亀の様に歩み牛の様に食む
最近、社内の工数整理を行う関係で開発部の仕事の手伝いをしている。これがまぁ、私という人間にはとことん不向きである。基本的なことはわかるのだが、応用となるとよくわからない。if文やswicth文の仕組みもわかるし、変数も理解できる。しかしそれをどう組み合わせれば望む形になるのかわからない。
線が引けて色が塗れても人物画が描けないのと一緒だと言えば、世の半分くらいの人は納得してくれそうだ。いや、ちょっと希望的観測に過ぎたので三分の一ぐらいにしておく。
現場系としてはベテランに足を突っ込みかけている私でも、開発ではド素人に毛が生えたようなものだ。今日も今日とて(この表現多いな自分)担当者に迷惑をかけながら、亀よりも遅く牛よりも道草食ってるスピードでコーディングをしていた。担当者には心底同情する。これが私が新人ならまだしも、X年目の人間である。怒るに怒れないだろう。
「そういえば、淡島さん」
「なんでしょう」
「A県西病院って知ってますか?」
「えぇ、前のメンバでしたよ」
「今度出張で行くんですけど、良いホテル知りません?」
そう言われて、脳裏にいくつかのホテルが浮かび上がる。
「中心街がいいですよ。南口ですか? それとも北口?」
「いや、それがわからなくて」
「確か南がタクシー拾いやすいので、そっちにしましょうか。ホテルにこだわりありますか?」
さっきまでの亀が急にチーターの如く動き出したので、相手は少し困惑気味だった。
「ベッドがいいのはこっちの病院ですが朝食が無いんですよ。こっちは朝食付きですが、コンビニが近くに無いのでちょっと歩くことになります」
そう言いながらホテルのHPを見せる。相手は「そこまで調べなくていいんだけど」みたいな顔をしながらも聞いてくれた。とても良い人である。
「まぁ、この時は徹夜続きだったからロクに温泉も朝食も味わえませんでしたけどね」
「て、徹夜?」
「ちゃんとホテルに戻れるといいですね」
「怖いこと言わないでくださいよ」
「あ、多分作業はサーバ室でしょうから、入って右側の席を確保したほうがいいですよ。寝れるから」
「寝ません!」
そんな話をしているうちに頭の中が現場モード(勘が冴える)になったらしい。
話の後でコーディングに戻ったら、さっきまで悩んでいた場所が綺麗にクリア出来た。やはり私は現場向きの人間のようだ。
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