この作品を、単純に恋愛小説と呼んでいいものかどうかは、非常に難しいところですが、敢えてそう呼びたいと思います。
5話7,000字という短編小説では(掌編小説かも)、とかくストーリーに主眼が置かれがちで、登場人物というキャラクタは、物語を成立させるための置物になりがちなこともあります。
でも、この物語に出てくる登場人物は、どれも悩み戸惑い喜び悲しみます。それが短い文章の中にぎゅーっと凝縮されており、読み終わった時に、いかに自分が感情移入してしまっているのかを思い知ります。
もちろん、ストーリーも練に練り込まれていますので、特に後半の「そういうこと!?」という展開には驚かされることだと思います。そして、それでいて、とても爽快。
特にラストは秀逸というにふさわしい。この気持をなんと言えば良いのか分からない、でも、悪い気持ちじゃない。というような不思議な読後感です。