した。
TCS内の空間が歪み、頭上に青黒い影が現出する。すわ敵か、いや違う。蒔島研究所から亜空転送されたサポートメカ、雄々しき鷲を
テッカイコンドルは翼を折り畳み、腹を見せるように直立する。腹部が左右に割れて、さらに伸長展開して一対の巨大な腕を形作った。機首が空いたスペースに倒れ込み、相対者に威圧感を与える眼光鋭いレリーフと化す。上半身の完成だ。
次いで足元に現れたのは猛々しい猪を模る鉄錆色のテッカイボア。それは頭部、左右胴体に3分割し、胴体尾部が展開して人の足首を形作る。背中に納まっていた大腿部が展開して脚部の完成だ。頭部はそのまま堅牢な盾となる。
上半身と下半身が完成し、テッカイの上下を挟み込むように配置される。テッカイが変形シーケンスを開始した。頭部が胴体内に格納され、胸の前で組んだ両腕をさらに前へと突き出すことで肩ごと前方に腕が伸び切る。上腕の装甲が展開し下腕部をその中に引き込んで、短くなった腕はそのまま倒れ込んでロック。肩装甲が展開して胸部のT結晶を守るリアスカートを形成する。ここで正中線を軸に180度前後反転。
次いで脚部が股割りの要領で開かれ、水平位置に達すると腰ブロックが正中線で分割し、さらに跳ね上げ垂直位置で腰ブロックがロック。脚部のみ天地逆転して四股を踏む力士の似姿となる。〆に腹部が上体に引き込まれ、ついに肝心要の腰部が完成した。
スーパーテッカインのパーツは揃った。それらはテッカイを中心に引き合い、激しい擦過音とスパークを散らしてドッキングする。まず亜空張力で引き寄せられたパーツは接触と同時にドッキングベイを開放。アンカークランプが噛み合いシリンダー状のドッキングボルトが接続され、それぞれが回転し引き込まれることで合体が完了する。
ここまで0.008秒。
しかし、そのわずかな隙を逃す敵ではなかった。無慈悲に放たれたミサイルがテッカイに殺到する。直撃、爆炎が弾け、もうもうと煙が舞う。危うく吹き飛ばされかけたテッペイ少年は、しかし大地に食らいつき縋るような眼で空を見上げた。
煙が晴れる。いや、払われた。
現れたのは、太陽を鈍く照り返す黒鉄の巨体。その名に恥じぬ装甲には傷一つなく、その燃ゆる眼光は鋭く敵を射抜く。
敵が思わずたじろいだ。単なるAIに芽生えた初めての感情、それは『
くろがねの鉄巨人は、直前のテッペイ少年に倣うかのように右手を蒼天に突き出して、世界を震わせる名乗りを上げた。
『スゥゥゥゥパァッ、テッカァ、イィィィンッ!!!!』
高らかに。今、最強のスーパーロボットが雄々しき産声を上げた!
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https://kakuyomu.jp/works/1177354054885440692/episodes/1177354054885519572
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