突貫工事で待ち合わせ 前編

 営業と現場は仲が悪い。これは大体の業界で当てはまるのではないだろうか。私の職場もそうである。特に「どこかでやった実績がある」程度で仕事を取ってくる営業におきましては、非難の嵐を浴びせて、腐海の底に沈めたいと思っている者が多い。


 今回の仕事はまさにそれだった。元から悪名高い若手の営業君は、「どこかでやった気がするから、まぁ楽勝に入れてくれるでしょ」みたいな気軽さで仕事を取ってきて、しかもその詳細を会社に報告しなかった。お陰で上の人たちが気付いた時には、やることは山積みなのに誰も着手していない状況だった。


「空いている奴をプロマネにしよう」


 と、これまた適当にプロマネをチョイスし、そしてそのプロマネは何をしたら良いかわからないから、私を含む数名を掻き集めた。


 貴方は空いてるかもしれませんけど、私は空いてない。

 私は、空いて、ない(強調)。


 しかし断ろうにもあまりに切羽詰まった状況すぎるので、恩を売る意味で引き受けることにした。ちゃんと「感謝してね」とプロマネに言うのは忘れない。此処で大人しくしていたら、いつまでも体よく使われるだけだ。


「稼働まであと何日でしたっけ」

「あと十日だね。この仕組みを入れたいんだけど」


 あと十日でどうにか出来る仕組みじゃない。

 何でこんなものを営業君は取ってきたのだろう。だから現場を知らない営業は信用できない。傍にいた開発の人に愚痴ったら、物凄く同情してくれた。


「データベース弄りまくって突貫工事で行きますけど、駄目な場合は稼働後対応にします。「絶対稼働日までにやれ」とか言わないで下さいね」

「言ったらどうなるの?」

「無視するだけですけど」


 プロマネはその返しに口を噤む。この人は別に悪くないのだが、最近プロマネ達が揃いも揃って「要件定義にはないけど、必要だからサービス精神でやれ」ということが多いので、予防線である。

 つくづく思うが、この仕事は「サービス」「アナログ」で動いている。まぁそれが面白いこともあるのだが、誠意がないとやはり苛立つ。人間だもの。ちゃんとやったら「だって頼んだんだから当然でしょ」じゃなくて感謝してほしい。具体的には美味しいお酒とかお酒とかお酒とかで。

 書くのに疲れたので後編に続く。

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