有給休暇義務化

 働き方改革により有給が義務化された。義務化されたから無理矢理にでも休まなければいけない。面倒くさい。というか国民が求めているのはそういうことではない。「月の最低労働時間を守れば、自由に出社して退社して良い」ぐらいのほうが、よっぽど受け入れられると思う。いや、これもこれで総務の人とかが発狂しそうだが。


 義務化されたんで取りましょうね、と会社の中でも度々呼びかけがあった。こういう時に困るのは管理職の皆さんである。まずは部下達を休ませるのを優先するので自分が後回しになり、そして自分が取る段階には繁忙期になっていたりする。

 会社には「有給取得率ランキング」なるものがあって、誰がどのぐらい有給を取ったか、年間五日に足りているか、などを統計している。勿論これは経営側の話なので、私達のような社員は目にすることが無い。


 年末年始を終えた段階で、そのランキングに変化があった。それまで年間有給取得が五日未満だった人たちが有給を取ったためである。それまで有給を取らなかった管理職たちが次々とランキングから抜け落ちていくのを見て、総務部がほっとしたのも束の間。これまで管理職たちに紛れて気付かれなかった奴が浮上してきた。


「淡島さん、有給あと三日取ってください」


 総務部の人の懇願により、自分がまだ二日しか有給を取っていないことに気が付いた次第である。

 そもそも、私はあまり休みが好きではない。かなりの怠け者なので休みたくないのである。こう言うと矛盾しているように思えるかもしれないが、私は元来「テスト前日に掃除が捗る」タイプである。仕事をしていたほうが部屋の掃除とか風呂の排水溝とか綺麗に出来る。休むともう何もしなくなるので、あまり休みたくない。


 だが義務は義務だ。納税と一緒だ。したくないからやらない、というのは税金滞納と等しい。

 じゃあ休みますかね、と自分のスケジュール表を確認したら、思った以上に暇がなかった。三月末まで結構な頻度で出張が入っていた。どう考えてもまとめて三日は取れそうにない。細切れに入れていくしかないが、出張と出張の間に入れるのは、自分のライフパターン的に避けたいし、水曜日にも入れたくない。

 色々考えた結果、一月と二月と三月でそれぞれ一日休みを入れることにした。

 有給が義務化されると、休むのも一苦労である。

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